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俺が入院しているスキに俺の実家がRPGの舞台になっていた件について  作者: 時田総司(いぶさん)
第六章 オープンワールド

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第六十八話 魔導士の杖

「今回手に入れた魔導書、どう使います?」




ノノがパーティに話し掛ける。タクヤ達一行は、始まりの村の飲み屋に居た。タクヤ達の席には、サンチュで巻いた美味しそうな肉やみずみずしいサラダ、ノンアルコールかと思われる飲み物が並んでいた。何か考えが有り気にセルジュが口を開いた。


「んー、ノノちゃん♪ 魔導書1冊使っていいよ」




「!」


「!?」




咄嗟にタクヤがセルジュに問う。


「どうしたセルジュ!? 譲り合いの精神に目覚めたか? それとも強者の余裕か!?」


「やだなぁ、タクヤ♪ この前一人でこのゲームプレイして、ギガトンヒール覚えたから、今すぐには魔導書使う必要性があまりないからだよ」


「ふーん、成る程な。じゃあノノ、お前使うか?」


「ハイ、そうさせていただきます」


一行は飲食を終え、飲み屋を出た。




村の路上にて――、


「行きますよ」




『ノノは魔導書を使った』




ブワっとノノが持つ書物が光り輝き出した。


「うおっ」


タクヤもその眩い光に、目を覆った。


「シュゥゥン」


光が消えた時、書物は無くなってしまった。




『ノノはライジングサンダーを覚えた』




「何だ? ライジング……、サンダー?」


ハテナ顔のタクヤ。一方でノノはフルフルと震えていた。


「どした? ノノ……?」


タクヤは恐る恐る、ノノの顔を覗き込んだ。






「いぃぃいい、やったー!!」






「!?」


「やっとこの技に辿り着きました!!」


「何だ? そんなにすごい技 (小並感)なのか?」


「おうタクヤ、俺が説明してやるぜ」


今回初セリフをもらったタケヒコが割って入った。


「黙れ、メタ発言はよせ」


…………。


「いいか? ライジングサンダーは、サンダーの強化版の攻撃魔法で、高威力のみならず、全体攻撃もできるんだ」


「それって……」


タクヤは目を丸くする。すると、胸を張ったノノが声高らかに言い放った。


「ハイ、同時に複数体の敵に攻撃できるんです! その分、消費するMPは多いのですが、後半戦にかけてメインウェポンになる技です」


「やったね♪ ノノちゃん」


セルジュが気さくに話し掛ける。それに対しノノは涙ながらに話した。


「はいー!! 前回プレイではここまで来る前に断念しちゃったので……本当にうれしいです!!」


「ほう、そうかそうか。して、もう一つの魔導書は如何にする?」




『!?』




タクヤの突然の問い掛けに、三人はハッとする。




「そういえば……」


「どうします?」


「♪」




タクヤは腕を組み、少し下に顔を向けながら言う。


「うーん、俺の考えでは……」




「保留にしよう♪」




「!!」


セルジュが、タクヤの言葉を遮り、言った。


「ノノちゃんが、ライジングサンダー覚えたし♪」


「あのー?」


「先ずはその威力を実践で見てみたいしね♪」


「もしもーし」


「この後の離れでの報酬次第で、どうするか決めよう♪」


「そうか! クエストでもらえる、離れでの報酬がまだだったな」


「そうですね! そちらも楽しみです」


タクヤを無視して、持論を展開したセルジュ、更にこれまたタクヤを無視して、報酬の話をするセルジュ、タケヒコそしてノノに、タクヤは絶句していた。


(このパーティのリーダー、俺なんですけど……)


膝から崩れ、落ちる――。


「どしたのタクヤー? 実家の離れ、行っちゃうよー♪」


「あー待て待て、俺も行くー!!」




――、


「こちらが今回のクエスト、『水の都の秘宝』の報酬です!」


タクヤ達一行は、始まりの村、タクヤの実家の離れに着いた。受付嬢のNPCが朗らかな笑顔でタクヤ達に報酬を渡していた。




『魔導士の杖を手に入れた! 500コインを手に入れた!』




「よっし! 飲み屋でなんやかんや使って800コインになったけど、これで1300コインだ!」




「……」


「……」


「……」




一人喜ぶタクヤだったが、周りは静まり返っていた。


「アレ? ちょ……俺、何か悪いコト言った? あ……、何かゴメン」


「そうじゃないよ♪」


セルジュは優しくタクヤに語り掛けてくる。


「タクヤぁ♪ 今日、ここでもらったクエストの報酬は?」




「500コイン」




ズデッとズッコケながらセルジュは言う。


「そうじゃなくて、もう片方の方♪ 魔導――」






「魔導士の杖ですよぉ!! 金にしか興味が無いんですかぁ!? この金の亡者!!」






ノノが割って入ってきた。


「魔導士の杖ですよ! ま! ど! う! し! の! つ! え! コレは魔法使い系の役職がクラスチェンジするためにあるんです!」


ノノは興奮気味にタクヤに言い放った。それに対し、タクヤは……


「何!? クラスチェンジアイテムだと!?」


「ハイ」


「俺のは無いのか!?」




『ズデッ』




あくまで自分本位だったため、ノノ達は腰を抜かす形でズッコケた。


ノノは気を取り直して、タクヤに言う。


「た、タクヤ君のは……」


「うんうん」


「……まだありません」


「なーんでだよぉぉおお!!」


タクヤはその目いっぱいに溢れんばかりの感情を抑えきれず――、




「うわぁぁああん!!」




泣き、叫んだ。呆気にとられつつもタケヒコはセルジュとノノの二人に相談した。


「こ、この子供は放っとくとして、セルジュ、ノノ。どっちが使う?」


「んー♪」


「……」


二人は数秒、静かに考えた。


そして――、


「あのっ」


先に口を開いたのはノノだった。


「セルジュさんが使うべきだと思います」

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