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勇者パーティ、聖女様以外ぜんぶ偽物でした~自分だけが偽物だと思っている遊び人たちの最強パーティ~  作者: 黒華レン


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勇者が街にやってきた

レオルは故郷を離れユウ・シャインとなります

 故郷を出て五日。


 俺はついに王都へたどり着いた。


「でっか……」


 巨大な城壁を見上げ、思わず声が漏れる。


 開け放たれた大門からは、商人の荷馬車や旅人、武器を携えた冒険者たちが絶え間なく出入りしていた。


 城壁の向こうにはいくつもの尖塔が見え、その中でもひときわ高くそびえているのが王城だろう。


 故郷とは何もかも規模が違う。


 これだけ人がいるなら、俺のことを知っている奴なんてそうそういないはずだ。


 俺は指にはめた銀色の指輪へ目を落とした。


 【職業偽装の指輪】


 こいつを装備している限り、普通の鑑定で俺の職業を調べても【勇者】と表示される。


 ギルドの鑑定でさえ【勇者】と鑑定された。


 もちろん、本当に勇者になったわけじゃない。


 俺の職業は今も遊び人だ。


 剣で攻撃しようとして突然踊ることもあれば、魔法を使おうとして歌い始めることもある。


 それが遊び人という職業の性《さが》なのだから仕方がない。


 ただし、踊りや歌も完全に無意味というわけではない。


 攻撃力が上がったり、敵の能力を下げたりと、何かしらの効果が発生することがほとんどだ。


 問題なのは、普通に剣で斬りたい時に勝手に踊ることだった。


 効果があるからいいだろうと言われても困る。


 斬りたい時は斬らせてほしい。


「でも、ここなら大丈夫だ」


 俺が遊び人だと知っている者はいない。


 王都に足を踏み入れた瞬間から、俺はレオル・アーヴェインではなくなる。


 偽名はすでに決めてある。


 ユウ・シャイニング。


 職業は勇者。


「よし」


 気合を入れ、俺は王都へ足を踏み入れた。


 王都へ入った俺が真っ先に向かったのは、冒険者ギルドだった。


「冒険者登録をお願いします」


「かしこまりました。では、こちらにお名前をご記入ください」


 受付嬢から渡された用紙に、俺は新しい名前を書く。


 ユウ・シャイニング。


「…………」


 何度見ても格好いい。


 勇者の俺にぴったりの名前だ。


「ユウ・シャイニング様ですね。それでは職業を確認いたしますので、こちらの鑑定水晶へ手を置いてください」


「分かりました」


 いよいよか。


 俺は鑑定水晶を見る。


 故郷のギルドでは、職業偽装の効果を見破られなかった。


 だが、ここは王都だ。


 故郷よりも高度な鑑定技術を持っていても不思議ではない。


 もしここで、


『遊び人ですね』


 なんて言われたら終わりだ。


 ユウ・シャイニングとしての冒険は、開始から数分で終了する。


 大丈夫だ。


 あの指輪は激レアアイテムなんだ。


 故郷のギルド程度では見破れなかった。


 王都でもきっと――


「…………」


 俺は鑑定水晶へ手を置いた。


 水晶の内部に淡い光が広がる。


 やがて文字が浮かび上がり、それを確認した受付嬢が目を見開いた。


「えっ」


 心臓が跳ねた。


 バレた?


