第六十九話 パーティカースト
セルジュは、いつもの心を悟られない、独特の口調で問う。
「どうして? ノノちゃん♪」
「はい。私は先程、魔導書を使って、新しい攻撃魔法を覚えたばかりです。おこがましいかも知れませんがその分セルジュさんよりも戦いやすくなったと思っています。セルジュさんは基本的に回復魔法を使ってバトルでサポート役に回っていますが、今回クラスチェンジをして攻撃魔法を覚えられたら……」
「もっと心強い戦力になる――、な」
タケヒコがここで口を挟んできた。
「……、ハイ」
「うわぁぁああん!!」
「……」
「……」
「……」
相変わらずタクヤは泣き叫んでいる。
「と、とにかくそういうコトだ、セルジュ。お前がクラスチェンジするコトに文句は無いな?」
「うん♪ そういうコトならそれでいいよ」
――、
『セルジュは魔導士の杖を使った』
セルジュの身体が眩い光に包まれる。
「♪」
光が消え去った時、セルジュの姿が変貌を遂げていた。それは、黒いマントに長帽子といったものから、白を基調とした祭服で、杖を持っている、といった感じに変わっていた。
『セルジュは回復魔法系魔法使いから司祭へとクラスチェンジした』
「おお!」
「ハイ!」
タケヒコとノノは、歓喜の声を上げた。
「どう? 変じゃない……かな♪」
「とってもお似合いですよ!」
「ああ、似合ってるぜ」
「ふふ♪」
そして――、
『セルジュはマジックヒールを覚えた』
「あっ」
「やったな、セルジュ!」
セルジュが新しい回復魔法を覚え、タケヒコが労いの言葉をかけたのだったが、ノノは、両手を口元に当て、言葉を失った様子だった。
「? どうした? ノノ。セルジュがせっかく新しい技、覚えたんだ。喜ぶところだろ?」
「あ、ハイ……。それなんですが……」
「?」
「♪」
「役職、司祭は攻撃魔法も覚えるじゃないですか。だから、せっかくなら攻撃魔法を覚えた方が良かったんじゃないかと、思いまして」
と――、
「うわぁぁああん!!」
「……」
「……」
「♪」
未だに相変わらずタクヤは泣き叫んでいる。
「こ……、この体は大人で頭脳は子供のドラゴンナイトは放っとくとして、次だ」
仕切り直して、タケヒコは話を進める。
「攻撃魔法か、うーん……」
「確かに、司祭なら光属性の攻撃魔法覚えられるね♪ どうする?」
「……あっ!」
「どうした、ノノ?」
「♪」
「『魔導書』、まだ有ったじゃないですか! 使ったら光属性の攻撃魔法覚えられるかも知れませんよ!?」
「確かに♪」
「だな!」
「使いましょう!」
こうして、とんとん拍子にセルジュが魔導書を使うことが決定した。
『セルジュは魔導書を使った』
ブワっとセルジュが持つ魔導書が光り輝き出した。数秒して、
「シュゥゥン」
光が消え、書物は無くなってしまった。
『セルジュはライトニングを覚えた』
「やりましたね! ……っは!!」
賞賛の言葉をかけたノノだったが、ここで何かに気付く。
タケヒコ:剣闘士、クラスチェンジ後。Lv31、HP180、強い。
セルジュ:司祭、クラスチェンジ後。Lv32、HP未知数。回復魔法、攻撃魔法使える。
タクヤ:……。Lv……。……。
ノノ:攻撃魔法系魔法使い、クラスチェンジ前。Lv29、HP151、攻撃魔法は使えても回復魔法は使えない。
「っはぁぁああ!!!!」
ノノは自分のパーティの力関係を考察し、ショックのあまり膝から崩れ落ちた。
(ちっきしょー!! これじゃあビリから2番目以内じゃないですかー!?)
思わずタケヒコが駆け寄り、言葉を投げかける。
「ど……、どうした? ノノ」
「ハ……ハハ。魔導書、私が使っておけば良かった……」
「……」
ノノの様子を見たタケヒコは、返す言葉が見つからなかった。
「ガクゥ……」
「うわぁぁああん!!」
半分壊滅状態のパーティだったが、この状況を打破する秘策を、セルジュは打ち出す。
「時にタクヤぁ♪」
「うわぁぁ……!?」
「今有るコイン、1300コインで買える装備があります♪ さぁ、何でしょう?」
「……」
「♪」
「ハイ!」
「はい♪ タクヤ君」
急に手を上げるタクヤ、それに対してセルジュは手を差し伸べ、指名する形となった。
「それは――」
「それは?」
「1300コインで買える武器!」
「ズコー」
セルジュは勢い良くヘッドスライディングする形でずっこけた。
「タクヤぁ♪ 真剣に考えてる?」
セルジュは喜びのそれとはかけ離れた笑顔でタクヤに近付いてきた。
「ハイ、スミマセンデシタ。ワカリマセン」
「分からないなら、最初からそう言おうね。さて、タクヤ♪ 正確に言えばそれは1300コインじゃなくて、990コインなんだけど」
「なっ! セルジュ! お前、騙したな?」
「その情報あっても分かんないんでしょ♪」
「あ、ハイー」
フー、と溜め息をついた後、セルジュはゆっくりと口を開いた。
「『ドラゴンの鎧』……ドラゴンナイトの、重要アイテムだよ♪」
「!?」
「♪」
タクヤは神速のスピードでセルジュに近付き、ギュッと手を握って言う。
「ありがとう、セルジュ君。その『ドラゴンの鎧』というのはどこに売っているんだい?」
「現金だね♪ ここ、タクヤの実家の離れだよ」
「なっ!?」




