高価なドロップ品
以前より高純度な銀輝結晶がドロップしたようです
ソフィアさんが仲間に加わってから、二日目の朝。
俺たちは宿屋の食堂で朝食を取りながら、今日の予定を相談していた。
「今日はどうしましょうか?昨日は採集依頼でしたし、少し違うことをしてみたいですね!」
「それなら、魔物の討伐依頼なんてどう?」
サキがパンをちぎりながら提案した。
「いいな。昨日はフォレストウルフと戦ったが、あれだけじゃ少し物足りなかったからな」
ガイも賛成している。
「でも、ソフィアさんはまだ戦闘に慣れていませんし、あまり危険な依頼は避けた方がいいと思います」
アステリアが心配そうに言った。
「私は大丈夫ですよ!それに、魔物の素材にも興味があります!」
ソフィアさんは元気よく答えた。
昨日の採集依頼でも、ソフィアさんの知識にはずいぶん助けられた。
月光草を見分けるだけでなく、フォレストウルフから手に入れた風精結晶まで鑑定してくれたのだ。
討伐依頼でも活躍してくれそうだな。
「そうですね!それなら、あまり危険すぎない討伐依頼を探してみましょう!」
朝食を済ませた俺たちは、冒険者ギルドへ向かった。
掲示板には今日もさまざまな依頼書が並んでいる。
「おっ!これなんてどうでしょう?」
俺が見つけたのは、王都の東にある岩山で発生している魔物の討伐依頼だった。
討伐対象はロックリザード。
岩のように硬い鱗を持つ、大きなトカゲ型の魔物だ。
指定討伐数は五体で、報酬は銀貨十五枚。
「ロックリザードか。前にも戦ったことがあるな」
ガイが依頼書を確認しながら言った。
「そうね。ロベルトさんの商隊を護衛していたときだったわね」
サキも思い出したように頷いた。
「あのときは珍しい結晶が出ましたよね!」
俺も覚えている。
確か、銀輝結晶という素材だった。
ロベルトさんが探していた魔道具の材料で、俺たちが手に入れたものを譲ってほしいと頼まれたのだ。
「銀輝結晶ですか!?」
突然、ソフィアさんが身を乗り出した。
「えっ?はい!」
「ロックリザードから銀輝結晶を手に入れたんですか!?」
「そうですよ!小さな銀色の結晶でしたけど」
「すごいです!あれは滅多に手に入らない素材なんですよ!」
ソフィアさんは興奮した様子で続けた。
「魔力を安定して伝える性質があるので、精密な魔道具には欠かせないんです!しかも、純度によって価値が大きく変わるんですよ!」
「へえ!そうなんですね!」
「はい!特に大きくて純度の高いものは、魔道具職人さんたちがものすごく欲しがるんです!」
なるほど。
ロベルトさんが喜んでいた理由も分かる気がする。
「それなら、今回も手に入るといいですね!」
「はい!ぜひ見てみたいです!」
ソフィアさんは嬉しそうに笑った。
もっとも、珍しい素材がそう何度も出るとは限らない。
俺たちは討伐依頼を受け、王都の東へ向けて出発した。
岩山までは歩いて二時間ほど。
道中はなだらかな草原が続いていたが、目的地が近づくにつれて地面に石が増え、やがて大きな岩があちこちに転がるようになった。
「うわあ!すごい場所ですね!」
ソフィアさんが辺りを見回している。
「こういう場所には、珍しい鉱石もあるんでしょうか?」
「あるかもしれませんね!」
「そうですよね!ちょっと楽しみです!」
ソフィアさんは嬉しそうに頷いた。
岩山へ入ると、俺たちは周囲を警戒しながら進み始めた。
ロックリザードは岩に紛れるのが得意だ。
以前も、最初はただの岩だと思っていたものが突然動き出して驚いた覚えがある。
「ユウ、あそこ」
サキが小声で呼びかけてきた。
指さした先には、大きな灰色の岩がある。
「……いますね」
よく見ると、岩の端から細長い尻尾が伸びていた。
しかも、一体ではない。
少し離れた場所にも、似たような岩がいくつか転がっている。
「三体いるな」
ガイが大斧を握り直した。
「まずは一体ずつ倒しましょう」
