第七十九話 悪運、尽きる?
タクヤの実家(ゲーム内の)の離れにて――、
「おめでとうございます。今回のクエストクリアの報酬はこれです」
受付嬢がタクヤ達パーティに賞賛の言葉を投げかけた後、クエストの報酬を与えるようだ。タクヤはウッキウキで逸る気持ちを抑えられないでいた。
(何貰えんだろ!? もしかして、遂に俺専用のクラスチェンジアイテムとか!!? 遂に俺、ドラゴンマスターになれるとか!!!?)
(やれやれ、肌から浮かれた言葉がにじみ出ているようだぜ……)
タクヤのその様子を見て、溜め息をつきながらタケヒコは思うのだった。
受付嬢は両手で報酬のアイテムを差し出してきた。
「はい!」
「おお!!」
『魔導士の杖を手に入れた! 1000コインを手に入れた!』
「ちょっと待てぇぇええええ!!!!」
タクヤは切れ味鋭いツッコミを入れていった。
「お! れ! の! クラスチェンジアイテムはぁぁああ!? 魔法使い系のクラスチェンジアイテムが、なーんで二つのクエストで、2連続で出てくんだよー!?」
「これは、ノノに使おう」
「ハイ、ノノちゃん」
「わーい、やったぁ!」
「お前ら無視すんな!!」
タケヒコ、セルジュ、ノノは見事なまでにタクヤを無視して、話を進めて行こうとしていた。当然、納得いかないタクヤは抗議を申し立てた。
「俺のクラスチェンジアイテムはどうしたー!?」
「……」
「……」
「……」
「2連続で魔導士の杖が出てくるのは、インチキじゃないのかー!?」
「……」
「……」
「……」
「なーんで誰も一言も言わねーんだよ! セルジュ、せめてお前だけは相手してくれー!!」
タクヤはセルジュの両肩を掴んで、ぐわんぐわんと揺さぶっていった。
「あー、それめんどくさいかも。答えてあげよう、だから止めてね♪」
「ハイ!!」
タクヤはセルジュの言葉を耳にすると、それまでの動作をぴしゃりと止める。そして真剣な眼差しでセルジュの話の続きを聞こうとした。
「おほん♪ これまでのオープンワールド形式のクエストの報酬は、難易度が上がるごとにレアアイテムとなるクラスチェンジアイテムが手に入り易い仕様になっているんだ」
「メモメモ」
タクヤは学生さながらの姿勢でセルジュの話をメモしている。
「それで、高難易度のクエストで手に入るクラスチェンジアイテムは……」
「クラスチェンジアイテムは!?」
「ランダムで、各役職ごとのモノが手に入るようになっているんだ♪ タクヤの豪運も、今回は不発だったね♪」
「ガーン……ガーン……ガーン……」
タクヤは身体を槍で突かれた様なショックを受け、膝から崩れ、落ちる。
「まぁ、ゼト戦までにクラスチェンジしておけばいいわけだから、そこまで気にする必要は無いよ、タクヤ♪」
「ハハ。そ、そーだよな、セルジュ。そんな気にしてる必要はねーな……」
タクヤはセルジュの言葉に、なけなしの気力を振り絞り立ち上がる。
と、そこで――、
「でも私がクラスチェンジしたら、まだしてないのタクヤ君だけになりますね」
「ぐはぁっ!!」
ノノの心無い一言が……。タクヤは心がえぐられる思いになり、再び膝から崩れ落ちる。
「まぁ早いところ、アイテム使っとこうぜ」
「だね♪」
「ですね!」
パーティは傷心中のタクヤをよそに話を進める。タクヤはフルフルと震えながら、悔し涙を浮かべて怒り、言う。
「ケッ!! 勝手にやってろ!!」
――、
「じゃあ、行きますよ?」
『ノノは魔導士の杖を使った』
ノノの身体が眩い光に包まれる。
「パァアア」
光が消え去った時、ノノの姿が変貌を遂げていた。
それは、長帽子に黒いスカートといったものから、赤を基調としたドレスに近い服で、杖を持っている、といった見た目に変わっていた。
『ノノは攻撃魔法系魔法使いから魔導士へとクラスチェンジした』
「……変……じゃないかな……?」
ノノは自分の姿をキョロキョロと見ながら、言う。
「似合ってるよー♪」
「ああ」
「ありがとう……ございます」
ノノは少し顔を赤らめながらボソりと呟いた。一見、はたから見れば微笑ましい光景も、タクヤにとってはイライラの対象でしかなく……
「ケッ!! おめでたいヤツらだぜ!」
彼はへそを曲げたままだった。
「タクヤぁ♪」
と、そこへ顔を出したのはセルジュ。何かしらありそうな、思わせぶりな態度で、タクヤの目前まで顔を近付けてきた。
「な、何だよ? セルジュ……。何か言いたげだな」
「タクヤ♪ ここでへそを曲げたウチのパーティのリーダーに、朗報があります!」
「何だそりゃ? つまんねぇコトだったらシカトするぞ」
ふっふーと、鼻息を少し荒げたセルジュは自信満々で腰に手を当てていた。
「ご心配なく♪ きっと役立つ情報だよ。これから始まる、ストーリー上のミッション、“最後の試練”で集められる『かけら』で、任意のクラスチェンジアイテムが、手に入りまーす♪」
「なっ!? それって……?」
「運任せの報酬と違って、『かけら』を集めるコトでドラゴンナイトのクラスチェンジアイテム、龍の証が確実に手に入るんだよ♪」
「よし、最後の試練を今すぐ始めよう」
タクヤは急に、やる気を無くし不貞腐れていた表情から、これから結婚式でも挙げるかの様にキリッとした表情で言った。
「……♪ 現金だね」




