第1部6
御者が運転する車に乗りゆらゆらと揺れている。
グランエミールへ戻っている道中だ。
「ハルトよ。何故車など使っている。皆でゼルパに乗っていった方が早いではないか」
「ごめん。俺ゼルパに乗れないんだよね」
「「え?」」
バッシュとクラリスが同時に声をあげた。息ぴったりじゃないか。
「もしかしてハルトは王族の出身だったりするのかしら」
「ごめん。全然そういうのじゃない。普通に乗れない」
「あそこまでの剣を振れるんだ。ゼルパくらい楽勝だろ」
「ごめん。10回くらい挑戦したけど曲がるときに吹っ飛ばされる」
2人は驚きのあまりか次々と質問を投げつけてきたが、回答は「俺はゼルパに乗れない」に類するもの以外返す事が出来なかった。
「まあ、そういうことでゼルパは隣の家から買って、うちにある馬車で旅しよう。ハンドルはバッシュにお願いしたいんだけど」
「了解した。いや…しかし、意外だな…」
バッシュは納得がいかないと言わんばかりの顔で引き受けてくれた。
そうこう話しているうちにグランエミールに戻ってきた。
御者に料金を支払い、依頼を受けた農家の人に報酬を渡した。
そのまま広い農道(といってもこの街はほとんどが農道だけど)をしばらく進んだ。
「さて、ここが俺の家なんだけど」
「デカすぎる……」
「やっぱりハルトは王家の血筋なの?」
「バッシュ。もうじき日も暮れるから、出発は明日でいいかな?」
「本来ならすぐにでも、と言いたいところだが騎士ではない貴様らに無理強いなしたくない」
やはりバッシュは一刻も早く災いの現場へ向かいたいんだな。
「ありがとう。じゃあ、入って。二人はもう家族みたいなもんだから」
「そんなに仲良くした覚えはないけれど…」
俺はバッシュとクラリスに部屋を割り当て、夕食の準備を始めた。
今日はヤギモモ肉のスープとエミール麦のパン。あとは付け合わせで野菜のピクルスを添えよう。
ここグランエミールは、食材が豊富だ。
ほとんどが田畑で、麦や野菜で溢れている。
東側に流れる大きな川で魚も取れるし、南には街を囲うように放牧に適した山岳地域があり肉や乳製品にも困らない。
さっそく俺はヤギモモ肉の下処理に取り掛かった。
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「ハルトは料理もできるのか」
「とっても美味しかったわ」
食後のバッシュとクラリスは満足そうで嬉しかった。
そういえば、最後に誰かに料理をふるまったのはどれくらい前になるだろうか。
「風呂もあるから。クラリスお先にどうぞ」
「こんな変態たちに囲まれながら肌を見せろというの?」
「いや…大丈夫だから…なあ、バッシュ?」
「お、おおう」
え、なんでこの人動揺してんのやだ怖い。
「まあ、いいわ。あとで勝手に入るから」
「じゃあ、ハルトは俺と入るか。騎士の道は裸の付き合いから始まるとも言われてるしな!」
いや、絶対言われてないだろ。騎士にこじつければなんでも許されると思ってるのか。
「別に一緒に入らなくても…うわあああああああ」
拒否しようと思ったが俺はバッシュに担がれて風呂へ拉致されたのであった。




