第四十話 一泊
タクヤ邸(ゲーム内)を出て、すぐの庭――。
四人は星空を見上げていた。
「おー♪」
「キレイですね」
「俺の実家もそれなりだけどな」
「これが田舎の特権だよな、タカヒロ……タケヒコ」
((間違えたな))
三人のシンクロ率は400%を超えていた。
そこへ――、
「あっ! 何!? アレ……」
何か光るものが庭付近に現れたのを、ノノが発見した。
「あー、アレはだなぁ。ふっふっふー。聞いて驚くなよ? ホ……」
「蛍だね♪」
「――!」
勿体ぶった後、自慢げに話そうとしていたタクヤに、セルジュが割って入った。
(ガ――ン)
タクヤは少々、出ばなをくじかれた様なショックを受けた。
「何だセルジュ、知ってたのか? 俺の実家の近くの川にも出るぞ。セルジュの実家にも?」
「いやいや、私の実家はここより都会で、自然が少ないから蛍みたいな生き物は居ないんだ。蛍は、テレビとか図書館でたまたま見かけたから覚えてたんだよ」
「ふーん、ノノは?」
「私も、家は都会だから、蛍は初めて見ました。ゲームだけど……。ちっさな花火みたい……」
「ははっ! だってよ、タクヤ。……タクヤ!?」
タクヤはセルジュに台詞を奪われて、体育座りをしていた。
「ッハ!」
タケヒコは、タクヤのステータスを確認した。
『タクヤ:シ―フ、HP:56/115……55/115……54/115……53/115……52/115……』
「皆ぁー! タクヤが『毒』状態にぃいい!!」
「あらら♪」
「なんと!」
(てかコイツシ―フになってから体格はおろか精神まで貧弱に……)
タケヒコは思いを巡らす。
「でも、ホント良い実家だね♪」
「!」
セルジュはタクヤの耳に届くよう、少し大きめな声でささやいた。
「自然がいっぱいで空気もキレイ。都会にはいない生き物に逢えるし、心が安らぐよ♪ だからここが、『始まりの村』になったんだね」
「そっそうだろ!? さっすがセルジュ、物分かりが良いねぇ」
タクヤの顔色がどんどん良くなっていく。
「ッハ!」
タケヒコは、タクヤのステータスを確認した。
『タクヤ:シ―フ、HP:113/115……114/115……115/115』
(コイツ……どうなってやがる……? アルゴリズム上のバグか……?)
タケヒコは、にわかに信じがたい光景に、自身の目を疑った。
「よーし! 夜も更けてきたし俺の実家で寝るぞ! 皆!!」
「おー♪」
「おー」
(約二名)
ともあれ、パーティは、タケヒコとセルジュは1階両親の寝室、ノノは姉の部屋、タクヤは自室で寝るコトとなった。
「おやすみー」
「おやすみ♪」
2階へタクヤが階段を上がる途中、ノノが話し掛けてきた。
「タクヤ君!」
「?」
「もし部屋に入ってきたら、フルフレイムで丸焦げにしますからね……」
「お、おう……」
タクヤは自室に辿り着いた。布団に入り、目を閉じる――。すると、眠りの世界へと誘われ…………るコトなく、急に朝になった。
「はっや! 確かに大体のゲームこんな感じだけど……趣がねぇ!!」
ダッとダッシュで自室を出る。すぐにノノと廊下ではち合わせた。
「あっ、タクヤ君。おはよー」
「おはよっ! 下行くぞノノ!!」
ドタドタと階段を降り、タケヒコとセルジュが居るであろう部屋へ――。
「バタンッ」
大きな音を立ててタクヤは戸を開けた。
「二人とも!! 一瞬で朝になったか!?」
「ああ」
「うん♪」
タクヤはガクッと肩を落とす。
(これがVRの限界か……)
遅れてノノが後ろからやってきた。
「あのっ! 相談したいコトがあります!」
「何♪」
「何だ?」
「何(涙目)?」
「もうすぐ、お盆なので自分の実家に帰ったりしたいです」
「確かに! 俺もお盆は親戚集まったりするしな」
「うーん♪ 暫く休んじゃう?」
ノノの申し出と、二人の意見に耳を貸したタクヤは、重い腰を上げる。
「そうか、皆リアルが忙しいのか……しゃーない、このゲームも、お盆休みだ」
「あざます!!」
「ゲームでも、休みは欲しいよな」
「♪」
「じゃあこの後から、お盆明けの週の週末まで英気を養ってくれ! 次の集合はその週末金曜の22時! 遅れるなよ!!」
『ラジャー!!』
「じゃあ、解散!!」
タクヤはゴトっと装着していたVRゴーグルを外した。ゲームの世界では朝になっていたが、現実世界では夜のままだった。
「シャワーでも浴びて、眠るかな」
タクヤは2:00頃床に就いた。
(皆、働いてる……俺は病気だったけど……病気を理由に、逃げたくない……ノノは大変な目に遭ってるし、タカヒロも……多分セルジュも頑張ってる。リーダーの俺が、いつまでも病気を理由に甘えてちゃだめだ……)
タクヤはいつの間にか眠っていた。
翌月曜日――、
「いらっしゃいませ!」
タクヤはコンビニでバイトをしていた。ハツラツとした声で挨拶をしているタクヤは、店長から見ても好印象だった。
「赤マルのソフト2箱」
「ハイ! こちらでございますね」
火曜日、水曜日とレジ打ち、ファーストフードの調理、品出し等、業務をおこなっていくうちに、苦手だったタバコの銘柄も覚えられるようになっていった。
そして――、
「新しい業務を教えてもいい頃だね、タクヤ君」
検品という業務を教わるようになった。
検品とは、納品された商品の数が合っているか、専用の機器を使ってスキャンし、数合わせをする業務である、とでも言っておこうか。
ゲームを通じて仲間達から刺激を受け、着実に一歩一歩前に進んでいるタクヤの人生。完全に社会復帰できる日は来るのか……?




