第九話 剣術大会の始まり
アルトリアを指導してから早二週間‥‥‥彼はようやく私に追い付けるようになった。
そこで私は、ある提案をしてみる事にした。
「剣術大会?」
「そうです。アルト君にはこの大会に出てもらい、そして一位を取ってきてほしいのです」
「何でだよ。一位が欲しいなら自分で取りに行けばいいじゃねぇか」
「はぁ――――‥‥」
私はクソでかいため息をかます。
私が今まで何のためにこの単細胞に剣術を教えてきたのだと言うのか。
「因みにもう君の大会申請は出しました」
「勝手すぎんだろ」
「一位になって下さい。じゃないと先生たちからの評価落ちるんですよ。だからさっさと戦って一位になって来い」
「俺の意見は?」
■
大会当日。私は今まで一番緊張しているかもしれない。‥‥でも、大丈夫か?あれは。
私の見る方向には、全身震えて最早上下に振動しているアルトがいた。
「これで負けたら殺される‥‥‥負けたら殺される‥‥‥」
物凄く耳の良い私にはアルトの呟き声さえも聞こえた。
おや?何か別の意味で震えているが‥‥聞いてあげなかったことにしよう。
アルトの方へと私は向かう。そして肩をポンッと叩いた。
「頑張ってくださいアルト君!」
とびきりの笑顔で応援する私に、アルトの震えは加速した。
何だ。分かってるじゃないか。そうだな、私の言いたいことは‥‥‥
「負けるなよ。もし負けたら‥‥‥な?」
ギリギリと‥‥アルトの肩を掴む力を強くする。アルトは首を全力で縦に降った。
「では————両者、始め!!」
ホイッスルが鳴り響くのと同時に、対戦相手が俺の方へと向かってきた。
ルールは簡単。この試合に白線から出たらアウト的なものも、時間制限もは存在しない。ただ一つ。相手を行動不能にさせた者が勝利する。最ッ高の剣術魂だ。
「ハァッ!!」
相手が木剣を振り下ろしてくる。俺はそれをしっかり受け止めると、押し飛ばした。‥‥‥予想以上に飛んで行ったな。
「でも、立ち上がれよ。騎士になるなら」
どんなに弱くても、この試合は根性があればいくらでも戦える。相手は立ち上がり、また俺の方へと向かって走ってきた。
また相手が木剣を振り下ろしてくるが‥‥俺はそれを避けた。そのまま木剣を相手の首に入れる。鈍い音がしたと同時に、相手は動かなくなった。
「勝者————アルトリア!!」
大きな歓声が送られてくる。俺はアステリアが満足気にしているのを見つけると、アステリアに向けてガッツポーズを決めた。
「アステリア!」
「アルト君。まずは第一回戦目を切り抜けてくれて良かったです。因みに次の対戦相手見ました?」
「いや‥‥見てないけど」
私はニコニコしながらトーナメント表を指さす。その瞬間アルトが固まった。
「次は前回優勝者のリンダスさんです。この人は少々困った人でして。私のために勝ってくださいね。見てますから」
客席へと向かう私の後ろで何かが崩れ落ちる音がした。
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「さあて!第二回戦目!アルトリアの前に立ちはばかるのは前回優勝者のリンダスだぁあぁぁっ!!」
観客の声がリンダスコールで埋め尽くされる。俺はちらりとアステリアを見る。‥‥‥いや寝てるんかい。
「君さー‥‥騎士団長の息子だか知らないけど、僕が君に勝ったらこの後聖女様とデートする約束なんだ。さっさと棄権してくれ」
「俺って何なの?」
不穏で不穏でたまらない中‥‥‥アステリアは見ていた。
アルトリアを狙う、そいつを。




