第1部2
シェールに着くと夏季に収穫された農作物で市場が賑わっていた。
さっそく俺は老婆から預かっていた穀類を納品しに向かった。
この国の農作物は基本的にファーマーズギルドが一括で売買管理を行っている。
個人間の直接売買は禁止されていないが、税の補助や名誉ポイントといった特典が付くので、ほとんどの農家がギルドに卸している。
受付嬢も俺も手慣れたものであっという間に納品が終わり報酬を受け取った。
ギルドを出ようとしたときに、大声で話す若者たち数名の会話が耳に入った。
「大湿原で出たらしいぞ!」
「出たって……何がだよ?」
「神の使いが出たんだってよ!」
「なんでも王都の小隊一個まるまる消えちまったんだとさ」
「3日前に大きな雷があっただろ?あの時にやられたんだってよ!」
「神って……神話の時代じゃあるまいし、アホくさ」
――神の使い。
神々が遣わし災いをもたらすもの。
意図的に消されたのか、そもそも本当に誰も知らないのか、
古くからの言い伝えや歴史書には、それだけが書かれ詳細な内容は一切わかっていない。
長く戦争もなく、平和な時代にはこういったゴシップは流行るものだろう。
俺はぶらぶらと歩いて賑わう大通りに出た。
御者との約束の時間まで3時間ほどあったため、
グランエミールに輸送するクエストがないか訪ねようと冒険者ギルドへと向かった。
「久しぶりだね!ハルト!」
「いえ、先週も来ましたけど…」
冒険者ギルドに入るとすぐにヘゲロ族の少女キャロルが元気に話しかけてきた。
ヘゲロ族は知識にたけた獣人族で動物に似た耳と尻尾を必ず有している。
ギルドの看板娘キャロルには犬のような耳と尻尾があった。
「今日はどうしたの?」
「納品があってシェールまで来たので復路でもクエストがないかと尋ねにきました」
「クエストを探しているんだね!ちょうどよかった!」
キャロルはそう言うと、俺の腕をぐいぐいと引っ張り
屈強な竜人族の男の前へと連れて行った。
「この人のクエスト、きっとハルトじゃないと難しいと思うから。お願いね!」
「いや、いきなりそう言われても…」
「何だ」
竜人族の男は、俺とキャロルの会話を低い声で中断させた。
身長は2メートルほどだろうか、その肉体からかなり鍛えていることが伺える。
赤い長髪から竜人族特有の角が二本突き出ているが、鱗は肘や首元に見える程度でそれほど無い。
よく見ると剣の柄に騎士団の紋章が彫られている。
「騎士団の方ですか」
「商人は目聡くて困るな」
俺の問いにやれやれと言った口調で竜人族の男は答えた。
「本当にこんな男で大丈夫なのか」
「間違いなくここらでは超一流の冒険者だよ!」
キャロルがその貧相な胸をどんと叩いた。
「初めまして、ハルトです。よろしく」
握手を求め手を出したが、彼は応じてはくれないようだ。
「我が名はバッシュ。王都騎士団第三隊、隊長バッシュだ。まずは貴様の実力を試したい」




