気難しい鑑定士、再び
ミルド工房へ珍しいドロップ品を持っていきます
王都に戻った翌朝、俺たちは再びミルドさんの工房を訪ねることにした。
昨日のダンジョン探索で見つけた宝箱には、見たこともない魔道具がいくつも入っていた。
赤く輝く魔石に、銀色の腕輪。青い宝石が嵌め込まれた短剣。そして、以前見つけた物とよく似た二枚目の魔導板。
どれも普通の道具屋では見かけない品ばかりだ。
特に魔導板は、二枚を近づけた途端に光り始めた。
あの現象が何だったのか、ぜひ知りたい。
「それにしても、またあのお爺さんのところへ行くことになるとはね」
サキが楽しそうに笑った。
「今度は何を持ってきたんじゃ、って怒られたりして」
「いや、あの人なら喜ぶんじゃないか?」
ガイが大きな斧を背負い直す。
「珍しい魔道具が好きそうだったからな」
「そうですね。前回も魔導板を見た途端、すごく熱心に調べてくださいましたし」
アステリアが頷いた。
「今回は四つもありますから、きっと驚かれますよ」
「楽しみですね!」
俺は鞄を軽く叩いた。
中には昨日の戦利品が入っている。
もちろん、壊れたり傷ついたりしないよう、布で丁寧に包んであった。
ただ、一つ気になることがある。
前回、ミルドさんは俺の指輪に興味を示していた。
あのときは何とか話を逸らせたけれど、また同じことを聞かれたら困る。
できれば、今日は魔導板の話だけで終わってほしい。
「ユウさん?」
「ひゃいっ!?」
突然アステリアに声をかけられ、俺は飛び上がりそうになった。
「どうしたんですか?さっきから右手を握ったり開いたりしていますけど」
「あ、いや、ちょっと手の準備運動を!」
「手の準備運動?」
「これは剣を握るとき握力が大事なんで!」
「なるほど!勇者様は普段からそういうことを意識されているんですね」
アステリアが感心したように頷く。
「私も杖を持つ前にやってみようかしら」
「それがいいと思います!」
俺は笑顔で答えた。
何とかごまかせた。
そうこうしているうちに、見覚えのある看板が見えてきた。
『魔道具鑑定・修理 ミルド工房』
相変わらず、店の前には物騒な注意書きが並んでいる。
『冷やかしお断り』
『値切り交渉お断り』
『鑑定中の質問お断り』
『店主の機嫌が悪い日は営業しません』
「ふふっ、今日は機嫌がいいといいですね」
アステリアが微笑んだ。
「とりあえず、呼んでみましょう!」
俺は扉を叩いた。
コンコン。
「すみませーん!」
返事はない。
「ミルドさーん!先日お世話になった冒険者です!」
すると、建物の奥から怒鳴り声が聞こえた。
「聞こえとるわ!朝から騒がしい!」
……うん。
今日も元気そうだ。
しばらくすると扉が開き、丸眼鏡をかけたミルドさんが顔を出した。
「何じゃ、お前たちか。また来たのか」
「はい!約束どおり、珍しい物を見つけたので持ってきました!」
「ほう?」
ミルドさんの眉がぴくりと動いた。
「何を見つけた?」
「それは中でお見せします!」
「もったいぶるな!さっさと入れ!」
俺たちは笑いながら工房へ入った。
店内は前回と変わらず、古い本と魔道具で埋め尽くされていた。
ただし、作業台の上には前回見なかった大きな水晶球が置かれている。
水晶の中には細い銀色の線が幾重にも走り、ゆっくりと回転していた。
「わあ、綺麗ですね!」
アステリアが目を輝かせた。
「それは今調整中の鑑定器じゃ。勝手に触るでないぞ」
「はい!」
ミルドさんは椅子を引き寄せ、作業台の前に腰を下ろした。
「それで、何を持ってきたんじゃ?」
「まずはこちらです!」
俺は鞄から二枚の魔導板を取り出した。
一枚は前回見つけた物。
もう一枚は昨日、隠し部屋の宝箱から手に入れた物だ。
