第八十六話 裏目に出た昨日
翌朝日曜日――、
タクヤ宅にて。
「あ゛ー、昨夜は踏んだり蹴ったりだったぜ。さて、一応チャット送っとくか。報連相は重要重要。報連相、ホウレンソウ」
タクヤはゲーム、『The battle begins on the farm』のチャット機能を使い、ゲーム内のパーティに連絡を入れる様だ。
「『昨日言ったが、今日も13時集合で』っと」
「ピロリロリン♪」
返信が返って来た。
「ノノからだ。何々?」
『昨日はタクヤ君がらしくないコトした所為で雹ひょうが降りましたよ!? 大変だったんですからね!!』
「……」
「ピロリロリン♪」
また返信が返って来た。
「今度はタカヒロ(タケヒコ)か……」
『昨夜はタクヤの所為で天候が荒れて大変だった。無理しないで、普段のタクヤで居てくれ』
「……(その優しさが、逆に堪える……)」
「ピロリロリン♪」
またまた返信が返って来た。
「今度はセルジュ……悪い予感しかしない……」
『昨日はタクヤの所為で、家の窓ガラスが割れたよ♪』
「……」
タクヤは、ゲームの画面をそっと閉じた。
(理不尽……!!)
そしてタクヤは目にそっと雫を浮かべていた。
13時頃――、
「シュイン……ッダ」
始まりの村、タクヤの実家の離れ(ゲーム内の)に、タクヤは降り立った。
「シュイン」
「シュイン」
「シュイン……」
「! お前ら……」
タクヤから数秒遅れて、パーティの他三人も離れに現れた。タクヤが、多少の気まずさを感じつつパーティの三人二話し掛ける。
「よ、よお皆……。今日は俺より遅かったんだな。てかセルジュ、お前が俺より遅く来るなんて初めてなんじゃないか?」
「あー、それは♪ 集合時間ギリギリまで割れた窓ガラスの修繕作業をおこなってたからね。ホント誰かさんの所為で」
「はうっ……!」
セルジュのその言葉は、タクヤの胸にグサりと突き刺さった。
「かはっ! こほっ!」
息をするのもやっとなタクヤであったが、運命(仲間達?)は無情にも彼に襲い掛かる。
「ホンっと、誰かさんの所為で――、な」
「ごほぉっ!!」
「フー、やれやれ。ホントどうにかなりませんかねぇ? 誰かさん」
「ごふっ!!」
『タクヤ、HP:0/184、タクヤは力尽きた』
「ああー!?」
「ちっ、やり過ぎたか」
「あらら♪」
パーティの仲間の猛攻に、タクヤは撃沈したのであった。
――、
「リライブ!!」
『セルジュ:回復魔法――、リライブ』
セルジュはタクヤに対し、杖を振った。タクヤは力尽きた状態から、『リライブ』によりHPが回復した。
『タクヤ、HP:92/184』
「お帰り♪ タクヤ!」
セルジュは何事とも無かったかの様にタクヤにあっけらかんと言う。
「お前ら……」
「う……」
「あちゃー♪」
流石に言い過ぎたと、ノノとセルジュは口を塞ぐが……。
「この通り! 許してください!!」
「は?」
「アレ♪」
タクヤは土下座で謝って謝ってきた。タクヤの、余りにも意外な言動に、ノノとセルジュは虚を突かれた。
――、
「で、タクヤは柄にもなくリーダー風吹かすと、天変地異が起きるから、普段通り接するコト。俺らは、タクヤに対して辛辣な態度をとり過ぎると、タクヤが心的外傷により力尽きるからあんまり強く当たり過ぎないようにするコト。いいな?」
タケヒコがリーダーでもないのにパーティを仕切っていた。
「異議なーし♪」
「私も、です。タクヤ君、何か……すいません」
「あ、ああ。俺もそれで……。ノノ、俺も悪かったな」
「……」
「……」
気まずい空気が流れた為、タケヒコが、これではいけまいと口を開いた。
「ま……、まあ、その話はここまでだ。空気を換える為にこの前手に入れた、ゼトの日誌、『森の日誌』でも読もうじゃねえか」
「おー♪」(約1名)
――、
『その剣や盾、甲冑を物珍しそうに眺めていると、黒装束を身にまとった集団が、ぞろぞろと現れてきた……』
「この続きからだな、読むぞ――」
『その集団は、黒い杖を持ち、どこの世界のモノか分からない言語を使い、それぞれ会話していた。その黒装束を身にまとった集団を黒魔術と呼ぶこととする。私が生を授かった場所、そこは痛いほどに白い白い光で満ちた、8つの鏡が合わせ鏡に並べてある空間だった。黒魔術氏がその8つの鏡の前に立ち杖を掲げた。そして今度は私の耳で私の脳ではっきりと理解できる言語で言うのだった。“冥界の王よ、よくぞ舞い降りでくれた”』
「――『森の日誌』はここまでだな」
「なっ!」
「んー!」
「何でいつも良いところで終わるんだよ!?」
「何でいつも良いところで終わるんですか!?」
『森の日誌』を読み終えたタケヒコに、タクヤとノノは噛み付いてきた。そこでセルジュは冷静にボソりと呟く。
「まぁ、テレビだろうがネットの動画だろうが、どんなメディアでも続きが気になるところでその回を終わらせるのは、定石だよね♪」
「ぐぬぬ……」
「はぁー、セルジュさんには敵いませんね」
タクヤとノノは反論せずに渋々口を閉ざした。
「んー、じゃあ次の日誌を手に入れに、行くとしますか」
一伸び二伸びし、タクヤはパーティに声を掛ける。そしてパーティは声を揃えて言う。
『行くぞ!! 底無しの沼地へ!』




