三枚の魔導板
さらに多くのガーディアンが出てきてしまいました
三枚目の魔導板を手に入れた俺たちは、第二階層の奥にある大扉へと戻ってきた。
ついさっきまで、あれだけ探しても見つからなかったというのに、まさか休憩中に頭の上へ落ちてくるとは思わなかった。
しかも、あの部屋の天井には、ほかにもいろいろな仕掛けがあったらしい。
ガイが調べてくれたところ、天井の水晶は古代の魔力装置の一部だったようだ。
ただ、長い年月で固定具が劣化していたらしく、俺たちが休憩している間に外れたのではないか、という話になった。
いやあ、運がよかった。
もし落ちてこなかったら、いつまでも探し回っていたかもしれない。
まさか天井に隠されていたとは。
「さて、今度こそ開きますかね!」
俺は鞄から三枚の魔導板を取り出した。
銀色の板は互いに共鳴するように淡く輝き、近づけると小さな音を立てた。
「これで開かなかったら、さすがに困るわね」
サキが笑った。
「そうだな。ほかに必要な物があると言われても、どこを探せばいいのか分からん」
ガイが腕を組む。
「でも、きっと大丈夫ですよ!」
アステリアが微笑んだ。
「三枚揃ったとき、あんなに綺麗な魔法陣が現れたんですから」
「そうですね!」
俺は頷き、大扉へ近づいた。
中央には、三つの小さな光が浮かんでいる。
二つは青。
最後の一つだけが赤いままだ。
「それじゃあ、いきますよ!」
三枚の魔導板を扉へかざす。
すると、銀色の板が一斉に青白く輝き始めた。
キィィィン!
「おおっ!」
俺たちが見守る中、赤かった光が青へと変わる。
三つの光が揃った瞬間、扉の表面に刻まれた魔法文字が次々と浮かび上がった。
『認証完了』
空中に現れた古代文字を、俺は対応表と照らし合わせながら読み上げる。
「ええと……認証、完了?」
ゴゴゴゴゴ……!
重い音が響いた。
分厚い金属製の扉が、ゆっくりと左右へ開いていく。
「やった!」
俺は思わず拳を握った。
「開きました!」
「本当に開いたわね!」
サキも嬉しそうに笑う。
「ここまで来た甲斐があったな」
ガイが大斧を担ぎ直した。
扉の向こうには、長い通路が続いていた。
床には青い光の線が走り、天井には大きな水晶が等間隔に並んでいる。
これまで探索してきた場所とは、明らかに雰囲気が違う。
「すごい……」
アステリアが感嘆の声を漏らした。
「こんな場所が残っていたんですね」
「本当に古代の研究施設って感じですね!」
俺は胸を躍らせながら一歩踏み出した。
その瞬間だった。
ピシッ!
床の光が赤く変わった。
「……え?」
俺が足を止めると、通路の奥から機械的な音声が響いた。
『未登録者の侵入を確認。警備機構を起動します』
「……はい?」
次の瞬間、壁の一部が開き、金属製の人形が次々と姿を現した。
その数、五体。
「ちょっと待ってください!?」
俺は思わず叫んだ。
「多くないですか!?」
「ガーディアンが五体……!」
ガイが大斧を構える。
「さっきの一体でも手強かったのに!」
サキも剣を抜いた。
五体のガーディアンは、俺たちを取り囲むようにゆっくりと歩き始める。
しかも、さっき戦った個体とは少し形が違っていた。
二体は剣と盾を持ち、残りの三体は長い槍を装備している。
「どうします!?」
俺は三人を見た。
「戦うしかないだろう!」
ガイが前へ出る。
「囲まれないように注意しろ!」
「分かったわ!」
サキが俺の隣へ並んだ。
「アステリアは後ろへ!」
「はい!」
アステリアが杖を掲げる。
「《ホーリー・プロテクション》!」
柔らかな金色の光が俺たちを包み込んだ。
体の周囲に薄い膜のようなものが広がる。
「おおっ!これは?」
「防御力を高める補助魔法です!これで少しは攻撃を防ぎやすくなるはずです!」
「ありがとうございます!」
俺は剣を握り直した。
やっぱり聖女がいると心強い。
回復だけじゃなく、こんな魔法まで使えるんだから。
そのとき、槍を持ったガーディアンの一体が突進してきた。
「来るぞ!」
ガイが叫ぶ。
俺は慌てて剣を構えた。
ガキィン!
槍の穂先を受け止める。
重い!
