第九十九話 金欠会議
「勇者……タク……ヤ?」
「タ・ク・ミ、ね♪」
「おいおい、カタカナだぞ。読み間違えるなよ」
「あなたって人はどこまで自分本位なんですか!?」
市街地の日誌を、ものの見事に読み間違えるタクヤ。それに対し、
セルジュ、
タケヒコ、
ノノは口々にツッコミを入れていく。少々たじろいだタクヤは仕切り直して、市街地の日誌を読み直す。
「あ! ああ……タクミね。タクミ。続き、読むぞ」
『あの日、勇者タクミが現れるまで、私に挑む者は赤子の手をひねる様に私に倒され、毎日の様に死体の山が築き上げられるだけだった。しかし、タクミだけは違った。私の攻撃を、見事に耐え抜いたのだ。私は問うた。「貴様、何者だ?」するとタクミはにやりと笑い、叫んだのだ。「俺は勇者タクミ!! ゼト! お前を倒しに来た!!」ヤツは光の剣一つで、私に挑んできたのだ』
「ここで……」
「終わってるね♪」
タクヤとセルジュは顔を見合わせる。ここでタケヒコが口を開いた。
「俺の記憶が確かなら、次の日誌に、具体的な戦いの様が書き記されているぜ」
「そうか、遂にゼトの攻略方法が分かると、いうコトか……」
「ですです!」
タクヤとノノもその次の日誌の内容が気になっている様子だった。
「まあ、次の日誌手に入れたらわかる事だから♪ さっさと次のマップに行こうよ!」
「! ああ、そうだな」
セルジュの一声で、一行は次なるマップ、水の都に行くコトとなった。
――、
「一人、80コイン」
「!?」
「だからぁ。一人、80コイン」
「そーだったぁぁああ!!!!」
南の水路前に居た船頭は、右手をこちらに向けて、コインをせがんでいる。
水の都には、南の水路から船頭にコインを渡して、舟に乗らなければ辿り着けないのである。タクヤは船頭に、交渉を持ちかける。
「ま、待て……。オッサン。今俺のパーティは合計150コインしか持ち合わせていないから、四人で320コインなんてモノは、到底払い切れないんだ……!!」
「じゃあ、舟は出せないな」
「!!!!」
タクヤ達パーティは、舟に乗ることを真っ向から断られた。一行はひそひそ声で金欠会議を始める。
(どうするよ? アイツ倒して乗り込むとかできないのか?)
(タクヤ君、何物騒なコト言ってんですか!? 思っても言っちゃいけませんよ、そんなコト)
(ノノ、思ったのか……?)
(タケヒコ君!! お、おお思ってないですよー、やだなー)
(ノノちゃん、思ったんだね♪ 因みに船頭襲ったら、裏設定最強格の『番人達』が現れて、先頭になるよ♪)
(裏設定最強格!? 風〇の〇レンの、泥棒した時みたいになるのか? セルジュ)
「あ――――!! 話が進まねえ! ノノ! セルジュ! タクヤ! 俺に妙案がある!」
金欠会議、終了?
「おっ、いきなり大きな声出して、どうしたんだ? タケヒコ」
「タクヤ、装備品を売って、軍資金にするんだ」
「おお、それはありかも。オッサン剣とか槍とか買ってくれるか?」
「構わんが?」
「サンキュー。じゃあ、この前タケヒコが1000コインで買った、銀の剣が800コインで売れるから、売ろう」
「待て」
「!!?」
「待てタクヤ」
「どうしたんだ? タケヒコ」
「銀の剣は……やめとかないか? ほら、買ってから一回も使ってないし。槍とかどうだ?」
「タケヒコ、テメッ! 自分の装備品だからって、売らない気かよ!!」
「タクヤ君! だからと言って、一回も使ってないモノは……」
「あんだとぉ!? ノノまでタケヒコの肩を持つってのか!!?」
「じゃー、こうしようか♪」
『!!?』
――、
「まいどありー」
「トホホ……」
「タケヒコ君、気を確かに……」
タクヤ達パーティは、タケヒコが装備できるアイテム、『光の剣』を500コインで売って、舟に乗るコトとなった。
『光の剣を売った! 320コインを支払った! 残り、330コイン』
「確かに、もう使わないかも知れないけどさぁ……」
「勝手に銀の剣買った、罰な」
パーティが口々に言葉を発していると、船頭が声を掛けてきた。
「しっかり捉まってろよ、舟から落ちないようにな」
舟は進む。前に一度だけ行った、水の都に向けて――。
灰色のレンガ造りの、お城の様な建物が、パーティを迎えてくれた。
視線を移せば目に入って来る露店で売られている果物はみずみずしく、目にするだけでも価値がある程のものだった。
空を見上げれば、一本の紐に洗濯物が並んで干されており、その様は爽やかだった。そして真っ白な都鳥達がバサバサと飛び立ち、ここがどこかを教えてくれた。
『水の都――』
その透き通った都が、危機に陥っているのは、橋梁を抜けた先に目に見てとれるようになる。
「2回目だけど、すげっ!!」
「キレイ……」
(けど、確か……)
(……♪)
はしゃぐタクヤとノノだったが、一方でタケヒコとセルジュは何かを悟っている様子だった。舟は橋梁をくぐり抜ける。その時も、タクヤははしゃぎっ放しだった。
「おお、2度目の疑似トンネル!」
橋梁を抜けた先には、以前の様なみずみずしい透明な建築物も、噴き出す噴水も無く――、
「! 何だアレ!? 濁って……いる……」




