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怪異探偵事務所   作者: 夜乃桜
置き忘れた想い

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13/32

獲物の正体

罠が作動した場所は一階の廊下、物置部屋の前。


「Videtur」


玲奈が手をかざすと、仕掛けた罠が現れる。

〈魔術〉で創られた罠は、〈術師〉である玲奈以外はみえないように仕掛けていた。


「仕掛けた罠はこれか」

「ああ」


現れた罠の前にしゃがみこみ、仁は罠を確認。

玲奈が仕掛けた銀色の金属の糸と檻の罠。玲奈が言っていた通り、作動した状況で残っている。


「獲物によって、糸の強度や檻の大きさが変化するように仕掛けていた」


玲奈が腹立たしい様子で説明する。

檻の大きさが大人の拳ほど、捕らえていた獲物は、それほどの大きさだったということ。ならば、その大きさの獲物はどうやって、体を拘束する金属糸と二重に囲む檻から脱出したのだろうか。

考えてみると、〈火焔の魔女〉である玲奈の罠から逃げられるモノなど、よっぽどのモノなのか。


「……次は絶対に捕まえる……多重の檻……対策……いや、攻撃……」

「…………」


よっぽど悔しかったみたいだ。仁のことを無視して、次に仕掛ける罠について、玲奈は思考していた。

そこまでのことなのかと仁は思うが、玲奈にとっては、〈魔術師〉としてのプライドがあるのだ。まぁ、こういったことに、部外者が口を出すと面倒になる。なので、仁は玲奈をほっとくことにした。

先に確かめなくてはならないことがある。まず、仁は〈魔術〉で創られた銀色の檻に触れた。


「……………」



何も視えない。つまり、〈時読みの異能〉の反応がないということ。次に、仁は檻の中、玲奈が言っていた銀色の金属糸に付着している灰色の砂に触れる。


「つっ!」


仁の口から声が漏れる。

ぐらりと頭の中心が痺れて、仁の頭の中に押し付けるように流れてくる。そして、仁の視界が揺らめき、意識を持っていかれた。



灯のない、真っ暗な暗闇の廊下。


キィー


物置部屋の扉が微かに開かれる。その開いた隙間から、何かがうごめきながら出てきた。


(あれは……)


物置部屋から出てきたモノに、仁は意識を集中させる。

物置の扉から出てきた何かは、わざわざ扉をきっちりと閉めて、リビングに向かおうする。

その時、動き出した何かの足元に、緋色に輝く〈魔方陣〉が浮かび上がる。玲奈が物置近くに仕掛けた罠が作動した証。〈魔方陣〉の円の中で、何かの体を銀色の金属糸が縛り、銀色の檻がそれを囲う。

捕えられた何かは、銀色の糸から逃れようともがく。しかし、銀色の糸の拘束は緩まない。しばらくして、暴れていた何かは、銀の金属糸から逃げられないと諦めたのか、何かが大人しくなる。


(!!)


そして、罠に捕えられたモノは、溶け出した。

そこで、仁の意識は現実に引き戻される。



(……あれはいったい……)


〈魔方陣〉の緋色の光によって照らされて、一瞬だけ視えた何かの正体。それは灰色の塊の姿をしていた。


「横山さん、さっき」


〈時読みの異能〉で視えたものを玲奈に伝えようと、仁は玲奈の方に顔を上げる。


「……罠には〈結界〉……爆発の攻撃……罠の周り……逃げ出した時……地雷の罠を…」

「…………」


まだやっていた。おまけに、罠の内容が物騒になっている。


「……お〜い、戻ってこ〜い」


呆れた仁は立ち上がり、玲奈の前で手を振る。


「……ああ、どうした?橘」


ようやく気がついた玲奈が、意識を仁の方に向ける。

そして、罠について夢中になりすぎて、仁に調査を押し付けていた。玲奈の顔が羞恥であかく染まる。


「……申し訳ない」

「いや、別に大丈夫だから」


自分の行動に反省し、頭を下げる玲奈に、仁は苦笑い。


「もしかして、何か視えたのか?」

「ああ」


仁は〈時読みの異能〉で視えたものを、玲奈に話す。


「……罠に捕まっていた何かは物置から出てきた」


玲奈は間違いないかと、仁に念をおして問う。


「ああ、物置から出てくるのを俺はしっかりと視た」

「そうか」


玲奈の視線が物置部屋、仁の視線も物置部屋に向かう。次にやるべきことは決まった。


「それじゃ、物置を調べてみることにしますか」

「ああ、そうしよう」


玲奈は仁の提案に同意する。

物置部屋から罠に捕えられた何かが出てきた。物置部屋を調べれば、何かの正体がつかめるかもしれない。それか他の手がかりなどが見つかるかもしれない。


「開けるぞ」


仁は物置部屋の扉を開けた。


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