「ゆ、勇者!?」


「……え?」


 受付嬢の声がギルド内に響いた。


 ざわついていた周囲が一瞬静かになり、直後にあちこちから声が上がる。


「今、勇者って言ったか?」


「新しい勇者が来たのか?」


「本当か!?こりゃ珍しいな」


 何人もの冒険者がこちらを見ている。


 俺は恐る恐る鑑定水晶を確認した。


 そこには、はっきりと表示されていた。


 【勇者】


 やった。


 通用した。


 王都の冒険者ギルドでも見破られなかった。


 思わず拳を握りそうになり、寸前で止める。


 駄目だ。


 喜んだらおかしい。


 本物の勇者なら、自分の職業が勇者と表示されたくらいで喜ぶはずがない。


「何か問題でも?」


 できる限り平静を装って尋ねる。


「い、いえ。申し訳ありません。勇者の職業を授かる方は非常に珍しいものですから」


「そうですか」


 俺は小さく頷いた。


 今のはかなり勇者っぽかったんじゃないだろうか。


「登録が完了しました。こちらが冒険者証になります」


「ありがとうございます」


 差し出された冒険者証を受け取る。


 名前――ユウ・シャイニング。


 職業――勇者。


「…………」


 いい。


 ものすごくいい。


 俺の名前の横に勇者と書いてある。


 ずっと憧れ焦がれた職業。


 偽物だけど。


 やっぱり中身は遊び人だけど。


「ユウさん?」


「はい?」


「先ほどから冒険者証を見ながら嬉しそうにされていますけど」


「してません」


「ですが」


「してません」


 危ない。


 勇者生活初日にして正体とは別のところで不審がられるところだった。


 冒険者証をしまって受付を離れようとすると、近くにいた男から声をかけられた。


「なあ、勇者の兄ちゃん。もうパーティは決まってるのか?」


「いえ、まだですけど」


「だったら俺たちと組まないか?ちょうど前衛を探してたんだ」


「ちょっと待て。こっちだって募集してるぞ」


「勇者ならうちに来てくれよ!」


「私たちのパーティは回復役もいるわよ!」


 次々と冒険者たちが集まってくる。


「…………」


 勇者ってすごい。


 故郷で遊び人として仲間を探した時とは、あまりにも扱いが違う。


『職業は?』


『遊び人です』


『何ができる?』


『剣と体術と、少し魔法が使えます』


 そこまではよかった。


『あと、戦闘中に勝手に踊ったり歌ったりすることがあります』


 大体そこで話が終わった。


 ところが勇者になった途端、向こうから仲間になりたいと言ってくる。


 いや、勇者になったわけじゃない。


 勇者と表示されているだけだ。


 そこは自分でも忘れないようにしないと危ない。


「ありがとうございます。でも、パーティについては自分でも少し考えてみたいので」


 集まってきた冒険者たちに断りを入れ、その場を離れる。


 せっかく王都まで来たんだ。


 焦って決める必要はない。


 俺だって冒険者として強くなりたい。


 遊び人だからといって、強い仲間に全部戦ってもらおうなんて考えているわけでもない。


 自分も戦う。


 だけど勇者と遊び人の力の差をどうにか埋めてバレないようにしなければならない。


 だから、できるなら強い仲間たちと一緒に強いパーティを作りたい。


 そうすればたまに奇行に走ってもなんとかなるだろう。


「こっちから募集すればいいのか」


 俺は掲示板の前で腕を組んだ。


 勇者と一緒に戦う仲間といえば、まずは剣の達人が欲しい。


「剣聖とかいいな」


 剣を極めた上位職。


 勇者の仲間としても申し分ない。


「それと、もう一人くらい前で戦える奴が欲しい」


 戦士でもいい。


 だが、せっかくならもっと強そうな職業がいい。


「バトルマスター」


 戦士の上位職、名前からして強い。


 剣聖とバトルマスターがいれば、前衛はかなり安定するはずだ。


 そして最後は回復役。


「聖女……とか?」


 自分で言っておいて少し欲張りすぎな気もする。


 聖女なんてのも特別な職業だ。


 勇者くらい珍しい職業である。


 だが、俺は今、勇者として登録されている。


 もしかしたら来てくれるかもしれない。


 勇者。


 剣聖。


 バトルマスター。


 聖女。


「完璧じゃないか」


 俺以外は。


 いや、俺だってできる限り戦う。


 普通に攻撃できる時なら問題ない。


 勝手に踊ったとしても、大抵は何かしらの効果が発生する。


 そう考えると、遊び人だってそこまで悪く――


「いや、勇者を名乗って戦闘中に踊り始めたら絶対おかしいだろ」


 駄目だ。


 やっぱりなんとかして隠さないと。


 俺は受付へ向かい、パーティメンバー募集の申請を出した。


 翌日。


「もう応募が来てるんですか?」


「はい。それも三名いらっしゃいます」


「三人も?」


 受付嬢から三枚の応募用紙を渡される。


 一枚目に書かれていたのは、


 名前――サキ・スラッシュ。


 職業――剣聖。


「剣聖!」


 いきなり希望通りだ。


 剣聖は剣士系職業の中でも上位に位置する。


 勇者の仲間として、これ以上ないくらい頼もしい。


 二枚目。


 名前――ガイ・クラッシュ。


 職業――バトルマスター。


「バトルマスターまで来た!」


 これも希望していた職業だ。


 剣聖とバトルマスター。


 この二人がいれば前衛は相当強くなる。


 そして最後の一枚を確認する。


 名前――アステリア・ルミエール。


 職業――聖女。


「聖女!?」


 思わず受付嬢を見る。


「本物ですか?」


「はい。当ギルドで職業確認済みです」


「すごい……」


 三枚の応募用紙を並べる。


 勇者、ユウ・シャイニング。


 剣聖、サキ・スラッシュ。


 バトルマスター、ガイ・クラッシュ。


 聖女、アステリア・ルミエール。


 強い。


 どう考えても強い。


 まだ顔すら合わせていないのに、もう強そうだ。


「この三人と会います」


「全員ですか?」


「もちろんです」


 断る理由なんてない。


 希望していた職業が、そのまま三人揃って応募してきたのだ。


 俺は三枚の応募用紙を手に取る。


 勇者。


 剣聖。


 バトルマスター。


 聖女。


 誰が見ても豪華な勇者パーティ。


 この時の俺は、これ以上ない仲間が集まったと思っていた。


 まさか、この四人の中で――


 本物が聖女ただ一人だとも知らずに。

いつも読んで頂きありがとうございます!


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よろしくお願い致します。

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