ミルドさんは二枚目を見た瞬間、勢いよく立ち上がった。
「……何じゃと!?」
「どうしました?」
「お前たち、こんな短期間でもう一枚見つけたのか!?」
「はい!」
「どこでじゃ!?」
「前回のゴーレムがいた広間です。隠し通路が見つかって、その先の保管室にありました」
「保管室……?」
ミルドさんの目つきが変わった。
「まさか、あの遺跡にそんな場所が残っておったとは……」
「やっぱり珍しい物なんですか?」
「珍しいどころの話ではないわ!」
ミルドさんは二枚の魔導板を並べ、眼鏡をかけ直した。
「前回も言ったが、これは古代の魔法研究施設で使われていた記録板じゃ。それが二枚も揃うとは……」
ミルドさんは引き出しから小さな水晶を取り出し、魔導板の上にかざした。
水晶を通じて慎重に魔力を流し込み、二枚の魔導板に刻まれた術式を確かめていく。
ミルドさんは目を細め、指先で古代文字をなぞった。
「ふむ……こちらの術式と、もう一枚の術式が繋がっておるのか……」
何度か魔力の流し方を変えながら、二枚の魔導板を近づけた。
すると、青白い光が広がった。
「おおっ!」
俺たちは身を乗り出した。
前回は一枚だけだったため、文字が光るだけで何も起こらなかった。
しかし、今回は違った。
二枚の間に細い光の線が現れ、空中に複雑な模様を描き始めたのだ。
「これは……!」
ミルドさんが息を呑む。
やがて、光の線は小さな立体図へと変わった。
そこには、いくつもの部屋と通路が描かれていた。
「地図……ですか?」
アステリアが尋ねた。
「そのようじゃな」
ミルドさんは立体図を覗き込んだ。
「これはおそらく、あの地下遺跡の内部構造じゃ」
「本当ですか!?」
俺は思わず声を上げた。
地図には大きな広間があり、その奥に階段が描かれている。
見覚えがある。
「あっ!ここ、ゴーレムがいた場所じゃないですか?」
「そうね!この階段も同じ形だわ!」
サキが指差した。
俺たちが昨日見つけた隠し通路も、細い線で描かれている。
「間違いないな」
ガイが頷いた。
「俺たちが探索した場所と一致している」
「ふむ……」
ミルドさんは地図をじっと見つめた。
その表情が、次第に真剣なものへ変わっていく。
「お前たち、第二階層にはまだ入っておらんのじゃな?」
「はい。昨日は隠し部屋を見つけたので、そこで引き返しました」
「それは賢明じゃったな」
ミルドさんが地図の一角を指差した。
「見ろ。ここに大きな区画があるじゃろう」
第二階層のさらに奥。
そこには、ほかの部屋よりもずっと大きな空間が描かれていた。
「これは何ですか?」
「まだ分からん。ただ、周囲の文字を読む限り、研究施設の中心部だった可能性がある」
「研究施設の中心部……!」
俺は胸が高鳴るのを感じた。
「じゃあ、そこに行けば古代の研究記録が読めるかもしれないんですね!」
「そう簡単にはいかん」
ミルドさんが首を振った。
「この地図も完全ではない。見ろ、奥の部分が途切れておるじゃろう」
確かに、地図の端はぼんやりと霞んでいる。
「やはり残りの記録板が必要ということですか?」
アステリアが尋ねた。
「おそらくな。貴重な魔導板がまだどこかに隠されているのじゃろう」
「なるほど……」
俺たちは顔を見合わせた。
つまり、あと一枚。
それを見つければ、もっと詳しいことが分かるかもしれない。
「よし!次の目標が決まりましたね!」
「ええ。第三の魔導板を探すのね」
サキが笑った。
「ただし、今度は第二階層の本格的な探索だ。昨日より危険な魔物がいるかもしれないぞ」
ガイが慎重な表情になる。
「そうですね。準備はしっかりしておきましょう」
アステリアも頷いた。
