第1部1
プロローグ
世界は無であった
無から光が生じて闇が生まれた
光と闇は終わらぬ争いを続け
光は火と風を生み
闇は水と地を生んだ
やがて世界:ソローが生まれ
そこには生命があふれた
神々はその生命を戦いの道具としようと考えた
幾千の戦乱が終わり、やがて神々も静まった……
神話の時代が終わり、人間たちの時代を迎えてからどれくらい経ったのだろう。
今では、本当に神話の時代があったのかさえも疑わしい。
禍根は残しつつも平和な時代になったと人々は口にする。
そんな中でも、危険を顧みず挑戦を続ける者たちを――冒険者と呼ぶ。
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――古都グランエミール 郊外
「それでは、これをシェールまでお届けしますね」
「いつもありがとうね。よろしく頼むよ」
俺はいつも通り、農家の老婆から荷物運びの依頼を受けた。
ただ広いだけの古都グランエミールから、近隣のシェールという都市に届ける仕事だ。
シェールは一帯の流通を担う、言わば商業都市として発展している。
魔具が流通してからは特にだ。
モノがそのモノだと認識される前の段階。
例えば、鉄やガラスが溶けて形状が定まる前。
例えば、杖や盾を彫り出す前の枝。
それらに魔力を込め、そこから加工し形成する。
魔法が使えない者でも魔法が簡単に使える道具。
それが魔具だ。
この魔具が出てからというもの、俺たち冒険者の仕事はめっきり減った。
近隣に小型の魔物が出現した時、昔はすぐに冒険者が集められた。
それが今では、魔具で誰でも魔物を追い払えるようになった。
そうして、瞬く間に冒険者の仕事は減っていったのである。
その代わり、魔術を使える魔法使いや呪術師などは引く手数多の現状だ。
これまでパーティでも日陰者扱いを受けていた恨みからか、
活躍しても目立つの剣士ばかりの旧時代の鬱憤からか、
彼ら魔法使いは冒険者――というより剣士などの前衛職をさげすむようになったのである
やれ脳筋だの、やれ肉壁だの、まるで人の扱いを成さないのである。
まあ、冒険者全盛時代も、歩くポーションだの、たいまつ係などと後衛職を罵っていたので前衛職側にも問題はあったのだろうけど。
そんな時代の中、俺ハルトは前衛でも後衛でもない。
剣を使えない事もないが、魔法を使えない者でもない。
技術スキルや生産スキルも使えるが、最上位には一切手が付けられない。なんとも中途半端な存在だった。
魔具の生産をすれば魔法使いに劣り、戦いの場では剣士に劣る。
だから、俺は小さな依頼をこなす便利な冒険者となった。
この古都グランエミールでは「便利屋ハルト」としてそれなりに名も通っている。
あまり名誉あるものではないが……。
俺は御者を雇い車に乗った。
ゼルパと呼ばれる二足歩行の竜が走り、御者がそれを制する。
車といえど木製の簡素なもので、その上に荷物と俺が乗り運ばれていく。
ゼルパのスピードはかなり速い。
身体強化魔法をかけた人間でもその脚力に勝る者はなく、そのスピードから荷物がふり落とされる心配が付き纏うほどだ。
グランエミールとシェールを繋ぐ街道は、車で約4時間。
俺はただ荷物が落ちない事と敵が来ない事に気を配っていた。
敵、というのはゴブリンやオークなど食料目当ての魔物だけではない。
金品を目的として来る人間の野党なども含まれる。
故に輸送などは冒険者か魔法使いを護衛に着けるのは当たり前となっている。
と、言ったそばから前方の岩の陰からゴブリンたちが見え隠している。
ゴブリンたちは火薬筒を投擲し、爆発させゼルパを止めると、4匹ほどのゴブリンが飛び出してくる。
既に狙いを定めていた俺は氷呪文コ:ルを発動させる。
地から氷が伝わり膝の高さまで凍らせ、2匹のゴブリンを足止めすることに成功した。
残りの2匹が従者目掛けて、素早くこん棒の攻撃を仕掛けてくる。
俺は素早く飛び出し、ウッドシールドでブロック。
すかさずエミールソードでゴブリン二匹を切りつける。
「もういいだろう。大人しく帰ってくれ」
そう言うとゴブリンたちは、散り散りに帰っていった。
「ひえー助かりました。ハルト殿」
「いえ、これくらいは……」
こうして俺はシェールにたどり着いたのであった。