アステリアが杖を構える。
俺たちが攻撃の準備を始めると、ソフィアさんが小さく手を上げた。
「あの、ちょっと待ってください!」
「どうしました?」
「先に鑑定してもいいですか?」
「鑑定?」
「はい!魔物の状態を調べておきたいんです!」
ソフィアさんは岩陰からロックリザードたちをじっと観察した。
「生きている魔物でも鑑定できるんですか?」
「はい!ただ、動いている相手だと難しいので、今みたいにじっとしていると助かります!」
ソフィアさんは岩陰にしゃがみ込み、魔物の体つきや鱗の状態、体内を巡る魔力の様子を慎重に確かめた。
「ええと……通常のロックリザードですね。体表の硬度は高いですけど、首の下側は比較的柔らかいみたいです!」
「なるほど!そこを狙えばいいんですね!」
「はい!」
俺たちは頷いた。
敵の弱点まで分かるなんて、鑑定士って便利だな。
ソフィアさんは続けて、隣のロックリザードにも目を向けた。
「こっちも普通ですね。もう一体は……」
そのとき、ソフィアさんの動きが止まった。
「……えっ?」
「どうしました?」
「ちょっと待ってください!」
ソフィアさんは身を乗り出し、もう一度、一番奥のロックリザードを注意深く調べた。
ほかの二体とは異なる魔力の巡り方に気づき、目を大きく見開く。
「うそ……!」
「ソフィアさん?」
「あの!皆さん!あの一番奥のロックリザードだけは、できるだけ綺麗に倒してもらえませんか!?」
「綺麗に?」
ガイが首を傾げた。
「はい!特に胸の辺りは傷つけないでほしいんです!」
「何かあるんですか?」
「あるかもしれません!まだ確実ではないんですけど……!」
ソフィアさんは興奮した様子で答えた。
どうやら、何か珍しいものを見つけたらしい。
「分かりました!それなら、最初の二体を倒してから、最後の一体は慎重にいきましょう!」
「お願いします!」
俺たちは武器を構えた。
「まずは俺が行く!」
ガイが大斧を肩に担ぎ、岩陰から飛び出した。
「おおおっ!」
振り下ろされた大斧が、ロックリザードの背中を直撃する。
ガァンッ!
硬い岩を叩いたような音が響いた。
「相変わらず硬いな!」
ガイが驚いたように声を上げた。
攻撃を受けたロックリザードが目を覚まし、太い尻尾を振り回す。
「危ない!」
サキが横から飛び込み、ガイの腕を引いた。
直後、尻尾が地面を叩き、大きな石が砕け散った。
「なるほど!あれを食らったら痛そうですね!」
俺は剣を構え、魔物へ向かって走り出した。
ロックリザードは口を大きく開き、こちらへ噛みつこうとしてくる。
俺は体を低くして攻撃をかわし、首の下へ回り込んだ。
「そこだ!」
ザシュッ!
剣が柔らかい部分に食い込み、ロックリザードが大きく体を震わせた。
そのまま横倒しになり、動かなくなる。
「よし!一体目!」
しかし、戦闘の音に反応した二体目が動き出していた。
「次は私ね!」
サキが片手剣を構え、素早く駆け出した。
ロックリザードが尻尾を振り回すが、サキは軽やかに跳び越え、そのまま魔物の側面へ回り込む。
「はあっ!」
剣が首の下を斬り裂いた。
さらにガイが大斧で追撃し、二体目も倒れた。
「あと一体ですね!」
俺が声をかけると、ソフィアさんが慌てて手を振った。
「皆さん!最後の一体は本当に気をつけてくださいね!」
「分かってますよ!」
最後のロックリザードは、俺たちの方へ向き直っていた。
ほかの二体より少し大きく、背中の鱗には淡い銀色の筋が走っている。
確かに、よく見ると少し違うな。
「どうする?」
サキが尋ねた。
「胸を傷つけなければいいんですよね?それなら、脚を狙って動きを止めましょう!」
「分かったわ!」
俺たちは左右に分かれ、魔物を囲むように移動した。
ロックリザードがこちらを警戒し、低く唸る。
そのときだった。
「ふんふふーん!」
突然、後ろから妙な歌声が聞こえてきた。
……ん?
