第八十四話 極悪ばばネコ
『深き緑の森――』
「ガアガア」
「ガサガサ」
「キキー」
薄暗く、不気味な森の中で、鳥類の鳴き声が鳴り響いていた。
「ここに来るのは、3回目くらいになるのか……」
「タクヤはそれくらいだな」
「それにしても♪」
「ええ」
((薄気味悪い!!))
パーティ4人のシンクロ率は、さながら200%くらいと、言ったところだろうか?
「スパッ!」
パーティはタケヒコを先頭に、草を刈りながら進んでいく。
「さっすが草刈……タケヒコ、有能だな!」
「(なんか言われかけた様な……)おうよ、先頭は任せとけ!」
後方ではセルジュとノノが会話していた。
「うーん♪ 何か……」
「ですよね。何か忘れている気が……」
瞬間――、
「ドッ!」
「う!」
何かがタクヤの背中に当たってきた。
『極悪ばばネコが現れた!』
「な!? 何だ?」
「タクヤぁ!!」
『バックアタック、先制! 極悪ばばネコのターン:盗む』
タケヒコが大声で注意するもむなしく……
『銀の槍が盗まれた』
「ッは!?」
『極悪ばばネコは逃げ出した!』
「追うよ、タクヤ♪」
「また俺のが盗まれるのかー!! てか、前回の性悪の次は、極悪かよ。卑しさもレベルアップしてんな、おい」
「良いから走って!」
「お……、おう!」
セルジュとノノに促されて、タクヤ達は走り出した。
「ハッハッ……いつもいつも装備盗まれるなんて、ツイてないね、タクヤ♪」
「ぜぇ……ぜぇ……るせっ! セルジュ。いつかお前も盗まれるぞ。あっ、ドラコに乗って行こ」
セルジュがタクヤに皮肉を言い、タクヤはへそを曲げた。と、同時に自分がドラゴンナイトであるコトを再認識した。タクヤはすぐさま、自分のドラゴンに乗った。
「ハッ……ハッ……そうやってまたすぐズルをする! 盗まれるのは普段の行いが悪いからですよ、きっと」
「んだとノノ! 乗せてやらないでもなかったが、今ので完全に交渉決裂だ。一生ドラコには乗せてやらねーぞーっと」
「どーせ最初から乗せる気無いでしょーが!!」
「何だぁ!? 俺がそんなに心の狭い人間に見えるのか!」
「シャ――――!!」
「ガルルルル!!」
ノノとタクヤの小競り合いが始まり出した頃、パーティは森の中の開けた場所に出た。そこでタケヒコが右手人差し指で、極悪ばばネコの居る場所を指し示した。
「居たぞ! あそこだ!!」
極悪ばばネコが、他のそれよりは一回りも二回りも大きな樹の上に登り、銀の槍を口にくわえてこちらを見ていた。
「コラー!! その槍、返さんかいー!!」
「ニタァ……」
タクヤが大声で極悪ばばネコを叱り付けたが、そのネコは不敵な笑みを浮かべながら、尻尾で木の枝をピシっピシっと叩いていた。
((わー、悪い顔してんなぁ。そんで、返す気ゼロ))
パーティは打ち合わせもしていないのに同時に同じコトを思っていた。そこでノノは口を開く。
「まぁ、前にして見せた様に、今回も私がネコにサンダーを撃てば、万事解決ですね」
「おっと、はたしてそうかな?」
「!」
タクヤが口を挟んできた。
「今の俺はこのドラコに乗っている。このドラコと一緒なら、空だって飛べんだぜ? 樹の上に行くコトくらい平気でできる、つ! ま! り! は!」
「!?」
「俺一人でもあのネコから銀の槍を取り返すことができる!!」
「引く気は無いってコトなんですね……なら!」
タクヤとノノはニヤリと笑い、同時に言葉を発した。
『競争だ!!』
「ドラコ、行くぞ!!」
ドラゴンに乗ったタクヤは、樹の上まで飛び立って行った。
「なんの! サンダー」
「ゴロゴロ……ピシャア!!」
ノノはタクヤがネコへと到達する前に、サンダーを放った。
「に?」
ノノのサンダーが、極悪ばばネコを襲う。
「バリバリバリ」
「にぎゃああああああ!!!!」
雷は直撃、丸焦げになったネコは、口からくわえていた銀の槍を放した。
「おっ!」
槍は、タクヤの上に落ちてきた。パシッと景気よくタクヤはその槍を掴み取り、
「銀の槍、(奪い)取ったどー!!」
奪い返した。そして自信満々にノノに言うのだった。
「さぁて。コレで勝負は俺の勝ちだな、ノノ」
「ハァー!? 私のお陰で槍が落ちてきたのをたまたま手にしただけなのに、何言ってんですかー!?」
ノノも負けじと大声で反論する。
「俺が先に取り返したの!」
「それなら私が先にサンダーを当てました!」
「ガルルルル!!」
「シャ――――!!」
「そんなコトより!」
「!!」
「!?」
「極悪ばばネコが登った樹の下に、何かあるぞ!!」
タケヒコが例の樹の根元を指差していた。
「んー♪」
セルジュがその樹に近付き、根元を手で探る。
「コレは♪」
「どうしたセルジュ!?」
冷静になったタクヤが、セルジュのもとへと駆け寄る。さっきまでのケンカがウソの様に、その興味は樹の根元にある“何か”に向かっていた。
「全く……」
肩透かしを食らった様に、ノノは不満そうにタクヤの様子を見ていた。
「タクヤ♪ やったよ!」
「な!?」
「マジか!!」
タクヤとタケヒコは驚愕した。セルジュが持っていたのは、『森の日誌』と『木のかけら』だった。
「うお――――!! 極上ばばネコ、最高――――!!!!」
「『極悪ばばネコ』、だって……♪」
セルジュは溜め息交じりに言うのだった。




