第九十五話 二人
「タクヤもタカヒロの気持ちに気付いていたかと思ったのにー♪ あんなにいじってたから。タクヤって案外鈍感なんだね」
「おい! 今はセルジュの振りしなくていいぞ、セイジ!!」
「そうだったぁ!」
タクヤはセイジと通話していた。時計の針は午前1時を過ぎている。
「僕はタカヒロとノノちゃん、行き着くところまで行き着いちゃってると思ってたんだけどなー」
「まさか、雑魚カップルがマジモンのカップルになるとでも?」
「その可能性は否めないよ」
セイジの発言を聞き、タクヤはわなわなと右手で頭を抱えた。
「こ……、今度二人の前ではどう接したらいいんだろ……?」
「普通にしてたらいーと思うけどなー」
夜も遅くなってきたところで、タクヤのじゃあなの一言で二人は通話を終えた。タクヤは一抹の不安を抱きながら、そっとベッドで横になり目を閉じた。
翌日土曜日――、約束の13時を迎える。
「よっと!」
「スタンっ!」
タクヤは以前セーブした神殿の大広間に降り立った。
「やっ♪」
タクヤが声のする方向へクルリと顔を向けると、そこにはお決まりのお家芸の様にひらひらと手を振るセルジュの姿があった。
「セルジュぅー、アイツら……」
「シュイン……!」
「!!」
タクヤがセルジュに胸の内を口にしかけた時、大広間の空間が輝き出した。
「スタンっ!」
光が消えると、そこにはタケヒコの姿があった。
「先に来てたんだな。タクヤ、セルジュ」
「あぁー。まあ、な」
「うん♪」
セルジュは至って普通の様子だったが、タクヤがあまりにも白々しい態度をとっていたので、タケヒコは違和感を覚えていた。
「? 何だ。タクヤ?」
「あぁっははー何でもね……」
ここでセルジュがギュッとタクヤの背中をつねった。
『タクヤ、HP:188/189』
「えぇぇええ!?」
(タクヤ。平常心、平常心♪ 最悪、私に電話した内容がバレるよ?)
セルジュがひそひそ声を出して言ってきたのでタクヤはぎこちない笑顔でタケヒコに答えるのだった。
「ナンデモネーヨ。キョウモテンキガイイナ」
「ここ、神殿の中は多分屋内だぞ? 天気つって空なんて見えねえぞ」
「あぁっははー。冗談だよぉー」
「なんか気持ちワリーな。今三人か……」
「シュイン……!」
「!!」
再び大広間の空間の一部が輝き出した。
「いぃよっと!」
「スタンっ!」
光り輝く空間からはノノが登場した。
「わっ! 私が最後!? 待たせてしまってたらすいませーん」
登場して早々謝罪してくるノノに、泰然とした態度でタケヒコは話し掛ける。
「ノノ、安心しろ。多分みんなさっき来たばかりだ。な?」
「お、おう!」
「(20分前から居たけど)うん♪」
セルジュと共に答えたタクヤだったが、胸中は穏やかではなかった。
(コイツ、緊張とか、意識するとかしそうだと思ってたけど)
タクヤはタケヒコをまじまじと見かえした。そこには堂々と立ち振る舞うタケヒコの姿があった。
(余裕だぁ!!)
「次の部屋の扉、開けるぞ!」
「おー!」
そして尚且つタケヒコはノノと仲良く会話もしていた。その様子を見たタクヤは頭を抱えながら悶絶する。
(くぅっそー!! コレが一流企業に就職したヤツとブラック企業に就職してしまった俺との差かぁ!?)
「何やってんの? タクヤ♪」
「ッは!!」
タクヤはセルジュの一声で我に返った。
「みんな♪ 先言っちゃうよ?」
「あー! 待てコラぁー!」
――、
『タケヒコのターン:戦う――、斬り付ける!』
『ノノのターン:戦う――、フルフレイム!』
『セルジュのターン:戦う――、ライトニング!』
『タクヤのターン:戦う――、槍で突く!』
――、
『タケヒコのターン:戦う――、斬り付ける!』
『ノノのターン:戦う――、フルフレイム!』
『セルジュのターン:戦う――、ライトニング!』
『タクヤのターン:戦う――、槍で突く!』
「っておい!!」
タクヤが怒鳴り声を上げる。
「2部屋回っても何も無しで、アイテム駄々被りかよ!!?」
「レベルも駄々上がりしちゃったね♪」
『タクヤ:Lv37、HP:205/205』
『タケヒコ:Lv37、HP:214/214』
『セルジュ:Lv40、HP:???/???』
『ノノ:Lv36、HP:207/207』
「セルジュに関しては色々ツッコミどころあるが、ギガゴーレム位なら安定して倒せるようになってきたな、ノノ」
「ハイ、タケヒコ君」
タケヒコとノノは二人で会話するコトが多くなってきている。そこに、あざとさや嫌味ったらしさが無かったため、逆にタクヤはイライラしていた。
(クッソー! コレじゃあ最早イジれねぇー! 何かプラトニックにやってます感が腹立つ! コイツら両思いなのかー!)
「きっとそうだよ♪」
「!?」
タクヤがモヤモヤしているところに、セルジュが話し掛けてきた。
「俺、さっき声に出してなかったろ!? 心を読んでくるな!!」
「こう言ったゲームや、ネトゲ界隈では相手が考えているコト、大体分かるんだ♪」
「クソッ! ゲーム内じゃ最強かよ!! 現実世界じゃひ弱なくせにー」
「スッ……」
「!?」
タクヤの喉元に、セルジュが杖を突き付けた。
「タクヤぁ♪ ソレ、禁句」
「ハイー(涙)」
涙目のタクヤ。ラブラブな二人と、圧が強くなりそうなセルジュといった仲間による二重苦三重苦を味わうのだった。




