第十二話 大広間
「ヒール!」
「おお……」
「シュイーン」
『タクヤのHPが全回復した!』
へへっと笑うタクヤを尻目に、タケヒコが口を開く。
「良かったな、タクヤ。レベルも飛び級みたいに上がってタクヤとノノは13、俺が14でセルジュに至っては24。相手も手強かったが、それに伴って経験値も大量にもらえたな。それに……」
「ハイ……」
「?」
タケヒコとノノの思わせぶりな態度に、はてな顔のタクヤ。
「少しはリーダーらしくなってきたじゃねぇか。タクヤ」
「!!」
「そうですよ、リーダー!」
「だね♪ リーダー!」
「!! ――」
タクヤは全身から溢れてくる不思議な感情を抑えきれずにいた。
(部活でも、ベンチ入りはしたがスタメン落ちの、伝令係の俺が……リーダー……?)
フルフルと震えるタクヤ。
そして――、
「まーな! 俺以外、このパーティでリーダーとか、考えられないしぃ!?」
有頂天になった。タケヒコはその発言を聞き、前言撤回と言わんばかりにタクヤに言う。
「あー、すぐ調子に乗るぅー。ちなみに俺は、最初からリーダーらしいけどな」
「なにおう!?」
(どちらとも、大人げ無い……)
(どちらとも、面白いね♪)
ノノとセルジュの意見は割れていた。
「シャ――――!!」
「ガルルルル!!」
――、
「さて、お次は♪」
パラァと、セルジュは神殿のマップを開いた。
「ココが大広間、第三、第四、第五の部屋につながってるよ♪ この扉を開けると、大広間に辿り着く」
セルジュは持っている杖で第二の部屋の奥にある扉を指し示した。
「また何か待ち受けているのか?」
タクヤの問いに、首を横に振ってセルジュは答えた。
「大広間には、宝箱があったり、セーブポイントがあったりするよ♪ 敵はいない。結構みんなプレイし通しだから、ここで一旦解散する?」
「は、ハイ!!」
威勢よくノノが左手を上げた。
「私、ちょっと疲れてきたのと、土曜日に予定があるから、休憩したいです!!」
「土曜日の予定って、何?」
「y〇utubeの……投稿を……」
((根暗か……!))
タクヤの問いに対する、ノノの回答が余りにもインドアなモノだった為、一同は思わず突っ込んだ。
「しゃーねぇな」
「だな!」
「じゃあ、この後解散で♪」
「ゴゴゴゴゴゴゴ!」
『一同は大広間への扉を開いた』
「おお! 宝箱が3つも!!」
「まぁ、初見じゃあ驚くよな?」
「ですね」
「はーい、ストップ♪」
「!?」
宝箱へまっしぐらのタクヤを、セルジュが制止させた。
「何だよ? セルジュ」
「んー、あそこにセーブポイントがあるでしょ? あそこでセーブして、解散。宝箱は、次回再開の時の、お楽しみ♪」
「えー!? 今で良いだろ?」
「お楽しみとセルジュは言っていたが、これには他に意味もあるんだぜ?」
「!」
タケヒコが、タクヤとセルジュの間に入って言う。
「セーブした後に宝箱をあさる……これに意味があるんだ」
「!? まさか……」
「そう、そのまさかだ……!」
「宝箱を開けた後にセーブするのを忘れるとか思ってんな!?」
「ズコー」
タケヒコはずっこけた。
「あほか! お前全然ゲームしないのな? リセマラとか、RPGの基本だぜ?」
「リセマラ? あ……」
ハァーとノノはため息をつき、タケヒコは両手を上げて、手のひらを見せた。セルジュは愛想笑いを浮かべていたが、目が笑っていない。次いで、口を開いた。
「宝箱の中身は、開ける瞬間にランダムで決まるんだよー♪ だから、しょぼいアイテムが出た時にリセットできるよう、まずセーブしておくの。分かった?」
「ご丁寧に、そこまで言われなくても分かっとるわ。“リセマラ”って聞いた瞬間に理解したわ! でも俺はその作戦、反対だな」
「!」
「!?」
「!!」
タクヤの発言に三人は驚愕した。
「日本男児たるもの、二言はご法度! リセットせずに、始めに出たアイテムを採用するぜ!!」
「おいおい、リーダー……」
「私は女なんですけどー……」
乗り気でないタケヒコとノノだった。しかし――、
「いいねぇ、ソレ。面白い♪」
「!」
「!?」
セルジュはタクヤの意見に賛同した。
「! ――、お前らなぁ……」
「貧弱アイテム出たらどーするんですかぁ!?」
「そん時はそん時だ!」
「ね♪」
タケヒコとノノの意見を、全く意に介さないタクヤとセルジュだった。
ポリポリと頭を掻いたタケヒコは言う。
「全く……。しょーがねぇ奴らだな」
「ハァー、そうなりますか」
ノノも観念した様だった。
「じゃあ、決まりだな!」
「うん♪」
タクヤとセルジュは意気揚々としていた。
――、
「まずは、真ん中の宝箱から!」
ゴクリと、一同は息を呑んだ。
「キィ……パァー」
宝箱を開けると、中から輝く光が辺りを包んだ。
「これは……」
『銀のグローブを手に入れた!』
「……何だ?」
「ズコー」
タケヒコ、ノノ、セルジュはずっこけた。
「あ! の! なぁ!!」
「コレ知らないって、説明書読んでないでしょ!?」
「やれやれ……」
三人は呆れ返っていた。
「これ、そんな有名なアイテムなの?」
タクヤはハテナ顔だった。仕方ないのでタケヒコはタクヤに分かるように銀のグローブについて教えてやった。
「ソレ、終盤まで使える重要アイテム。主に肉弾戦で戦う役職じゃなきゃ意味ないけどな」
「おー! スゲーじゃん!! 早速俺が装備してやるぜー!!」
『タクヤの力が2倍になった』
「!!?」