この声は。
振り返ると、ガイが大斧を構えたまま歌っていた。
しかも、とんでもなく音痴だ。
「ガイ!?」
サキが驚いたように叫んだ。
「何を歌ってるのよ!?」
「……気合いを入れているところだ!」
ガイは真剣な顔で答えた。
なるほど。
戦う前に歌って気合いを入れるタイプなのか。
……ちょっと音程はひどいけど。
そんなことを考えていると、突然、体の奥から力が湧いてきた。
「おおっ!?」
剣を握る手が軽い。
足にも力が入る。
どうやら、ガイの歌で何らかの強化効果が発動したらしい。
「なんだか力が湧いてきました!」
アステリアも驚いている。
「ガイさんの歌には、こんな効果があったんですね!」
「お、おう!任せておけ!」
ガイは胸を張った。
音程はひどいけど、効果はありがたい。
「よし!今のうちに倒しましょう!」
俺は剣を構え、ロックリザードへ向かって駆け出した。
魔物が大きな口を開く。
しかし、強化された体は驚くほど軽かった。
俺は素早く横へ回り込み、後ろ脚を狙って剣を振り抜いた。
ザシュッ!
ロックリザードが悲鳴を上げ、体勢を崩す。
「サキ!」
「任せて!」
サキが反対側から飛び込み、もう片方の脚を斬りつけた。
魔物は地面に倒れ、起き上がろうともがいている。
「ガイ!尻尾を!」
「おう!」
ガイが大斧を振り下ろした。
ドガァンッ!
尻尾が地面へ叩きつけられ、ロックリザードの動きが止まる。
俺はその隙に首の下へ回り込み、剣を突き立てた。
ロックリザードは大きく体を震わせ、やがて動かなくなった。
「ふう!これで三体ですね!」
「お疲れさまです!」
アステリアが駆け寄ってきた。
「皆さん、怪我はありませんか?」
「大丈夫ですよ!」
サキとガイも頷いた。
すると、ソフィアさんが勢いよく走ってきた。
「皆さん!ありがとうございます!」
「どういたしまして!」
「それで、ソフィアさん。何があるんですか?」
俺が尋ねると、ソフィアさんは興奮した様子で倒れたロックリザードへ近づいた。
「この個体、普通のロックリザードとは魔力の流れが違うんです!」
「魔力の流れ?」
「はい!体内の一か所に魔力が集中していて、しかも非常に安定しているんです!」
ソフィアさんは魔物の胸の辺りを指さした。
「もしかしたら、大きな銀輝結晶ができているかもしれません!」
「銀輝結晶!?」
俺は思わず声を上げた。
「前に手に入れた、あの銀色の結晶ですか?」
「はい!ただし、今回はかなり大きいものが期待できそうなんです!」
「おおっ!」
俺たちは顔を見合わせた。
以前ロベルトさんが欲しがっていた、あの素材か。
「それなら、確認してみましょう!」
俺たちはソフィアさんの指示に従い、ロックリザードの体を慎重に調べ始めた。
結晶があるのは、胸の奥らしい。
だから、そこを傷つけないように頼んでいたのか。
ソフィアさんが教えてくれた位置から、ガイが慎重に鱗を外していく。
そして、しばらくすると。
「あっ!」
ソフィアさんが声を上げた。
「ありました!」
体内から取り出されたのは、拳ほどの大きさをした銀色の結晶だった。
以前手に入れたものより、ずっと大きい。
表面は透き通るように美しく、内部には細い銀色の光が幾重にも走っている。
「うわあ……!」
アステリアが思わず声を漏らした。
「綺麗ですね!」
「これが銀輝結晶なんですか?」
俺が尋ねると、ソフィアさんは頷いた。
「はい!しかも、こんなに大きいものは珍しいです!」
ソフィアさんは結晶を両手で持ち、表面や内部を慎重に確かめ始めた。