「まったく、お前たちは……」
ミルドさんが呆れたように笑った。
「危険だと言われても、冒険に行く気満々じゃな」
「だって、俺たち冒険者ですから!」
「わっはっは!まあ、冒険者とはそういうものか」
ミルドさんは魔導板を慎重に布の上へ置いた。
「ほかにも何か見つけたと言っておったな?」
「はい!」
俺は鞄から残りの品を取り出した。
赤く輝く魔石。
銀色の腕輪。
青い宝石が嵌め込まれた短剣。
三つを作業台へ並べると、ミルドさんはしばらく無言になった。
「……お前たち」
「はい?」
「本当に昨日一日で、これだけ見つけたのか?」
「そうですよ!」
「運良く隠し部屋を見つけてそこの宝箱に入っていましたからね!」
アステリアが嬉しそうに答えた。
ミルドさんは額を押さえた。
「何という幸運じゃろうか……」
「そうなんですよ!」
俺は笑った。
「隠し通路も偶然見つけたんです!」
「偶然?」
「はい!俺が転びそうになって床に手をついたら、いきなり開きまして!」
「……は?」
「それで、扉を開けるための球も三つ必要だったんですが、全部偶然見つかりました!」
「……何じゃと?」
ミルドさんは目を瞬かせた。
「そんな偶然あるのか?」
「一つは天井から落ちてきて、もう一つはガイが斧を壁にぶつけたら出てきて、最後はサキがくしゃみをしたら見つかったんです!」
「…………」
ミルドさんはしばらく黙っていた。
そして、ゆっくり椅子に座り直した。
「……そうか」
「はい!」
「お前たち、妙なところで運がいいんじゃな……」
なぜか、少しあきれたような声だった。
「まあよい。まずは魔石からじゃ」
ミルドさんは赤い魔石を手に取った。
表面の状態を確認すると、目を閉じて魔力の性質を探り始めた。
しばらくして、ミルドさんが目を開いた。
「ふむ……これは珍しい」
「何ですか?」
「紅蓮魔石じゃ」
「紅蓮魔石?」
「火属性の魔力を大量に蓄えた特殊な魔石じゃな。普通の魔石よりも純度が高く、強力な魔道具の材料になる」
「おおっ!」
「市場に出回ることは滅多にない。売ればかなりの値がつくぞ」
「本当ですか!?」
俺は思わず身を乗り出した。
「いくらくらいですか?」
「状態にもよるが、金貨二十枚は下らんじゃろうな。もちろん魔道具、武器や防具にも加工できる」
「金貨二十枚!?」
俺たちは声を揃えた。
かなりの大金だ。
「すごいわね……」
サキが目を丸くした。
「こんな物が宝箱に入っていたなんて」
「ただし、売るかどうかは慎重に考えろ」
ミルドさんが言った。
「さっきも言ったが、これほど純度の高い魔石なら、将来強力な魔道具を作るときに役立つかもしれん」
「なるほど……」
俺は頷いた。
確かに、今すぐお金に換えるのはもったいない気がする。
「じゃあ、ひとまず保管しておきましょう!」
「そうね。その方がよさそう」
サキも賛成した。
続いて、ミルドさんは銀色の腕輪を手に取った。
「こちらは……ほう」
腕輪の表面に刻まれた文字を確認し、指先から少量の魔力を流す。
銀色の光がふわりと広がった。
ミルドさんはその反応を確かめながら、腕輪に組み込まれた術式を読み解いていく。
「《守護の腕輪》じゃな」
「守護の腕輪?」
「装備者の防御力を高める魔道具じゃ。常に効果があるわけではなく、強い攻撃を受けたときに魔力の障壁を生み出す仕組みじゃな」
「おおっ!便利そうですね!」
「ただし、一度発動すると魔力を消耗する。連続して使うことはできん。しばらくのクールタイムが必要ってことじゃな」
「それでも十分すごいわね」
サキが頷いた。
「誰が装備する?」
ガイが尋ねる。
「前衛の誰かがいいんじゃないかしら」
「そうですね……」
俺は少し考えた。