けれど、さっきよりも衝撃が少ない気がする。
アステリアの補助魔法のおかげだろうか。
「ユウ!そっちは任せたわ!」
「はい!」
サキは剣を持ったガーディアンへ向かって駆け出した。
ガイも別の一体へ大斧を振り下ろす。
しかし、敵は五体。
残った二体が、後方のアステリアへ向かって動き始めた。
「アステリアさん!」
「大丈夫です!」
アステリアは落ち着いて杖を構えた。
「《ホーリー・バリア》!」
透明な障壁が彼女の前に現れ、ガーディアンの槍を受け止める。
ガァンッ!
激しい音が響いた。
もう一体が横から回り込もうとする。
まずい!
「俺が行きます!」
俺は目の前の槍を弾き、アステリアのもとへ駆け出した。
ところが、その瞬間。
なぜか体が勝手に跳ねた。
「……え?」
俺は片足で地面を蹴り、くるりと回転した。
そのまま両手を広げ、妙なポーズを取る。
……うわぁー
何でこんな大事なときに!
しかも、今度は口まで勝手に動いた。
「ラララ~♪勇者の剣は~♪今日も輝く~♪」
「…………」
俺は自分の声に絶望した。
歌ってる!?
戦闘中に!?
しかも、何だこの歌詞、うそでしょ!?
「ユウさん!?」
アステリアが目を丸くする。
やばい!
何か言わないと!
「こ、これは勇者に伝わる戦闘時の歌なんです!」
「戦いの歌!?」
「はい!気合いが入るんです!」
「なるほど!気合いを入れて戦おうというのですね!」
アステリアが納得したように頷いた。
「勇者様には、そんな伝統があるんですね!」
いや、すみません、ないです!
少なくとも俺は聞いたことがありません!
すると、俺たちの体が淡い光に包まれた。
「……あれ?」
俺は剣を握る手を見つめた。
さっきよりも、さらに力が湧いてくる。
「おおっ!」
ガイが驚いた声を上げた。
「何だ、この力は!?」
「すごいわ!さっきより動きやすい!」
サキも目を輝かせる。
どうやら、強化効果が発動したらしい。
「鼓舞するだけではなく本当に効果があるなんて、すごいです!」
アステリアが目をキラキラさせる。
助かった!
「みんな!今のうちに倒しましょう!」
「おう!」
ガイが大斧を振り上げた。
ガーディアンの盾に向かって、力任せに振り下ろす。
ドガァァンッ!
盾が大きくひしゃげた。
「おおっ!?」
ガイ自身も驚いたように目を見開く。
「すごい威力だ!」
「さすがバトルマスターのパワーですね!」
俺は叫んだ。
「いや、今のは……ま、まかせてくれ!」
ガイが少し慌てたように答えた。
そのまま二撃目を叩き込み、ガーディアンの胴体を粉砕する。
ガシャァン!
一体目が崩れ落ちた。
「よし!」
俺も剣を構え直した。
目の前の槍を持ったガーディアンが、再び突進してくる。
けれど、今度は動きがよく見えた。
俺は槍を避け、そのまま懐へ飛び込む。
「せいやっ!」
剣が胸の装甲を斬り裂いた。
パキンッ!
内部の魔石が砕け、ガーディアンが動きを止める。
「やった!」
これで二体目!
残りは三体だ。
そのとき、サキが剣を持ったガーディアンと激しく打ち合っていた。
ガキンッ!
ガキィン!
何度も金属音が響く。
「もう!しつこいわね!」
サキが剣を振り上げる。
しかし、ガーディアンは盾で受け止めた。
その瞬間だった。
サキの体が、なぜかくるりと回転した。
「……えっ!?」
彼女は剣を持ったまま、妙に優雅なステップを踏み始めた。
そして、片足を上げて決めポーズ。
ああ……まただ。
剣聖って、こういう動きをするものなのか?
「サキ!?」
「だ、大丈夫よ!」
サキは頬を赤らめながら剣を構え直した。
「これは……相手の間合いを乱すため!」
「なるほど!」
俺は感心した。
やっぱり剣聖の技は奥が深い。
俺たちみたいにただ突っ込んでいくだけではなく、すごく優雅なんだな。
すると、サキの周囲から金色の光が広がった。
その光が俺たち全員を包み込む。
「……おおっ!?」
さらに力が湧いてきた。
何だこれ!?
さっきの強化と重なってる!?
「すごい!体が軽いです!」
アステリアが驚いた声を上げる。
「これなら!」
彼女は杖を掲げた。
「《ホーリー・レイ》!」
眩い光が放たれ、ガーディアンの一体を直撃する。
ドォォンッ!
