第1部4
「貴様の腕であれば問題ない。共に災いの現場へと赴いてもらいたい」
冒険者ギルドに戻る途中にバッシュはそう言って握手を求めてきた。
「了解です」
俺もそれに応じた。ようやくクエスト受注、といったところだろうか。
「おっかえり~」
ギルドへ戻るとキャロルが犬耳をぴょこぴょこさせて出迎えてくれた。
「小娘。先ほども伝えたが、これは個人的な依頼だ。ギルドや国を介することは遠慮してほしい」
「わかったよ~結果だけ教えてくれれば仲介料はそれでタダ!」
「恩に着る」
バッシュとキャロルの会話を眺めながら、俺はこれからのルートを考えていた。
災いの現場は、シェールを南下しグランエミールからさらに南西の方角へ進んだ位置にある。
途中、コルン大洞穴を通る必要がありそうだ、となると…。
「バッシュ。提案なんだが、魔導士を一人パーティに入れないか?」
「魔法使い…だと…? なぜだ!」
そこまで露骨に嫌な顔しなくてもいいじゃないか…。そんなに嫌か…。
「コルン大洞穴には、一部タールスライムが大量に発生している地帯がある。魔法しか効かないから厳しいんじゃないか」
「では、少々北から遠回りして荒野を抜けようではないか。我が隊はそちらから向かったぞ!」
バッシュは自身あり気に提案してきた。
「二人で? サバンナジャガーの群れに囲まれたらとてもじゃないけど助からないよ」
「ぐ…ぐぬぬ。では、屈辱的だが魔具を携帯しよう」
「魔具に任せっぱなしだと壊れた場合、俺だけの魔力じゃ不安が残る。ってか、どんだけ嫌なんだよ!」
「魔法使いに頼るなど騎士の恥だ!」
バッシュは大声で怒鳴り散らした。
そのせいでギルド一瞬静まり返ってしまったが、すぐに活気を取り戻した。
「脳まで筋肉とはまさにこの事ね」
先ほどから柱によりかかていた女が声をかけてきた。
ローブを頭からかぶっており顔は見えないが、風貌から察するに魔法使いだろう。
「貴様、騎士を愚弄するか!」
「あら、事実を言ったまでよ」
「何だと!?」
「まあまあ、二人とも落ち着いて」
一触即発の雰囲気だったが、俺が間に入ってなんとか収まった。
「いくら出せる?」
「え?」
唐突に女が質問してきたので素っ頓狂な声を出してしまった。
「報酬、いくら出せるの?」
「えーっと…1万ソルくらいなら…」
バッシュからの報酬が10万ソルの契約になっている。
道中の経費を含めても5万ソル程度までは出せるが…。
「ふうん……」
魔導士の女は、俺のつま先から頭のてっぺんまで値踏みするようにじろじろと見た。
「4万ソルは出せるでしょう。それでどうかしら」
なかなかの鋭い観察眼をもっているようだ。それなりに場数を踏んでいるのだろうか。
「魔法はどの程度使えますか? 得意属性とそのクラスを教えてください」
「風、クラスは4」
クラス4!俺が使える魔法がせいぜいクラス2程度なのでかなり頼りになる魔法使いのようだ。
「わかりました。それでは是非お願いします」
俺がそういうと、彼女はローブを脱ぎ自己紹介を始めた。
「私の名前はクラリス。観ての通りエルフの魔導士。よろしくね」
腰まで伸びた長い金髪と尖った耳。そして、緑の瞳をしていた。
かなり細身だが、これはエルフ族の特徴だ。
皆、美形でスタイルも良い。この世界の美的価値観がエルフを基準にして作られているといっても良い。
とはいえ、美にこだわりを見せる種族など俺たちヒューマンくらいなものだが…。
「俺はハルト。こっちはバッシュだ。よろしく」
「ふん。」
バッシュは鼻を鳴らしてそっぽを向いた。
やれやれこれからどうなることやら。
あと、このパーティ俺が一番身長低いんですけど。




