第三十九話 にぎり!
「これは片想いの相手で、中学ん時の卒業アルバムの写真だよ」
「!?」
「!!」
ノノとセルジュはタクヤのその言葉に天から落ちた雷の様な衝撃を受けた。
「あの……タクヤ君が……」
「卒業アルバムをハサミで……」
ノノもセルジュも未だにその事実を信じられず、受け入れられずにいた。その二人の様子を見て、フーと溜め息をついたタクヤは続けた。
「中学の、一年生の時だけクラスが一緒で、一目惚れ……とはいかないか。ポニーテールが似合ってて初めて見た時は可愛いなくらいに思ってたけど、二学期くらいの時には、気付けばいつも目で追う様になってたよ。当時は引っ込み思案だったから、話し掛けたのも挨拶くらいで、二年生になってクラスが変わってからはほぼ関わり無しって状態だったな。三年間、想いを伝えるコトはなかったよ」
「タクヤにも♪ そんなセンチなところが……」
「中学ではそんなだったのに、今では壁にこんなグラビアアイドルのポスターを堂々と壁に貼る青年に成長してしまいましたね、皆」
セルジュとノノの言葉にうんうんと、タケヒコは首を縦に振っていた。
「セルジュとノノはまだしも、タケヒコ! お前までかよ!?」
味方0人の状態に気付き、タクヤは声を荒げた。
――、
「もういいだろ。次の部屋行こうぜ?」
「おー♪」
「おー」
「おー」
タクヤの提案にも、セルジュ以外は気が乗らない様で……。
タクヤのパーティはひとまず1階に降りる。
「ん?」
タクヤはキッチン横の、和風の居間の、楕円形の机の上に、ゲームらしきものが置いてあった。
「っはあああああああ!? ゲームの中にゲームがぁぁああああああ!!!!」
「五月蝿い♪」
ベシッと、セルジュはタクヤにチョップを食らわした。
「ってて、セルジュ! でも、ゲームがあるんだぜ? どうなるんだ?」
「色々めんどくさいコトになるから、やめとこうね♪」
「くぅー、気になるー!」
――、
「一泊するんだよな? タクヤ」
「ああ、それがどうした? タケヒコ」
不意に、タケヒコはタクヤに話し掛けた。
「まだ、ゲームの世界では夜まで時間がある。夜まで、何して過ごすんだ?」
「確かに! どーするかな?」
「ふっふーん♪ そこで、良いものがあるよー」
颯爽と登場したのは、セルジュだった。何か意味あり気に背中に手を回している。ノノは顔付近にハテナマークを沢山発生させながら言った。
「何ですか? セルジュさん、勿体ぶらないで早く言ってください」
三人を前にしたセルジュ。ジャーンと言わんばかりに、とある家電を差し出してきた。
「コレっ♪」
それは炊飯器だった。
「あーもう! また世界観が!!」
タクヤは頭を抱える。
「まあまあ、そう言わずに♪ 序盤、『始まりの村』から出る前に作ったお米を、離れの蔵に保管しているから採りに行こー」
「はー、仕方ねぇか」
「観念しな、タクヤ。セルジュには誰も敵わねぇよ」
「行きましょう!」
四人は離れに移動した。
途中――、
「おやっさん、ちょっと出かけてきます」
タクヤは玄関に居る、第四話でタクヤを殴った家主らしき人物に声を掛けた。
「おう、自由にしな」
家主らしき人物は快く送り出してくれた。
離れの蔵にて――、
「5合くらいかな♪」
「皆そんなに食わないからな」
タクヤ達は、セルジュを筆頭に米を袋に詰め込み、運んでいく。そんなに皆で持つような量ではなかったので、『攻め』ステータスが高く、力が強そうという理由でタケヒコが袋を運んだ。誰しもが特に文句も言わず平和的に母屋に帰ってきた。
キッチンにて――、
「よし! 早炊き…………はしなくていいよね♪」
『異議なし!』
夜まで暇なのか、四人は珍しく意見が統合していた。四人はキッチン横にある和室に集合した。
「あれから一週間くらいあったけど、皆何してた?」
話を切り出したのはタケヒコ、あぐらをかいてリラックスした様子だった。セルジュはさらりと返した。
「何もないよ♪」
「何だそれ? ホントはなんかあるんじゃねーの」
「何もないよ(威圧)」
「あ……、ハイ。スイマセン」
突っかかってきたタクヤだったが、セルジュの圧に負けた様だった。
「私は……さっきの通りです」
ノノは他人の家が苦手なのか、恐縮した様子で正座して答えた。言い出しっぺのタケヒコはここで口を開いた。
「俺は何だか変なコトがあった気がするが、気の所為かもな。タクヤは?」
「おっ! そうだ聞いてくれよ、皆。晴れて俺はコンビニバイトの面接受かって3日4日働いたんだ」
意気揚々と話すタクヤだったが、パーティの反応は辛辣で……。
「ふーん、無職パラサイトシングル生活脱却したか」
「やりましたね! よっ! 祝ニート引退!!」
「遅すぎ♪」
三人の発言を耳にし、わなわなと身体を震わせた後、タクヤは滝の様な涙を流しながら叫んだ。
「うるせぇやーい! 俺も好きで病気になった訳じゃねーんだよー!!」
タクヤは10分程、泣き止まなかった。
そして――、
「できた!」
「おお!」
「ほっくほくですね」
「うん♪ 良い感じ」
更に小一時間後、お米が炊き上がった。四人は出来上がったお米に、アイテム『普通の塩』を付けて握った後、和室で食した。
「おいしー……気がする」
「あったかーい……気がします」
「所詮はVRだからね♪」
「気持ちの問題だ、お前ら。完食すっぞ」
パーティリーダーのタクヤの命令通り、四人はにぎりを完食した。
『全員のHP、MPが回復した』




