第四十二話 お盆明け
「いらっしゃいませ!」
「ありがとうございました!」
「合計――円頂ます!」
「お疲れ様でした!」
お盆を含む平日――、タクヤは休まず働き続け、
「お疲れ様でした!」
「♪(店を出る音)」
「ぃよぉぉおおっしゃぁぁああああ!! 遂に!! 金曜の勤務終了!! 後は22時までに飯と風呂済ますだけだぜ!!」
タクヤはルンルン気分で家路を辿る。
道中――、
「んなぁー」
「!?」
宝石の様な、エメラルドグリーンに両目を輝かせる黒猫と鉢合わせになった。
「にゃ!!」
黒猫は去っていった。
「こ……幸運の黒い猫だな」
ともあれ、タクヤは実家に辿り着いた。
「ただいまー」
「お帰りタクヤ。ご飯少し冷めてるけど、いただきなさい」
「ありがと、かーさん。ん、今日はカレイか?」
「正解! 煮付けよ。良かったらもう一度火につけて温めるけど……」
「いーよ。すぐ食べる」
タクヤは2階の自室で着替えを済ませ、また1階に降りて食事を済ませたのち、風呂に入った。
「フー、極楽極楽……」
タクヤは湯舟に浸かり、天井を見ていた。
「(カレイ、美味かったなー。次食えるのは何時だろ……?)おっと!」
不意に、湯舟から上がる。(遅刻しちゃいけねぇからな、のんびりしすぎちゃいけねぇ)タクヤは風呂を済ませ、2階の自室に上がった。時刻は21:15。
(45分前行動はやり過ぎだろ。何事もやり過ぎはよくねぇ……)
タクヤは週刊少年チャンプを読むコトとした。
(何だろ……? 最近ギャグマンガしか読めなくなった気がする……ん?)
気付けば、時計は21:45を回っていた。
「そろそろ良いだろ!」
タクヤはマンガを読むのを止め、机に座り、VRゴーグルを装着した。
「『The battle begins on the farm』、スタート!」
「ザンッ!!」
今回は、オープニングムービーをボタン連打でカットし、タクヤは前回セーブポイントの始まりの村にいきなり登場した。直後、後方から声が飛んできた。
「やっほー♪」
「!」
振り返ると、そこにはセルジュが手頃なタルの上に座り、手を振っていた。フーと、溜め息をつく様に大きく息を吐いた後、タクヤはセルジュに話し掛ける。
「お前は何時も一番乗りだな、セルジュ。お盆休み、どーだった? なんかいいコトでもあったか?」
「特にないよ♪」
「またそれか、セルジュって常に素性を明かさないけど、何か意味でもあるのか?」
「んー、特にないよ♪」
ガクッと虚を突かれた後、タクヤはジト目で更に言葉を投げかける。
「本当か? まあいい。いつか、話してもらうからな」
「はーい♪ いつか、ね」
「シュイーン」
「!」
タクヤとセルジュの間に、突如として光り輝く物体が現れた。
「シューン」
光は段々と小さくなっていき、光の中からは1人の剣士が現れた。
「よー。タクヤ、セルジュ。早かったな」
剣士の正体はタケヒコだった。
「タケヒコ……。今日は俺の方が勝ちだな」
「大体俺の方が早いだろ、タクヤ。後、早く来たところで何もないけどな」
(今日も仲良し♪)
タクヤとタケヒコとのやり取りを、母親のような温かい目でセルジュは眺めていた。そこへ――、
「シュイーン」
「!」
またしても光り輝く物体が。
「シューン」
光は段々と小さくなり、そこから1人の魔法使いが現れる。
「アレ? もう皆来てる」
ノノが登場した。タクヤは、ノノが現れるや否や、ノノを茶化してきた。
「やーいノノがビリー」
「なっ! 早く来たところで何もないでしょーが!!」
「ん? タケヒコも同じ様なコト言ってたな。流石雑魚カップル、相思相愛だねぇー」
「誰が雑魚カップルだ!?」
「何が雑魚カップルですか!?」
「ほーら、息ぴったし」
「チャ」
タケヒコは徐に持っていた銀の剣をタクヤの喉元に突き付けた。
「!?」
「サッ」
ノノは徐に手にしている杖を構えた。
「!?」
二人はタクヤを脅しに掛かる。
「シ―フになって『守り』のステータスが低くなっているお前に、この斬撃を食らわしてやってもいいんだぜ?」
「レベルが上がった私のフルフレイムを、タクヤ君に浴びせてあげてもいいんですよ?」
「ハイ……。スミマセンデシタ、スベテワタシガワルイデス」
「フー、次はねぇぞ?」
「はぁー、ホントしっかりしてくださいよ?」
片言になってビビっている様子を見て、二人はタクヤを許してやった様だった。
「パン! パン! パン!」
『!?』
話がひと段落したのを見て、セルジュが手を叩き三人の注目を集めた。
「ハーイ♪ 仲良しなのが分かったところで、次のマップ、解説しまーす」
毎度の如く地図を広げるセルジュ。指で地図の一部分を指し示す。
「次に行くのはここ、『始まりの村』から北西に進んだところに在る、『ゼトの城跡』」
「待てセルジュ! ゼトってのはあのラスボスで……城ってコトは最終マップ? で、跡ってのは……」
「タクヤぁ、質問はまとめてからしようね♪ 楽しみをとっておく為に、ネタバレはしないんだけど、『ゼトが居た城があるぞ!』『ゼトはまだそこに居るのか!?』『行って確かめてみよう!』みたいな感じかな?」
「ざっくりしてんな……」
「俺は全クリしたから、どーなるか知ってるけど、いちおー言わないでおくわ、タクヤ」
「私も8割クリアしたから知ってますけど、黙っときます」
「おいおい、タケヒコとノノも知ってて、俺だけ置いてけぼりかよー。……まあしゃーねぇ、自分の目で確かめるとするか。じゃあ今回は、『ゼトの城跡』攻略すっぞー!!」
「おー♪」(約1名)




