第八十七話 泥まみれの勝利
底無しの沼地――、
パーティ一行は沼地を歩き続けていた。ジトジトと、湿度と温度が高い気候、ぬかるんだ土地の足場の悪い、沼地を――。
(進み辛いな)
(俺がまた草刈り係か……)
(蒸し暑い……気がします)
(♪)
パーティはそれぞれ、思い思いに不平不満を心に留めながら、口には出さず沼地を進んでいた。
と、その時――、
「あ!」
「!?」
「♪」
「ん?」
タクヤを除くパーティ三人は気付いた。タクヤの真上に、今まで見たことがないほど巨大な蛇が、木々のつるに絡まりながら存在しているコトに――。
「タクヤ、上ぇー!!」
「んー? どうした、みん……」
未だに蛇に気付いていないタクヤ。促されるままに自身の真上に顔ごと視線をやった。
「シャ――!!」
「なぁああああああああああああああ!?」
蛇に気付くタクヤ。ついでに威嚇までされる。蛇のあまりの迫力に、ゲーム始まって以来くらいにタクヤは驚愕した。
「シャ――!」
「わぁぁああああああ!!!!」
『大蛇が現れた!』
「ああああああああああああ!!!!」
タクヤは思わず、持っていた槍を大蛇口の中に突っ込んで内側から切り裂いた。
「シャ……ガッ……ゴッ」
『大蛇を倒した! 経験値を手に入れた!』
「アレ……? ん?」
「やりましたね! タクヤ君!」
「大丈夫か!? タクヤ!!」
「♪」
「あ、ああ。皆……」
「どうしたタクヤ!?」
「ああ、タケヒコ。何か呆気ないと思って……な」
「そうか、タクヤ。多分、アレだ。あの……」
「『ステータス差における1ターンキル』、ですね」
ノノがタケヒコの説明に割って入った。
「あ、ノノ……。言葉が出なかった、ひとまずサンキュな」
「いえいえ、タケヒコ君。タクヤ君!『ステータス差における1ターンキル』は以前も経験しましたよね?」
「あー、アレか。でも、今回の敵、結構強そうだったぞ?」
「それは敵が強くなってきたのと同じ様に!」
「!?」
タケヒコが肩を組んできた。
「私達も強くなってるってコトだよ♪」
セルジュまでタクヤに対し肩を組んできた。
「そーいうコトです!」
ノノはタクヤを人差し指で指差してきた。
「お……おう(この前置いてかれた感あったが、俺も強くなってるんだな、安心)」
ひとまず応答をしたが、少し弱気な心中は吐露しないタクヤであった。
数分後――、
「皆、足場は悪いが、このままのんびり歩いて探索していたも日が暮れちまう。体力が奪われるが、小走りで探索するぞ」
「……(疲れそうだ……)」
「えー、やだなぁ……」
「うーん♪」
タクヤが一つ提案するが、タケヒコ、ノノ、セルジュは乗り気ではなさそうだった。
「何だ? 不服そうだな。なら他にいい案でもあるのか?」
「……」
「……」
「……」
「批判はしたくても、代替案が無いんなら、何も言えねぇよなぁ!?」
((何も言えねぇ))
こうして、タクヤの意見が通り、沼地を小走りで探索するコトとなった。
「えっほ、えっほ」
「タッタッタッタッ」
「えっほ、えっほ」
「タッタッタッタッ」
数分、タクヤ達パーティは小走りで周囲を探索していった。不意に、タケヒコが口を開く。
「ハッハッ、タクヤ!」
「ハァハァ、何だタケヒコ?」
「小走りでって言ったけどいつまで走り続けるんだ?」
「……無論」
「!?」
「日誌とかけらを見つけるまでさ」
「けど、体力は持つのかよ」
「タケヒコ、あの冬を忘れたのかよ?」
(回想)
タクヤ、タカヒロ(タケヒコ)、高校一年生の冬――、
「あと5秒! 4……3……」
「ッは!!」
「タイムは!?」
「惜しかったな。ギリギリアウトだ」
「Noooo!!」
高校球児だった二人は、冬の特別練習メニュー、通称『冬練』で、ひたすら走り、走り、走り抜いていた。
「なぁ、タカヒロ……」
「?」
「さっき目標タイム切れなくて次タイム切れつっても、今の方が体力無いんだから、常識的に考えて次もタイム切れねぇんじゃ……」
「……言うな」
「次! タクヤとタカヒロ! 位置につけ! 目標タイム切れるまで終わらないからな!」
『ひぃぃいい!!』
このあと二人はめちゃくちゃしごかれた。
(回想終了)
「見つけられるか見つけられないか、じゃない。見つけるんだ!」
「ストーップ!!」
「!」
「!!」
「!?」
ノノが大きな大きな声を掛けてきたため、キキーっといったSEが聞こえてきそうな具合で、パーティの三人は動から静へとベクトルを変えた。そう、タクヤを除いては――。
「その前方! 足場のぬかるみが酷くなってますよ!!」
「べちゃぁ!!」
先陣を切っていたタクヤは一人、ブレーキが間に合わず、沼のぬかるみに顔面からダイブする形となった。
「……タクヤ君」
「……」
三人はしっかりブレーキを掛けて止まれていた為、タクヤの有様から気まずさと温度差を感じていた。
「時すでに遅しだ! バカヤロー!!」
「べちゃ!」
「!」
タクヤは泥まみれになりながらも、丁度手に届くくらいのところに有った何かを、タケヒコの腹部へ投げつけた。
タケヒコカワイソス。
「おいおい、ん?」
タケヒコは投げつけられたモノに目をやる。それは、タケヒコが以前プレイ中に手に入れた、重要アイテムだった。
「コレは……!」
『日誌の表紙を手に入れた』
「は?」