光に透かして内部の状態を観察し、結晶に宿る魔力の流れを調べていく。
しばらくして、ソフィアさんの目が大きく見開かれた。
「……えっ?」
「どうしました?」
「これ……すごいです!」
「どれくらいすごいんですか?」
「純度がものすごく高いんです!しかも、内部に傷がほとんどありません!」
ソフィアさんは興奮した様子で結晶を見つめた。
「銀輝結晶は純度が高いほど魔力を安定して伝えられるんですけど、ここまで綺麗なものは滅多にありません!」
「へえ!それはすごそうですね!」
「すごいなんてものじゃありません!」
ソフィアさんは興奮した様子で続けた。
「高位の魔道具を作る職人さんなら、絶対に欲しがると思います!」
「それって、いくらくらいになるんでしょう?」
俺が尋ねると、ソフィアさんは少し考えた。
「正確な価格はギルドで確認してもらった方がいいと思います。でも……」
「でも?」
「金貨百枚を超えても、おかしくないかもしれません!」
「ひゃ、百枚!?」
俺は思わず叫んだ。
サキも目を丸くしている。
「ちょっと待って!そんな高価なものが、普通の討伐依頼で手に入るの!?」
「本当に珍しいんです!私も図鑑でしか見たことがありませんでした!」
ソフィアさんは嬉しそうに笑った。
「でも、よかったです!事前に鑑定しておいて!」
「そうですね!知らなかったら、普通に倒していたかもしれません!」
「はい!もし胸の部分を大きく傷つけていたら、結晶が割れていた可能性もありますから!」
なるほど。
ソフィアさんがいなかったら、せっかくのお宝を台無しにしていたかもしれない。
「ソフィアさん!大手柄ですね!」
「えへへ!ありがとうございます!」
ソフィアさんは照れくさそうに笑った。
俺たちは銀輝結晶を布で包み、収納鞄へ大切にしまった。
その後、残りのロックリザードを探して岩山を進み、さらに二体を討伐した。
これで依頼の指定数は達成だ。
今回の戦利品は、魔石五つに硬質な鱗が二十三枚。
そして、先ほど手に入れた大きな銀輝結晶が一つ。
ほかにも小さな鉱石がいくつか見つかったが、ソフィアさんによると、こちらはそれほど珍しいものではないらしい。
「よし!帰りましょう!」
「そうね。今日は思いがけない収穫もあったし」
サキが嬉しそうに頷いた。
俺たちは王都へ向けて歩き始めた。
帰り道、ソフィアさんは何度も嬉しそうに笑っていた。
「まさか、初めての討伐依頼でこんな銀輝結晶が見つかるなんて思いませんでした!」
「ソフィアさんが見つけてくれたんですよ!」
「でも、皆さんが綺麗に倒してくれたからです!」
「いい連携だったな」
ガイが満足そうに頷いた。
「そうですね!五人になって、ますますいいパーティになりました!」
俺が言うと、みんなも笑顔になった。
王都へ戻った頃には、日が少し傾き始めていた。
俺たちはそのまま冒険者ギルドへ向かった。
「お帰りなさい、ユウさん!」
リリアさんが笑顔で迎えてくれた。
「ロックリザードの討伐ですね。お疲れさまでした!」
「はい!五体倒してきました!」
俺たちは討伐証明となる素材を提出した。
リリアさんが確認を終えると、報酬の銀貨十五枚が渡された。
「ありがとうございます!」
「ほかに素材の買い取りはありますか?」
「はい!実は、ちょっと珍しいものが見つかったんですよ!」
俺は収納鞄から、布に包んだ銀輝結晶を取り出した。
「これなんですけど、鑑定してもらえますか?」
「もちろんです!」
リリアさんは布を開き、結晶を見た。
そして。
「……えっ?」
そのまま固まった。
「リリアさん?」
