第八十二話 ダイスライム戦
草原――、
辺り一面の色鮮やかな緑が、風になびいている。そこへ、タクヤ達一行が登場した。
「おっしゃー! 絶対にかけら、集めるぞー!!」
「タクヤぁ♪ クラスチェンジも良いけど、これから始まる最後の試練は、『ゼトの日誌』を集めるという、試練なんだ」
「ぐぬぬ、セルジュ。その日誌とやらは、かけら集めと並立して集められないのか?」
「確実にとは言えないけど、だいたい二つは近くに存在しているよ♪」
「よっしゃー! 日誌もかけら集めついでに見つめるぞぉー!」
「かけらのがついでなんだって♪」
タクヤとセルジュが会話している大分後ろで、ノノとタケヒコは少し冷めた様子で、距離を置き会話していた。
「なんか二人だけで盛り上がっちゃってますね」
「だな。これからどんな大変なことがあるかも知らずに……」
「そんなに大変なんですか? 日誌集めって……」
「ああ。コンパスやマップのヒント無し。完全に運任せの探索になるな……」
「それは大変そうですね。でも……」
ノノはチラリとタクヤの方に視線をやった。そこには両腕を腰に当ててふんずり返っているタクヤの姿があり、大声を上げていた。
「がっはっはっは! 俺にすべて任せろ!! 何でも見つけてやるぜ!!」
その様子をタケヒコも見ており、両手を軽く上げ、はぁーという深い溜め息をつきながら手のひらを見せる。うんうんと、ノノは頷き言った。
「タクヤ君なら何かやってくれそうな気になってくるんですよね」
「だよな」
和やかな空気が漂っていた矢先――、
「ぬぬぬらぁ!」
「?」
「!」
「!!」
「!?」
『ダイスライムが現れた!』
「おっと、ダークレッドドラゴンを倒した俺らに、今更スライムが、何かできると思うなよ? HPもひっくいんだろ、きっと」
タクヤはそう言って意気揚々とステータスを確認する。
『PH999/999』
「ふぁ?」
「タクヤぁ♪ ここ、草原も、ストーリー攻略の進行具合で敵の強さも変わって来るから気を抜かないでね♪」
「だからといって、999はねーだろ! ダークレッドドラゴンでも777の大当たりだったのにぃ!!!!」
タクヤが発狂している中、タケヒコが冷静に言い放った。
「タクヤ、よく見ておけ」
「!?」
『タケヒコのターン:戦う――、斬り付ける!』
「スパッ!」
『ヒット! ダイスライム、HP:545/999』
「なっ!? 400ダメージ……以上……」
「タクヤ! ダイスライムは、HPだけ見掛け倒しの、柔らかいモンスターだ! 怯むことはないぞ!!」
「怯んどらんわ、タケヒコ! 俺をお前の物差しで測るんじゃねぇ!!」
「今日も仲良しだね,、二人とも♪ それじゃあいきますか」
『セルジュのターン:戦う――、ライトニング』
「パァアア!!」
眩い光が、ダイスライムを襲った。
「ぬぬらっ」
『ヒット! 効果は今一つ! ダイスライム、HP:293/999』
「うーん、光属性の攻撃魔法は今一つ、かぁ♪」
「おいセルジュ!! 今一つで252ダメージって何なんだよ!?」
何事も無かったかの様に飄々としているセルジュに対して、思わずタクヤは怒りのツッコミを入れた。
「次は……、私の番……!」
『ノノのターン:戦う――、ライジングサンダー!』
「はぁぁあああああああ!!!!」
「バリバリバリバリガラガラガッシャ―ン!!!!」
『ヒット! ダイスライム、HP:0/999、ダイスライムを倒した!!』
「よし! ノノ!!」
「ハイ!」
「パァン!」
タケヒコとノノは明るくハイタッチを交わした。
『経験値を手に入れた。タクヤLvアップ32→33、タケヒコLvアップ33→34、ノノLvアップ31→33、セルジュLvアップ35→37』
その時、タクヤの心境は――、
(お、俺を差し置いて、その他大勢で勝ちやがっただと……? 俺の出番は……)
レベルアップしたものの、わなわなと震えるタクヤだったが、ここでセルジュが彼に声を掛けた。
「やったねタクヤ♪ 労せずとも経験値もらえて」
「そ……、そうだな……。リーダーである俺が手を下すまでもない……(皆つえー。俺、取り残されちゃってる……?)」
口から出る言葉と、心の中にある言葉が一致しないタクヤだった。
――、
草原を十数分探索したが、特にこれといった成果は無く……。
「何だココ? 広いし、前の時の草原とは雰囲気が違うような……」
「タクヤぁ、前言ったかも知れないけど、草原マップもランダム生成マップになっているから、今のマップは前回来た時とマップの形状が違うんだ♪」
「そういやそんなコト言ってたような……」
「そうだぞタクヤ!」
「!?」
セルジュとタクヤの会話に、タケヒコが割って入ってきた。
「マップ全体を隈なく探す……忍耐力と精神力がキーとなる試練だ!!」
「ですね」
ノノも軽くうなずく。タクヤは固く拳を握り、少しだけ悔しそうに、大きな声で言う。
「くーっ! ここに来て難易度を上げてきやがったな、『The battle begins on the farm』!! やってやる!! 絶対にかけら、集めるぞー!!」
「タクヤ、ゼトの日誌が先だってば♪」
『タクヤ率いるパーティの士気が、より高まった』




