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怪異探偵事務所   作者: 夜乃桜
置き忘れた想い

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仁の〈異能〉

仁は視る。

真っ暗な暗闇の中を、僅かな懐中電灯の灯りが照らす。その灯りを頼りに、漁るように書斎の机の一番下の引き出しの中を探す誰か。顔まではわからないが、体格や輪郭で男性だと判断できる。

引き出しの中をあさっていた男は苛立った様子で、乱暴に机の一番下の引き出しを閉める。その時に、引き出しに入っていた布が挟まった。


「ここにも無い……いったい、どこに隠したんだ…… くそ!」


男が机を叩きつけた。

そこで終わった。



「あ」


仁の声が、書斎に漏れる。仁の意識は、現実に引き戻された。


(………これは)


視えた映像に思案している仁の腕を玲奈が掴む。


「……橘…今、お前は()()()()?」


時間にしては一瞬だが、今の書斎の光景とは別の何かを仁が視ていたことに、玲奈は気がついた。鋭い眼で問う玲奈に、仁は隠すことなく、正直に話す。


「俺、〈時読みの異能持ち〉なんだよ」

「……なるほど、そういうことか」


僅かの驚きと納得をした玲奈が、仁の腕を離す。



〈異能〉


先天的な才能が不可欠な超常現象を引き起こす能力。

ほとんどの場合は先天的に〈異能〉を持っている人間が多いが、ごく稀に他人から譲り受けた、後天的に〈異能〉に目覚めるなどの例外も存在する。

〈異能〉を持つ人間は〈異能持ち〉と呼ばれ、〈異能持ち〉の一族が存在する。また、〈異能持ち〉は素質によって優れたり、劣ることがある。

〈異能持ち〉は希少で、〈異能〉の種類によっては人身売買で高く売れるなど、実験体にするなどで狙われることが多い。



(希少な〈異能〉じゃなくて良かった)


愁一郎に〈異能〉について聞かされた時、仁は心の底から思った。


「なるほど、〈時読みの異能〉。ならば、視たモノは起こりうる未来という訳か」

「いや、違う。俺は過去視。視たのは、もうすでに起きた過去だ」


仁が自分の〈異能〉について話すと、玲奈が眼を瞬かせて驚く。


「珍しいな。過去視の〈時読みの異能持ち〉など」



〈時読み〉


対象の過去や未来を視る〈異能〉。〈異能持ち〉の中でもっとも多い〈異能〉と言われている。

〈時読みの異能〉は、ほとんどが過去か未来のどちらかの片方しか視ることが出来ない。その場合、未来を視る人間のほうが多い。

しかし、ほとんどの未来視はあやふやで、確定した未来を視ることが出来ない者が多い。それか、数秒先の未来が視えるだけだったりする。なので、自分が未来を視ていること、〈時読みの異能持ち〉であることに気がつかずにいる人間が多い。

その中で過去と未来の両方を視る人間は稀だ。



「別に珍しくないさ。俺はたまにしか視れないしな」


だから期待をしないでくれ、と仁が皮肉げに笑う。

〈時読みの異能持ち〉の仁だが、自分が同調したモノの過去しか視ることが出来ない。そのうえ、自分の意志で、〈時読みの異能〉を使えない。仁は制御ができない〈チカラ〉が劣る〈時読みの異能持ち〉だ。

仁の養父、愁一郎も〈時読みの異能持ち〉で、自分の意志で〈時読みの異能〉を使っていた。

『橘探偵事務所』が物だろうが、人だろうが、必ず見つけると言われているのは、愁一郎の〈時読みの異能〉のおかげだ。なので、愁一郎が亡くなった時、『橘探偵事務所』は終わりだなどと言われた。


・・・仁、お前はお前のやり方でやっていけ・・・


愁一郎に『橘探偵事務所』を引き継ぐことを伝えた時に言われた言葉。

日頃から、どんな事でも焦らずに自分で自分の納得できるやり方でやっていけばいい、と愁一郎に教えられていた。仁はその教えを心に、行動した。

そのおかげで、仁が引き継いだ『橘探偵事務所』の評判は下がることは無かった。まだ幼いがさすがあの愁一郎の息子だと評判が上がっている。

余談だが、特に幼いと言われていることを、仁は知らない。


「それで、何が視えた?」

「男が一人、何かを探していた」


仁は〈時読みの異能〉で視たことを、玲奈に説明する。


「……どこに隠したと必死に探していた」

「しかも、秘密裏にか」


仁は頷く。

暗闇の中で、苛立っていたが男は慎重に何かを探していた。その時点で怪しい以外何もない。


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