第十話 剣術大会の終わり
「ふおおおおおおおッッ!!」
「うおおおおおおおッッ!!」
お互い剣をぶつけては、後ろへと飛び下がる。
勝負が始まり十数分‥‥試合はまだ続いていた。
(飽きた‥‥‥)
さっきから威勢のいい声とむさくるしい熱気が飛び散らかっているこの場に、私はぐったりとしていた。‥‥‥いつまでやんのこれ?
あくびをグッと噛み締め、表情をキープする。いかんいかん。さすがに暇で暇で仕方ないからとはいえ、私にはやることがあるのだ。
‥‥‥そう。アルトにプレッシャーを与え続けるという役目が。
「あ‥‥あのっ、聖女様ってどっちを応援しているのですか!?」
隣に座っていた女子生徒に声を掛けられる。
後ろには複数人の友人らしき者たちがいた。
「そう、ですねぇ‥‥‥私はあまりこういう物には興味ありませんが‥‥しいて言うならばアルトリア様でしょうか」
こっちの都合もあるしな。
「へぇ!意外でした!聖女様は強い方がお好きなのかと‥‥‥」
まるでアルトが強くないと言ってるようなもんだ。
この私が教えたというのに‥‥‥”敗者”という不名誉な名を付けさせるわけがないだろう。
「ふふ‥‥‥まだ試合は終わっていませんよ」
ワァッッ!!
試合終了の笛と共に、大きな歓声が聞こえる。
見れば‥‥‥剣を振り回して喜んでいるアルトリアの姿と、へたり込んでるリンダスの姿があった。
■
「第二回戦突破ですね」
休憩所でアルトに話しかける。
「おうよ!‥‥‥でも危なかったな。お前から教わったあれを使ってなきゃやられてたところだった!」
あれ‥‥とは先日私が教えた攻撃法である。
と言ってもただ剣の急所をいくつか教えたのと、人の優しさに付け込んだ戦い方を教えただけだが。
「いや~、ビックリしたな。お前の言った通りだったよ。人ってのは人の事殺せねえもんな!捨て身覚悟で突っ走ったら本当に隙見せてくれんだ!あれは役に立ったぞ!」
「‥‥‥それ味方以外であんまやらないでくださいね」
やはり教えない方が良かっただろうか。
ポンポンと頭を叩いてくるアルトに蹴りを入れたのは、間違えではないけども。
そんな心配もよそに、アルトはさっきの技を使うことなく順調に勝ち進めていった。
「よっしゃ!次が準決勝だ!」
「うーん‥‥‥」
「どうしたんだ?急に心配になって来たのか?」
アルトの声を無視して私はある考え事をする。
‥‥‥今回の出場者に、何か別のモノが紛れてるような気がするのだ。さっきそれっぽいの睨んだら逃げていったから大丈夫だと思いたいが‥‥‥どうしたもんか。
「ハァ‥‥だる」
「え?」
「アルト君。次の試合からは守備をガチガチにしてください。敵を見抜くことから始めましょう」
「お‥‥‥おう!」
不思議そうにしながらもちゃんと頷いてくれるアルトは結構使いやすい。はっきり言って便利。
因みに当の本人アルトは、腑に落ちないまま準決勝に臨もうとしていた。
■
『さあさあさあ‥‥次はいよいよ準決勝!!次に進むのは誰だ!?ご覧になれ!アルトリア対ゼルドだああああぁぁぁッッ!!!』
いい加減実況者の声も枯れてもおかしくはない声量の中、アルトとゼルドらしき人物が見えた。歓声はアルトの方へと向く。数試合前とは大違いだ。
「アルトリア貴様‥‥‥なぜそんな顔をしているんだ」
「ちょっと‥‥‥緊張が‥‥‥」
最早顔芸の域にも達しているとは本人には言えないような顔をしているアルトは、緊張で具合が悪そうだ。そんなプレッシャー掛けたっけな。
「まぁいいだろう。顔芸で我を追い詰めることなど出来ん」
『りょーしゃ構え!!』
「えっ、してないんだけど!?」
『よーーい‥‥‥スタートッッ!!』
笛が鳴ったその瞬間、何が起きたか分からなかった。
けれども数秒経って理解できたのは、バケモノと化したゼルドらしき人と、アステリアが剣を打ちつけ止まっていることだった。