凄まじい爆発が起きた。
金属製の体が吹き飛び、壁へ激突する。
「えっ……」
アステリアがまず驚きの声をあげた。
「……え?」
そして、俺たちは一斉に目を見開いた。
ガーディアンは、跡形もなく完全に粉々になっていた。
「…………」
アステリアも呆然としている。
「……あの」
「はい?」
「今の……私の魔法ですよね?」
「そうですね!」
「……こんなに威力があったでしょうか?」
「さすが聖女様!すごい!」
俺は笑顔で答えた。
「すごいですね!」
「えっ!?あ、ありがとうございます!」
アステリアが照れたように笑った。
(強化してもあんなに威力出る事あったかなー)
アステリアは思った。
いやあ、本物の聖女ってすごい。
あんな強力な魔法まで使えるなんて。
残るガーディアンは二体。
そのうち一体が、アステリアへ向かって槍を構えた。
「危ない!」
俺が叫ぶ。
しかし、アステリアは落ち着いて杖を構えた。
「《ホーリー・ショット》!」
光の弾が放たれる。
ドガァンッ!
槍を持ったガーディアンの胸が吹き飛んだ。
「……ええっ!?」
俺は思わず声を上げた。
「すごすぎません!?」
「実は私も驚いています……ははっ」
アステリアが困ったように笑う。
どうやら、さっきの強化効果がまだ続いているらしい。
残り一体。
ガイが大斧を構えた。
「最後は俺が!」
そう言った瞬間。
ガイの動きが止まった。
「……む?」
大斧を肩に担ぎ、胸を張る。
そして、なぜか片手を腰に当てた。
「やっほおおおおおー」
前とは少し違うようだがまたあの構えだ。
「…………」
ガイは無言だ。
わかっている。バトルマスターの力を溜める技なんでしょ?
すると、ガイの体からさらに金色の光が広がった。
「おおっ!?」
きたきたきたー!
俺は思わず叫んだ。
「また強くなった気がします!」
「すごいですね!」
アステリアも目を輝かせた。
「ガイさん、何という技なんですか!?」
「……えっ!?」
ガイが一瞬固まった。
「え、あ、そ、それは……」
少し考え込む。
そして、胸を張った。
「剛力解放だ!」
「おおっ!」
俺は感心した。
名前まで格好いい!
「さすがバトルマスター!力が溢れてくるようです!」
「あ、ああ!」
ガイは満足そうに頷いた。
そして、大斧を両手で握りしめる。
「うおおおおっ!」
地面を蹴り、最後のガーディアンへ突進した。
ガーディアンが盾を構える。
しかし。
ドガァァァァンッ!!
凄まじい衝撃が響いた。
盾も鎧もまとめて粉砕され、ガーディアンの体が通路の奥まで吹き飛ぶ。
そして、壁に激突した瞬間、完全に砕け散った。
「…………」
俺たちはしばらく無言になった。
……なんだー!この凄まじい力は!
ガイも大斧を振り下ろした姿勢のまま、固まっている。
「……すごい」
アステリアが小さく呟いた。
「すごすぎます!」
俺は興奮して叫んだ。
「さすがバトルマスター!すごいパワーだ!」
「……お、おう!」
ガイが大きく頷いた。
何だか少し汗をかいているように見えるけれど、あれだけの威力。きっと全力で技を使ったからだろう。
それにしても、五体ものガーディアンを倒してしまうなんて。
やっぱりこのパーティはすごい。
バトルマスター、剣聖、聖女。
このパーティに入れてよかった。
「さて……」
俺は周囲を見渡した。
通路には、ガーディアンの残骸が散らばっている。
「さっそく戦利品を確認しましょう!」
「ふふっ、やっぱりそれなのね」
サキが笑った。
「だって、五体も倒したんですよ!何かあるかもしれないじゃないですか!」
「ああ、確かにな!」
ガイも頷いた。
俺たちは残骸を調べ始めた。
すると、アステリアが何かを見つけた。
「あっ!皆さん!」
「どうしました?」
「こちらに魔石が!」
アステリアの手には、青い魔石が握られていた。
しかも、一つではない。
二つ、三つ、四つ。
「……え?」
俺は目を瞬かせた。
「そんなにあるんですか?」
「はい!まだあります!」
アステリアが嬉しそうに答える。
俺たちは手分けして探し始めた。
すると、出てくる出てくる。
青い魔石。
銀色の金属片。
古代魔法文字が刻まれた小さな部品。
そして、見たこともない透明な結晶。
「……ちょっと待ってください」
俺は鞄を開いた。
すでにかなりいっぱいだ。
「これ、全部入りますかね?」
「厳しいな」
ガイが苦笑した。
「俺の鞄もそろそろ限界だ」
「私の方も、あまり余裕がないわ」
サキが肩をすくめた。
「どうしましょう?」
アステリアが首を傾げる。
