第八十三話 草原の日誌
「ゼトの日誌、見つけるぞー!」
『おー!!』
「ザッザッザッザ」
草原を、パーティは力強く進む。
10分後――、
「ザッザッ……」
更に10分後――、
「……」
更に更に10分……
「だぁ――! クソ!! ゼトの日誌どころか、モンスター1匹として出て来ねぇじゃねーか!!」
「タクヤ♪ パーティのレベルが高いと、雑魚敵とはあまりエンカウントしない仕様になっているんだ」
「そうは言ってもよぉ、セルジュ。こんなに何も無いんじゃあ……」
「コツン」
「ん?」
痺れを切らしていたタクヤだったが、不意に足元にあった何かに、つま先が当たり、しゃがみ込んでみる。
すると――、
「な……!?」
『草のかけらを手に入れた!』
タクヤのつま先に当たったのは、草原にある“かけら”だった。
「おーし。皆、帰るぞ。コレで俺もクラスチェンジできるからな」
「ズコー」
タクヤ以外のパーティの面々は盛大にずっこけた。タケヒコは体勢を立て直した後、怒鳴りながら言った。
「おい!! ゼトの日誌が見つからなければ、このゲームクリアできないんだぞ!!」
「いやー、先ずは俺のクラスチェンジからっしょ(笑)。コレで俺もドラゴンマスターにクラスチェンジ……」
「タクヤ♪」
そこですかさずセルジュがタクヤに話し掛けた。
「何だ、セルジュ?」
「それがさぁ♪」
「ん?」
「出来ないんだよ♪ クラスチェンジ」
「何でかけら見つけたのにクラスチェンジできないんだぁ!? 俺を騙したなぁ!? セルジュ!!」
「タクヤの早とちりだよ♪ かけら“集め”をしなければ、クラスチェンジできないんだ」
「どういうことだ?」
「かけらは8種類あるんだ。今回手に入れたのは、『草のかけら』、あと7種類集めないとね♪」
「!!」
タクヤは、雷に打たれた様な衝撃を受ける。
そして――、
「ガクゥ……」
膝から崩れ、落ちる。
「あちゃー♪」
セルジュはタクヤの心中を察し、哀れみの感情を表した。ノノとタケヒコはと言うと、ひそひそ声で話をしていた。
(かけらかけらって、まだ自分のクラスチェンジを気にしてますよ)
(一人だけクラスチェンジできてないから、寂しいんだよ。きっと)
「……」
タクヤは暫くの間、無言だった。そして20秒が経ったくらいのところで立ち上がり、声を大にして言う。
「くくく、はーっはっはっは! 流石、『The battle begins on the farm』!! 簡単に俺をクラスチェンジさせてくれないか! 面白い。ならば最高の舞台で、準備が整ってからクラスチェンジし、ラスボスをこの手で葬ってやろう!!!!」
タクヤのテンションの変貌っぷりにパーティの面々はやれやれといった形で溜め息をついていた。
「ふー、いつものタクヤ君ですね」
「アレだけ言えりゃ問題ないか……」
「タクヤらしい♪」
と、ここでタクヤが何かに反応を示す。
「! こっちだ!!」
「何だ!?」
「タクヤレーダーが反応しましたね」
「タクヤの豪運、発動かな?」
タケヒコ、ノノ、セルジュはそれぞれに言う。タクヤは元居た場所より、5mほど北へ進み、草原に無数に存在する雑草をかき分けた。そこには、
「こ……これは……!」
『ゼトの日誌を手に入れた!』
タクヤは古びた書物をその手の中に収めた。
「あー♪」
「まぢか!?」
「えーっと、これって……」
セルジュ、タケヒコ、ノノはタクヤの手にした書物、『ゼトの日誌』を目にし、それぞれリアクションをとった。
「ん? どうした、皆? ハトが豆鉄砲食らった様な顔して」
『最後の試練・草原マップ、クリアだー!!』
三人はタクヤにワッと詰め寄る。そして――、
『わっしょい! わっしょい! わっしょい! わっしょい!』
タクヤの胴上げをおっぱじめた。
「ま、待てー! 前もこんなことあった様な……」
『横わっしょい!』
「ギャッ!!」
三人は、不意にタクヤを真横に投げ飛ばした。そして話を進めていく。
「中身が気になるな(前に見たかも知れないけど)!」
「早速読んでみましょうよ!」
「んーと♪ 何々?」
雑草生い茂る草原の中、タクヤは大の字になって空を見上げ、思うのだった。
(コイツら、人を何だと思ってやがるんだ……。てか横わっしょいって何だ……?)
そんなタクヤを他所に、セルジュはタケヒコとノノの前でゼトの日誌を読み始めるのだった。
「読むよ♪ 私は無敵だった。この世界で私と互角以上に戦える者はいないと思っていた――」
『そう、奴が現れるまでは――。私がこの世界で生を授かった時には、既に私は成人となっていた。身に付けていた物は古ぼけた布切れ一枚だったが、私の目の前には剣に盾、甲冑が無造作に置いてあったのだ』
「フムフム、です」
ノノは食い入るように、セルジュの口から発せられる日誌の内容を聞いていた。
「続けるよ♪」
『その剣や盾、甲冑を物珍しそうに眺めていると、黒装束を身にまとった集団が、ぞろぞろと現れてきた……』
「と♪ 草原の日誌の内容はここまでだね」
「ちょっと待ったー!! そんな良いトコで終わるんかい!!」
タクヤが首跳ね起きしながら叫んだ。セルジュはそれに対し、笑顔で答える。
「うん♪ プレイヤーを引き付ける、物語の基本だね♪」
「続きは『森』の日誌を手に入れなければならないのか……それなら!」
『次の日誌も、必ずゲットだぜ!!』