ガイは頑丈な鎧を着ているし、サキは素早く攻撃を避けられる。
それなら……。
「アステリアさんが使うのはどうでしょう?」
「私ですか?」
アステリアが驚いた。
「はい!アステリアさんは回復魔法を使ってくれますし、もし敵に狙われたときに守れるようにしておきたいんです。後衛なので連続して狙われる可能性も低いでしょうし、うってつけかと」
「なるほど。それはいい考えだな」
ガイが頷いた。
「俺たち前衛が守るつもりでも、何が起こるか分からないからな」
「そうね。私も賛成」
サキが微笑む。
「アステリアが安全なら、私たちも安心して戦えるもの」
「皆さん……」
アステリアは少し照れたように笑った。
「ありがとうございます。大切に使わせていただきますね」
ミルドさんから腕輪を受け取り、アステリアは左手首に嵌めた。
銀色の腕輪は細く、彼女の白い服にもよく似合っている。
「わあ、綺麗ですね!」
「ええ、とても似合ってるわ」
サキが笑った。
「アクセサリーとしても素敵ですね」
俺はアステリアさんに言った。
「ありがとうございます!」
アステリアは嬉しそうに腕輪を眺めた。
「さて、最後はこれじゃな」
ミルドさんが青い宝石の短剣を手に取った。
刃は銀色に輝き、柄には細かな装飾が施されている。
「……ふむ」
ミルドさんは刃と宝石の状態を確かめ、魔力を流した。
すると、短剣の宝石が青白く光った。
その魔力の性質を感じ取り、ミルドさんが頷く。
「これは氷霧の短剣じゃ」
「氷霧の短剣?」
「魔力を流すことで、刃に氷属性の力を纏わせる魔道具じゃな。攻撃した相手の動きを鈍らせる効果もある」
「おおっ!」
「ただし、技を使う際には魔力を消費する。使いすぎには注意が必要じゃ」
ミルドさんは短剣を布の上へ置いた。
「剣士が予備武器として持つには悪くない品じゃな」
「じゃあ、サキが使う?」
俺が尋ねると、サキは少し考えた。
「そうね。でも、私にはいつもの剣があるけど……」
彼女は短剣を手に取り、軽く振ってみた。
「うん。軽くて扱いやすそう」
「なら、サキが持っておくといい」
ガイが言った。
「剣が使えない状況もあるかもしれないからな」
「そうね。じゃあ、ありがたく使わせてもらうわ」
サキは短剣を鞘へ収め、腰のベルトに取り付けた。
「それにしても……」
ミルドさんが腕を組んだ。
「お前たちは本当に不思議な連中じゃな」
「そうですか?」
「そうじゃ。普通の冒険者なら、これだけレアな魔道具を手に入れるのに何年もかかることがある」
「ええっ!?」
「それをお前たちは、たった一日の探索で見つけてきたんじゃぞ」
「そう言われると、すごいですね!」
俺は笑った。
「わっはっは!自覚がないのがまた面白いわい」
ミルドさんは大きく笑った。
そのとき、彼の視線がふと俺の右手へ向いた。
「……ん?」
まただ。
(うっ……)
俺は思わず右手を引っ込めそうになった。
しかし、ミルドさんは何も言わず、すぐに視線を戻した。
「…………」
「どうしました?」
「いや、何でもない」
ミルドさんは眼鏡を直した。
よほど気になっているのだろうか。
「それより、魔導板のことじゃ」
「はい!」
「今の二枚だけでは、記録の全てを読み出すことはできん。だが、少なくとも第三の魔導板が存在する可能性は高い」
「じゃあ、やっぱり探しに行くしかないですよね!」
「そうじゃな。ただし、第二階層はまだ十分に調査されておらん。くれぐれも無茶はするなよ」
「分かりました!」
俺たちは頷いた。
ミルドさんは魔導板を丁寧に包み直し、俺へ返してくれた。
「それと、今回の鑑定料じゃが……」
俺たちは顔を見合わせた。
前回は無料だったけれど、今回はこれだけたくさん調べてもらった。