俺は戦利品の山を見つめた。
どれも珍しそうな物ばかり。
できれば全部持って帰りたい。
けれど、これ以上荷物が増えたら探索に支障が出てしまう。
「……うーん」
俺はしばらく考えた。
そして、一つの結論に至った。
「やっぱり……」
「やっぱり?」
三人が俺を見る。
「鑑定士が欲しいですね!」
「……そうね」
サキが苦笑した。
「本当にそう思うわ」
「ミルドさんに相談してみるか?」
ガイが言った。
「そうですね!」
俺は頷いた。
「帰ったら、誰か紹介してもらえないか聞いてみましょう!」
「それがいいかもしれませんね!」
アステリアが微笑んだ。
俺たちは相談しながら、戦利品を選び始めた。
同じ形の金属片は数を減らし、壊れた部品は状態のよい物だけを残す。
魔石や透明な結晶は、できるだけ優先して鞄へ詰め込んだ。
「これで何とか入りそうですね!」
「ええ。でも、帰りは重そうだわ」
サキが笑う。
「まあ、俺が少し多めに持とう」
ガイが大きな鞄を背負った。
「ありがとうございます!」
俺は笑った。
頼もしい仲間がいて、本当によかった。
戦利品を整理し終えると、俺たちは改めて通路の奥を見た。
そこには、先ほどのガーディアンたちが守っていた大きな扉がある。
扉の表面には古代文字が刻まれ、中央には青い水晶が埋め込まれていた。
「……さて」
俺は剣を鞘へ収めた。
「今度こそ、中を調べてみましょう!」
「ええ!」
サキが頷く。
「ここまで来たんだ。何があるのか確かめたいな」
ガイも笑った。
「でも、慎重に進みましょうね」
アステリアが微笑む。
「もちろんです!」
俺は扉へ近づき、中央の水晶へ手を伸ばした。
すると、水晶が淡く輝き始める。
ゴゴゴゴ……。
重い音とともに、扉がゆっくりと開いた。
その向こうには、広大な空間が広がっていた。
天井は高く、壁には巨大な魔法陣がいくつも刻まれている。
中央には大きな円形の台座があり、その周囲には古代の研究器具が並んでいた。
「……すごい」
俺は思わず呟いた。
ここが、魔導板に描かれていた研究施設の中心部なのだろうか。
アステリアが目を輝かせる。
「本当に、こんな場所が残っていたんですね!」
「ええ。何だか宝物庫みたいだわ」
サキが笑った。
「おい、あれを見てみろ」
ガイが中央の台座を指差した。
そこには、透明な水晶の箱が置かれていた。
箱の中には、小さな銀色の装飾品が収められている。
「……何でしょう?」
俺は首を傾げた。
近づいてみると、それは細い鎖のついた護符だった。
中央には七色に輝く小さな宝石が嵌め込まれている。
「綺麗ですね……」
アステリアが呟いた。
「これも古代の魔道具かしら?」
サキが尋ねる。
「たぶんそうでしょうね!」
俺は箱を覗き込んだ。
見たこともない装飾品だ。
しかも、わざわざ水晶の箱に入れて保管されている。
きっと、かなり貴重な物に違いない。
「持って帰って、ミルドさんに見せましょう!」
「そうね!」
俺たちは顔を見合わせ、嬉しそうに笑った。
ただ、箱には複雑な魔法文字が刻まれている。
簡単には開きそうにない。
「どうやって開けるんでしょう?」
俺は首を傾げた。
すると、ガイが大斧を持ち上げた。
「壊してみるか?」
「いやいやいや!それは危ないですよ!」
俺は慌てて止めた。
「中の魔道具まで壊れちゃうかもしれません!」
「それもそうだな」
ガイが大斧を下ろす。
俺は箱の周囲を調べ始めた。
すると、台座の端に小さなくぼみがあることに気づいた。
「……ん?」
何だろう、これ。
指先で触れてみる。
カチッ。
「……あ」
何かが動いた。
次の瞬間。
パキンッ!
水晶の箱が、あっさり開いた。
「…………」
俺たちはしばらく無言になった。
「ははははは」
「ふふふっ」
「……開いちゃいましたね」
俺が言うと、サキが小さく笑った。
「ふふっ……ええ」
「ははは、また偶然か」
ガイが呆れたように笑う。
「すごいですね!」
アステリアが目を輝かせた。
俺は苦笑しながら、箱の中の護符を取り出した。
七色の宝石が、手のひらの上で淡く輝いている。
「……本当に、運がいいですね」
俺がそう言うと、三人も笑った。
こうして俺たちは、古代研究施設の奥で新たな魔道具を手に入れた。
いったいどんな効果があるのか。
それは、ミルドさんに鑑定してもらうまでのお楽しみだ。
いつも読んで頂きありがとうございます!
面白いと思って頂けたらコメント、評価や⭐︎を頂けると、とても喜びます。
よろしくお願い致します。




