第二十九話 シ―フ
「俺が次になる役職は、これだ――――!!!!」
タクヤは書物に記載してある、『シ―フ』の項目を指差していた。受付が話し掛けてくる。
「ジョブチェンジ先は『シ―フ』でよろしいですね?」
「YES!!」
「かしこまりました。では、450コインを――」
『チャリーン!』
ゲーム画面上で、コイン540の表示がコイン90に変わった。
「OH……ホントにコインとられた……」
「こちらの足場にお立ちください」
「?」
受付は、魔法陣の様な足場を手で示した。それが何なのか、さっぱりの様子だったがタクヤは言われるがままにその足場に立った。そして、受付は口を開く。
「この旅の方を……新たなる姿へ……ジョブチェンジ!!」
パァァアアと、タクヤの身体が輝き出す。
「うお! 何だコレ……?」
タクヤの姿が、輝く光と共に変わっていく。衣服は、いかにもと言った、フード付きのロングワンピースの様な、上下繋がった濃い茶色の服装に変わっていった。光が輝くのを止め、服装が完全に変化し切った時――、
『タクヤはファイターからシ―フへジョブチェンジした!』
「おっしゃー! シ―フになったどー!!」
「ありがとうございました」
「いやいや、こっちこそ」
「やったねタクヤ♪」
受付と軽い挨拶を交わすタクヤに、話し掛ける者が――。セルジュだった。
「でもどうしてシ―フになりたかったの?」
「ああ、敵からアイテムが盗めそうだからな。森では盗人どもに世話になったからなぁ。これからは敵キャラからたくさんアイテムを奪ってやるぜぇー!」
「流石の性格の悪さだね♪」
「っはは! それほどでも!」
「でも、スタートボタンでステータス見てみなよ♪」
「そうそう、みてみろよ」
「ですよねぇ?」
セルジュ、タケヒコ、そしてノノが催促したため、不信感を持ちながらタクヤはステータスを確認するコトとした。
『装備、ナイフのみ。銀のグローブ:使えません。銀の鎧:使えません』
「なん……だと……!?」
更にタクヤは細部までステータス値を確認した。すると、衝撃の事実に気が付いた。
「素早さステータスがちょっと高くなっただけで、攻めも守りも、魔防も更にはHPすら低くなってるじゃあねーか!!」
何も知らないタクヤを面白がり、クスクスと笑いながら、セルジュは言った。
「うん♪ 装備アイテムのリセットみたいなもんだから、基本的にステータスはダウンするし、シ―フはスキル、“盗む”ができる以外はこれと言って長所が少ない、サブキャラみたいな立ち位置なんだ」
「待ってくれぇー!! リセット! リセットさせてくれー! 俺をファイターに戻して……!」
「残念♪ ここでは不正防止のため、オートセーブされるようになっているんだ」
「ガーン……ガーン……ガーン……ガーン……」
タクヤは、自分の中で何かが音を立てて崩れ落ちるのを感じた。そしてタクヤは、地面に膝から崩れ、落ちる。
「……」
絶望しているタクヤの肩をトントンと叩き、セルジュは言った。
「じゃあ、銀のグローブと銀の鎧はここ、離れの展示場に展示していいかな♪ 完全クリアするには、この『展示』も必要だから……」
「ウン……スキニシテ……」
タクヤは生返事をするコトしかできなかった。
『銀のグローブと銀の鎧が展示された』
――、
「……」
タクヤは依然としてテンションがた落ちのネガティブモードだった。
「ったく。まだスネてんのかよタクヤ? そろそろ元気出せって」
「ア、アア……」
タクヤの他の三人はフーと、溜め息をつき、仕方ないなとタクヤの様子を見ていた。
「じゃじゃーん♪ ここでタクヤに朗報!」
「?」
「次に行くマップ、『底無しの沼地』は役職ファイターよりも、シ―フの方が相性がいいんだよ♪」
「!」
「沼地では、重量が大きいファイターよりも、重量が少ないシ―フの方が、沼地に足を取られにくく、進行しやすいんだ」
「ほ……、本当か? セルジュ!」
「嘘を言ってどうするの? それと、出てくる敵もファイターの殴打よりも、シ―フの刃物による攻撃の方が良く効くんだよ♪」
「……!」
セルジュの言葉を聞き、フルフルと震え始めるタクヤ。
「んー?」
セルジュがどうしたのかなと、顔を覗き込むと、タクヤは声高らかに喋り出した。
「フーッハッハッハッハッハ!! これよぉ!! これを見越して、俺様こと、タクヤ様はシ―フにジョブチェンジしたのよぉ!! 次のマップ、『底無しの沼地』攻略を、俊敏に進める為に俺様はシ―フになったのよぉ!!」
「あらあら、またこの調子ですか?」
「ったく、さっきまでの落ち込み様はどこへやら」
「ハハッ♪ 元気取り戻したね!」
「つーコトで、『底無しの沼地』へ! 行くぞ!!」
『おー(棒)』
タクヤの号令に、他三人は生返事で答えた。
――、
『底無しの沼地』
そこはジトッとしていて、湿度の高い蒸し暑さと、ぬかるんだ地面とが相まって、プレイヤーの体力と集中力をじわじわと奪う、そんなマップだった。
「進み辛さはこの前の“森”以上だな、タケヒコ……」
「ああ、そうだな。タクヤ……」
二人は会話を交わす。
このマップには木々や雑草と言った植物も繁殖している。そういった、沼地などの湿地帯でも繁殖している2、3m程の木々、その木々の上からに猛毒を持つ蛇がタクヤ達を静かに観察していた。
「それにしてもあっちーあちぃ」
タクヤが手でパタパタと顔を扇いでいる、その瞬間――、
毒蛇が後方から襲い掛かる!!




