第三話 上級魔物
魔物討伐訓練‥‥‥それは自分の身を守るために最も重要な授業らしい。バランスよくグループを作り、皆と力を合わせて魔物を倒す‥‥‥ま、私にはグループなんぞ要らないけどね。
「では、これから魔物討伐訓練を始めたいと思います。皆さん、森の中に入るので、はぐれないようグループでくっついてるように。危険を知らせる笛は持っていますね。では最後に質問がある方ー」
「はーい、先生。何で聖女様は教師側にいるんですか?」
「‥‥‥彼女はこの森にいる、魔物のレベルに合わないんだよ‥‥‥」
ハハ‥‥‥と乾いた笑いが教師の口からこぼれる。その姿にほくそ笑みたくなったが、今は大勢の人がいるので我慢我慢。
「最後に、聖女様からも何か一言‥‥‥」
「はい。皆さん、この森は非常に危険です。もしかしたら自分たちより強い魔物も出るかもしれません。その時は迷わず逃げてください。そしてもし、ケガした場合には私が作った回復アメを食べてください。それでは、気を付けて。‥‥‥いってらっしゃい!」
「「「「うおおおおおっ、いってきますっっっっ」」」」
生徒はもの凄いスピードで森の中へ入ってしまった。
はぁ、言いたくないスピーチ言わせやがって‥‥‥回復アメなんて価値しかないんだけど?
「‥‥‥ま、頑張って」
■
「うわぁ、怖いよぉ」
シエルは初めての魔物討伐と森の雰囲気に恐怖を感じてわめいていた。
「やだやだ、もぉ帰る~」
「こら、あの聖女に認められたいんでしょー?頑張りなって」
シエルからクロルと呼ばれている男は、シエルをさっきからあやしていた。
「レオン君は大丈夫なの?この森すっごく危険で怖いんだよ!?ケガしたらどうするの!」
「大丈夫。ケガをした時には回復アメがあるじゃないか」
そう微笑みかけてくれるレオンに、シエルは頬を赤らめた。
「そ、その回復アメって、聖女さんが作ったんでしょ?本当に効くのかなぁ?」
「効くよ。絶対に」
その言葉にシエルは違和感を抱いた。
なんなんだろう。この‥‥‥絶対的な、聖女さんに対する信頼は。
「あ‥‥‥そ、そんなことより、聖女さんって言ったら————」
「グルアァッ」
キィィィィンッ
刃と刃がぶつかり合う音が聞こえた。
「ネロールだ!!尾が刃になってる!」
「ひ‥‥きゃああああ!!」
驚きと恐怖のあまり、シエルは悲鳴を上げる。
「バカ!そんな大きい声出したら————」
ガサガサと音を立てながら、仲間と思われるネロールが茂みから出てきた。
「う、嘘だろ‥‥‥」
■
アステリアは優雅にお茶を飲む。森を見れば、ところどころから笛の音が聞こえる。さっきから教師たちが慌ただしいが、今回の訓練はそんなに強い魔物がいたのだろうか。
「‥‥‥‥私も参加した方が良かったかも」
そう呟くと同時に、たくさんの教師が走って私の前を通りすぎてった。
「ネロールが出ただって!?」
「それも一匹や二匹ではないんだとよ!俺らに相手できるのか!?」
ネロール?上級魔物じゃん。個体にもよれば神級にも届くと言われる‥‥‥どうしてこんなところに。
あー‥‥‥シエルか。
「はぁぁぁぁ‥‥‥仕方ないなぁ」
けだるそうに椅子から立ち上がると、アステリアは森へ向かった。
■
レオンが後ろに吹き飛ばされる。木に叩きつけられるが、何とか意識は留めた。
「わっ」
「殿下!」
「レオン君!」
アルトとシエルがこちらへ向かって来ようとする。
「僕はいい!少しでも隙を突け!!逃げるぞ!」
「は、はいっ」
僕が指示を出しても、まだシエルはこちらへ来る。いいと言っているのに。
「レオン君‥‥‥!ケガが‥‥‥!」
「あぁ、そうだね」
アステリアから貰ったアメを舐める。‥‥‥これは何味だ?と、思うと共に、傷口がふさがり始めた。
マジかよ。こんなものこんな訓練で使う物じゃない。
‥‥‥本当に、優しいなぁ。
「もう、大丈夫だ。そろそろ逃げようか」
そうは言うものの、この世はそんなに甘ったれていない。すぐに追いつかれて殺される。上からネロールが飛んでくるのを見て、シエルを突き飛ばした。
ケガが治ったとしても、剣を持つ気力が残ってないな。ここで終わりか‥‥‥。
「ギュルアッ」
パチンッ
悲鳴が聞こえると共に、ネロールが弾け飛んだ。
理解できずにいると、アステリアが上から覗き込んできた。
「大丈夫ですか殿下。随分と嬉しそうな表情で」




