第六十八話 魔導士の杖
「今回手に入れた魔導書、どう使います?」
ノノがパーティに話し掛ける。タクヤ達一行は、始まりの村の飲み屋に居た。タクヤ達の席には、サンチュで巻いた美味しそうな肉やみずみずしいサラダ、ノンアルコールかと思われる飲み物が並んでいた。何か考えが有り気にセルジュが口を開いた。
「んー、ノノちゃん♪ 魔導書1冊使っていいよ」
「!」
「!?」
咄嗟にタクヤがセルジュに問う。
「どうしたセルジュ!? 譲り合いの精神に目覚めたか? それとも強者の余裕か!?」
「やだなぁ、タクヤ♪ この前一人でこのゲームプレイして、ギガトンヒール覚えたから、今すぐには魔導書使う必要性があまりないからだよ」
「ふーん、成る程な。じゃあノノ、お前使うか?」
「ハイ、そうさせていただきます」
一行は飲食を終え、飲み屋を出た。
村の路上にて――、
「行きますよ」
『ノノは魔導書を使った』
ブワっとノノが持つ書物が光り輝き出した。
「うおっ」
タクヤもその眩い光に、目を覆った。
「シュゥゥン」
光が消えた時、書物は無くなってしまった。
『ノノはライジングサンダーを覚えた』
「何だ? ライジング……、サンダー?」
ハテナ顔のタクヤ。一方でノノはフルフルと震えていた。
「どした? ノノ……?」
タクヤは恐る恐る、ノノの顔を覗き込んだ。
「いぃぃいい、やったー!!」
「!?」
「やっとこの技に辿り着きました!!」
「何だ? そんなにすごい技 (小並感)なのか?」
「おうタクヤ、俺が説明してやるぜ」
今回初セリフをもらったタケヒコが割って入った。
「黙れ、メタ発言はよせ」
…………。
「いいか? ライジングサンダーは、サンダーの強化版の攻撃魔法で、高威力のみならず、全体攻撃もできるんだ」
「それって……」
タクヤは目を丸くする。すると、胸を張ったノノが声高らかに言い放った。
「ハイ、同時に複数体の敵に攻撃できるんです! その分、消費するMPは多いのですが、後半戦にかけてメインウェポンになる技です」
「やったね♪ ノノちゃん」
セルジュが気さくに話し掛ける。それに対しノノは涙ながらに話した。
「はいー!! 前回プレイではここまで来る前に断念しちゃったので……本当にうれしいです!!」
「ほう、そうかそうか。して、もう一つの魔導書は如何にする?」
『!?』
タクヤの突然の問い掛けに、三人はハッとする。
「そういえば……」
「どうします?」
「♪」
タクヤは腕を組み、少し下に顔を向けながら言う。
「うーん、俺の考えでは……」
「保留にしよう♪」
「!!」
セルジュが、タクヤの言葉を遮り、言った。
「ノノちゃんが、ライジングサンダー覚えたし♪」
「あのー?」
「先ずはその威力を実践で見てみたいしね♪」
「もしもーし」
「この後の離れでの報酬次第で、どうするか決めよう♪」
「そうか! クエストでもらえる、離れでの報酬がまだだったな」
「そうですね! そちらも楽しみです」
タクヤを無視して、持論を展開したセルジュ、更にこれまたタクヤを無視して、報酬の話をするセルジュ、タケヒコそしてノノに、タクヤは絶句していた。
(このパーティのリーダー、俺なんですけど……)
膝から崩れ、落ちる――。
「どしたのタクヤー? 実家の離れ、行っちゃうよー♪」
「あー待て待て、俺も行くー!!」
――、
「こちらが今回のクエスト、『水の都の秘宝』の報酬です!」
タクヤ達一行は、始まりの村、タクヤの実家の離れに着いた。受付嬢のNPCが朗らかな笑顔でタクヤ達に報酬を渡していた。
『魔導士の杖を手に入れた! 500コインを手に入れた!』
「よっし! 飲み屋でなんやかんや使って800コインになったけど、これで1300コインだ!」
「……」
「……」
「……」
一人喜ぶタクヤだったが、周りは静まり返っていた。
「アレ? ちょ……俺、何か悪いコト言った? あ……、何かゴメン」
「そうじゃないよ♪」
セルジュは優しくタクヤに語り掛けてくる。
「タクヤぁ♪ 今日、ここでもらったクエストの報酬は?」
「500コイン」
ズデッとズッコケながらセルジュは言う。
「そうじゃなくて、もう片方の方♪ 魔導――」
「魔導士の杖ですよぉ!! 金にしか興味が無いんですかぁ!? この金の亡者!!」
ノノが割って入ってきた。
「魔導士の杖ですよ! ま! ど! う! し! の! つ! え! コレは魔法使い系の役職がクラスチェンジするためにあるんです!」
ノノは興奮気味にタクヤに言い放った。それに対し、タクヤは……
「何!? クラスチェンジアイテムだと!?」
「ハイ」
「俺のは無いのか!?」
『ズデッ』
あくまで自分本位だったため、ノノ達は腰を抜かす形でズッコケた。
ノノは気を取り直して、タクヤに言う。
「た、タクヤ君のは……」
「うんうん」
「……まだありません」
「なーんでだよぉぉおお!!」
タクヤはその目いっぱいに溢れんばかりの感情を抑えきれず――、
「うわぁぁああん!!」
泣き、叫んだ。呆気にとられつつもタケヒコはセルジュとノノの二人に相談した。
「こ、この子供は放っとくとして、セルジュ、ノノ。どっちが使う?」
「んー♪」
「……」
二人は数秒、静かに考えた。
そして――、
「あのっ」
先に口を開いたのはノノだった。
「セルジュさんが使うべきだと思います」




