第九十八話 ショッピング?
「店長! この剣、値下げしてくれねぇか!?」
「この帽子……良い! この手袋も……!!」
「おやっさーん♪ この杖、手に持ってみて良い?」
市街地――、
様々な露店が並ぶ中、タケヒコ、ノノ、セルジュはそれぞれにウインドウショッピングを楽しんでいた。
しかし、このパーティのリーダーは……。
「オッサン! この店にゼトの日誌と街のかけら無い!?」
「お姉さん! この店にゼトの日誌と街のかけら無い!?」
「おじい様! この店にゼトの日誌と街のかけら無い!?」
一人、日誌とかけら集めに奔走していた。あまりにもせわしなく露店を片っ端から尋ねた為、タクヤはいつしかぜぇぜぇと肩で息をしていた。
「ハァ……ハァ……ダメだ、しらみつぶしにやってても埒が明かねぇ。……よし」
タクヤは(何故か)目を閉じる。そして人ごみの中心でブツブツと何か唱え始めた。
(風の音を聞け……心身を集中させろ……心の目を開け……!)
「キュピーン!」
タクヤの脳裏に電撃が走った。
「(あっちだ!)そこの店長さーん、ちょっと一言よろしいですかぁ――!?」
「!?」
とある露店――、
その店の店長は、ドラゴンを連れ、目を輝かせた謎の男に猛ダッシュで迫られた。
「なっ!? アンタは……?」
「俺はタクヤだ!! 店長! この店にゼトの日誌、『市街地の日誌』はねぇか!? それと、『街のかけら』!」
「あ、ああ。あのよく分からん、書物か。それだけならあるぞ」
タクヤに迫られた露店の店長は、ゴソゴソと何かを取り出してきた。
「ほれ、誰も買わないから、50コインで良いぞ」
「そ……、そうか……それで!(やっす! 値段交渉しようと思ってたけど、その必要も無いな!)」『市街地の日誌を手に入れた! 50コインを失った!』「よーっしゃあ!! ありがとな! てんちょーさん!」
タクヤは手を振ってその店をでた。露店の店長も手を振って答えたが、胸中、穏やかではなかった。
(嵐のような男だったな……)
「やー♪ タクヤ、日誌見つけられたね」
「おうセルジュ、見つけてやったぜ」
セルジュ、タクヤは人ごみの中、お互いを確認すると、言葉を交わした。
『と、いうコトは!?』
「俺はさっきの店の右隣の店に行く!!」
「それじゃあ私は左隣の店に♪」
「……」
「……♪」
二人はそれぞれ、先程の露店の横隣の店に入り、売られているであろうアイテムについて問う。
『――、ありますか!?』
――、
セルジュは先程入った店から出てきた。いつも通りの笑みで呟く。
「あちゃー♪ 取り扱ってなかったよー。! タクヤ?」
「ふっふっふー、セルジュ。驚くことなかれ」
タクヤも、セルジュが入った所とは違う店から現れた。
「♪ 手に入れたの?」
「あったぼーよ!! ほれ! 見ろ!!」
『街のかけらを手に入れた!』
「800コインもしたのが、少し痛かったけどな」
「ははっ♪ 経済力、見せつけてきたね」
「そーだな。あっ……」
セルジュと上機嫌で会話していたタクヤだったが、ここで何かを思い出した。
「アイツら……!」
「タケヒコとノノちゃんのコト? それなら♪」
セルジュは右人差し指で3時の方向を示した。
「ほら、あそこ♪」
「!」
タクヤが目をやると、そこには人ごみの中に、少しだけ申し訳なさそうなタケヒコと、ルンルン気分のノノが居た。
「お前ら! 今までずっと買い物してたのかよ!?」
「すまんな、タクヤ……」
「申し訳ありません」
タクヤの言葉に、タケヒコは更に、ノノは一転して気まずそうにしていた。
「俺が日誌とかけらを見つけて買ってやったのに、お前らはウィンドウショッピングに勤しんでいたんだな。はぁーやれやれ」
「それなんだが……」
「まさか……」
「コレ、買っちゃった」
『銀の剣を手に入れた!』
「!!!! 何コインしたんだぁああ!?」
「1000コイン……」
「!!!!」
タクヤはガックシと膝から崩れ落ちた。
(街のかけらより……高いだと……?)
意気消沈するタクヤだったが、ノノは一人、上機嫌だった。
(タケヒコ君……あんな大金をどかっと使えるなんて……スゴイ……)
正にあばたもえくぼ状態。ノノのその様子を見たタクヤ、負の感情を顕わにする。
(チックショー、ノノめ。そんな表情してたら考えているコト丸分かりだっつーの! つーかあの二人、あの歳で健全にやってますよ感があってツッコみにくい……)
「タクヤぁ、ひとまず試練クリアと、かけらゲットおめでとう」
「!」
ふと、声のする方へ振り返ると、そこには満面の笑みで祝福しているセルジュの姿があった。タクヤはハッとなり、次第に涙腺が緩み始め、涙目になりか細い声で言うのだった。
「セルジュぅ……お前だけは俺の仲間だよなぁ!?」
「何それー? タクヤ。このパーティ、皆仲間だよ♪」
「せやかてセルジュ、ヤツら抜け駆けしようとしとるんやで?」
「ははっ♪ 何で服〇平〇? まぁいいや。市街地の日誌、読もうよ♪」
「そうだな。タケヒコとノノも! こっち来い。日誌読むぞ。えーと、何々?」
『遂にその時は来てしまった。“あの日”が来たのである。あの日、ヤツが現れた。その人物が勇者タクミである』