「ちょ、ちょっと待ってください!」
リリアさんは慌てて結晶を覗き込んだ。
「こ、これ……銀輝結晶ですよね!?」
「はい!ソフィアさんが見つけてくれたんです!」
「こんなに大きなもの、初めて見ました……!」
リリアさんは結晶を慎重に持ち上げた。
「少々お待ちください!専門の鑑定士を呼んでまいります!」
そう言って、奥の部屋へ走っていった。
俺たちは顔を見合わせた。
「……なんだか、大変なことになってますね」
「そうね」
サキが苦笑した。
しばらくすると、リリアさんが年配の男性職員を連れて戻ってきた。
男性は銀輝結晶を慎重に手に取り、表面の状態や内部の魔力の流れを確かめ始めた。
結晶を光に透かし、角度を変えながら内部の傷や不純物の有無を調べていく。
男性は何度も結晶の状態を確認し、やがて深く息を吐いた。
「……間違いありません。極めて高純度の銀輝結晶です」
「おおっ!」
俺は思わず声を上げた。
「それで、いくらくらいになるんでしょう?」
男性は少し考え、口を開いた。
「現在の市場価格を考えますと……金貨百二十枚ほどになるかと思われます」
「ひゃ、百二十枚!?」
俺たちは一斉に叫んだ。
金貨百二十枚!
そんな大金、今まで手にしたことがない!
「す、すごいですね……!」
アステリアも驚いている。
ソフィアさんは嬉しそうに頷いた。
「やっぱり!思ったとおりです!」
「ソフィアさん!本当にありがとうございます!」
「えへへ!お役に立ててよかったです!」
俺たちが喜んでいると、男性職員が申し訳なさそうに頭を下げた。
「ただ……大変申し訳ありませんが、本日はこの金額をすぐにご用意することができません」
「えっ?」
「これほど高額な素材になりますと、買い取りにはギルドの上層部による承認と、資金の準備が必要になります」
「なるほど……」
「明日以降であれば手続きを進められますので、本日は一度お持ち帰りいただけますでしょうか?」
「分かりました!」
俺は頷いた。
「それじゃあ、また明日持ってきますね!」
「ありがとうございます。大変貴重な素材ですので、どうかお気をつけてお持ち帰りください」
「はい!」
俺は銀輝結晶を布で包み直し、収納鞄へしまった。
そして、仲間たちと一緒にギルドを出た。
「いやあ!今日はすごい一日でしたね!」
「本当ね!金貨百二十枚なんて、夢みたいだわ!」
サキも嬉しそうだ。
「これだけあれば、装備も新しくできそうだな」
ガイが言った。
「でも、みんなで手に入れたものですし、使い道はよく相談しましょうね」
アステリアが微笑んだ。
「そうですね!」
俺たちはこれからのことを話しながら、宿屋へ向かって歩き始めた。
その頃。
冒険者ギルドの片隅にいた二人の男が、俺たちの後ろ姿を見つめていた。
「……おい、聞いたか?」
「ああ。金貨百二十枚だってよ」
二人は顔を見合わせた。
「しかも、今日は買い取ってもらえなかったらしいな」
「ってことは、あいつらが持って帰ったってことか」
「ああ。あの収納鞄の中だ」
男の一人が、にやりと笑った。
「……いいことを聞いたな」
もう一人も口元を歪める。
「宿屋までつけていくか?」
「そうだな。あんな大金になるお宝、見逃す手はねえ」
二人は何食わぬ顔で立ち上がり、ギルドを後にした。
もちろん、俺たちはそんなことに気づいていなかった。
俺はただ、明日になったら手に入る金貨百二十枚で何を買おうかと、そんなことばかり考えていた。
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