第四十一話 お盆
「いやー、お盆も出てくれるなんて助かるよ、タクヤ君」
「いいえ、お安い御用です!」
お盆――、
タクヤはバイト先のコンビニで働いていた。店長はタクヤの計らいに、心底感謝している様子だった。お盆だけあって、他のバイト社員は実家へ帰る等の理由で働き手が少なく、シフトが空いている状態だった。そこへタクヤが(暇だから)何日かシフトを入れ、働くこととなったのだ。
「バイト始めて、2週間くらい過ぎたけど、覚えが早くて助かってるよ」
「はは、要領が良いのが取り柄なんで」
「♪」
軽く談話していると、客がやって来た。
「いらっしゃいませ!」
タクヤは高校球児時代のなごりの所為か、店内に響き渡るような爽やかな声で挨拶をおこなう。客はタクヤの居るレジに、何か申込書を差し出した。
「……これ」
「公共料金のお支払いですね。内容をご確認されたら、画面にタッチしてください」
タクヤは申込書に日付印を押した。その後、客から一万円札を預かり、料金から差し引きお釣りを用意する。お釣りを渡すのとほぼ同時に、客の控えを申込書から切り離して、お釣りと共に客に渡す……
と――、
ここでタクヤは一旦、一呼吸を置く。
「レシートと控えをホッチキスでとめますか?」
「……いいえ、結構です」
「かしこまりました。お釣りとお客様控えです」
客はそれらを受け取ると、店を出ていった。
「ありがとうございました!」
そこへ、ポンポンと、タクヤの肩を叩く者が。
「!」
振り返るタクヤ。そこに居たのはコンビニの店長だった。右手親指をグッと立てていた。
「バッチリ!」
「店長……」
「よくあそこで確認したね。レシートとめろよって文句言ってくるお客さんもいるからね」「ありがとうございます!」
タクヤはぱあっと明るくなった。それから数時間――、
「――、112円が一点、合計1082円頂戴します」
タクヤはコンビニ業務を着々とこなしていった。
(ふー、高校卒業してすぐの就職先はてんでダメだったけど……)
「♪」
「いらっしゃいませ!」(俺って結構出来るヤツかも!)
タクヤは有頂天になっていた。
そこへ――、
「郵便、お願いしまーす」
「!?」
説明しよう! 郵便物を送るというサービスを、コンビニでもおこなっている。その際店員は、郵便物の重量やサイズを測り、それに見合った料金を請求するようになっているのだ!!
「あーっとその……えーっとあの……て、てんちょー(涙)!!」
タクヤは泣く泣く店長に頼り、その場をやり過ごした。
(クッソー。郵便の業務、チェック項目多すぎだっつーの……。早く覚えないと……)
郵便業務に対して、タクヤが苦汁を呑んでいると、そこへ――、
「タクヤ君」
「!?」
店長が声を掛けてきた。
「コンビニの業務って世間が思っているより覚えること多いよね。完璧に業務を覚えられるまで何週間かかかると思うよ。大変だけど頑張っていこうね」
「……」
店長の温かい言葉に、タクヤはフルフルと震えていた。
(何て……優しいんだ……)
そしてタクヤは口を開いた。
「店長!! 一生付いて行きます!!!!」
「はは。何だいそれは? 後、お客さんびっくりするからやめてね」
「っは、はい!」
――、
「お疲れ様でした」
タクヤの、お盆の業務は終わった様だ。その日は(郵便物に関する業務以外は)特に問題なく業務を終え、帰宅するのみとなった。
(今日の晩飯、何かなー? 精進料理とかはやめてほしいなー)
タクヤは、突っ込みに困る、理解に苦しむ様なことを考えながら家路を辿った。
――、
「ただいまー」
タクヤは自宅に帰った。すると、ドタドタと母が小走りで玄関までやって来た。
「ただいま、かーさん」
「タクヤ! 働くのはいいけど、お盆くらい……ああもう! 仕方ない。……今からお墓参り行くわよ」
「ふぁ!?」
「お父さんとお母さん、お姉ちゃんは午前中に行ってきたから、後はタクヤだけよ」
「ちょっと待ってよ、かーさん。もう日も沈みそうだぜ?」
「つべこべ言わない! タクヤがお墓参りなんて、ほとんど行かないんだから! こういう日をきっかけにして、行かないといけないの!!」
「!?(まぢか……)」
こうして、母の運転で、タクヤは先祖の墓まで赴くコトとなった。
道中――、
「いい? お線香あげて、手ぇ合わせて目をつむるの。絶対お願い事しちゃダメだからね!? 近況報告とか、感謝してますとか、そういうコトだけ考えればいいの。亡くなった魂も、忙しいんだからね?」
「へいへい、わーったよ」
「ホントに分かってるの!? もう! 罰当たっても知らないんだから」
お墓に着いた。
「うへー。夜の墓場ってまぢで不気味なのな、かーさん」
「ゴン☆」
母の鉄拳が、タクヤの頭部を襲った。
「ってー!」
「不謹慎なことばっか言って! この不届き者!!」
「わーったよ母さん。線香あげて……っと」
タクヤはお線香を先祖の墓にあげて、手を合わせて目を閉じた。
(近況報告……近況報告……今、バイト始めました。後、実家がモチーフになったゲームしてます。仲間がいて、楽しいです。全クリしたいです……。アレ? これお願い事?)
タクヤは墓参りを終え、車へ乗り込む。
「大丈夫だったのよね?」
「ん? ああ」
二人は寄り道せずに自宅へ帰っていった。『全クリしたいです』このお願い事の様な一言が、タクヤのゲームライフに大きな影響を与えたかどうか? それが分かるのは、この次以降のお話に――。