さすがにお金がかかるだろう。
「金貨一枚でよい」
「金貨一枚!?」
俺は驚いた。
「そんなに安くていいんですか?」
「本来ならもっと取るところじゃが、わしもこれだけ面白い物を見せてもらったからな」
ミルドさんが笑う。
「それに、第三の魔導板が見つかったら、また持ってくるんじゃろう?」
「もちろんです!」
「なら、今回は特別料金じゃ」
「ありがとうございます!」
俺たちは金貨一枚を支払い、深く頭を下げた。
「では、またお邪魔します!」
「次はもっと珍しい物を持ってこいよ!がっはっは」
ミルドさんが笑いながら手を振った。
「頑張ります!」
俺たちは工房を後にした。
外へ出ると、昼過ぎの陽射しが裏通りを照らしていた。
「いやあ、すごかったですね!」
俺は興奮気味に言った。
「まさか、あの魔石が金貨二十枚以上の価値だなんて!」
「本当に驚いたわ」
サキも笑った。
「腕輪も短剣も、かなり珍しい物みたいだし」
「アステリア、その腕輪はどうだ?」
ガイが尋ねる。
「とても軽いです。つけているのを忘れてしまいそうなくらい」
アステリアが嬉しそうに答えた。
「皆さん、本当にありがとうございます」
「気にしないでください!しっかり効果があるといいですね!」
俺は笑った。
「これからも一緒に冒険するんですから!回復役は大事!」
「ええ!間違いないわね」
サキが頷いた。
「次は第二階層ね」
「そうだな。今度は何が待っているのか楽しみだ」
ガイが笑う。
「でも、まずは準備ですね!」
アステリアが言った。
「回復薬の補充も必要ですし、第二階層の情報もできるだけ集めておきたいです」
「そうですね!」
俺たちは次の冒険について話しながら、賑やかな表通りへ向かった。
魔導板はあと一枚。
古代の研究施設には、いったい何が残されているのだろう。
考えるだけでわくわくする。
「よし!次も頑張りましょう!」
俺がそう言うと、三人は笑顔で頷いてくれた。
その日の夕方。
ミルド工房では、店主が一人、作業台に向かっていた。
「……ふむ」
ミルドは先ほどの鑑定結果を書き留めた紙を眺めていた。
二枚の古代魔導板。
紅蓮魔石。
守護の腕輪。
氷霧の短剣。
どれも珍しい品ばかりだ。
「まったく、運のいい連中じゃ……」
ミルドは小さく笑った。
そして、ふと思い出したように眼鏡を押し上げた。
「……それにしても」
彼の脳裏に浮かんだのは、ユウの右手に嵌まっていた指輪だった。
前回も気になったが、今日も同じような魔力の流れを感じた。
普通の魔道具とは、どこか違う。
「……気になるのう」
ミルドは机の引き出しを開けた。
中から取り出したのは、古びた一冊の本。
『特殊職業と偽装魔道具の研究』
表紙を開き、何枚か頁をめくる。
そこには、さまざまな特殊魔道具の記録が残されていた。
「職業偽装の魔道具……か」
ミルドは指で文字をなぞった。
「しかし、そんな物が本当に現存しておるのか……?」
彼は首を傾げた。
職業偽装の魔道具は、古い文献にわずかな記録が残されているだけの珍品だ。
しかも、ギルドの職業鑑定を欺けるほどの物となれば、ほとんど伝説級に近い。
「……いや、まさかな。考えすぎかもしれんのう」
ミルドは本を閉じた。
あの指輪が何なのか、今のところは分からない。
ただ、少しばかり興味が湧いてきたのは確かだった。
「次に来たら、もう少し詳しく見てみるか、ふははは」
老人はそう呟き、再び作業台へ向き直った。
窓の外では、夕日が王都の屋根を赤く染めていた。
いつも読んで頂きありがとうございます!
面白いと思って頂けたらコメント、評価や⭐︎を頂けると、とても喜びます。
よろしくお願い致します。




