第二話 呪いの言葉
「いいか、アステリア。お前の母も姉も、私の言うことを聞かず、自分の思い通りに動いたからあのような結果になってしまった。よく聞け、お前は私の言われたとおりにしていればいい。あれは間違っているんだ。アステリア、期待しているのはお前だけだ」
こびりついて離れない。父のあの言葉が。
まるで呪いのように。
■
「ん‥‥‥」
「聖女様、おはようございます。お食事の用意ができておりますよ」
ヨロヨロと食卓につく。これから一日が始まるというのに憂鬱な気分だ。私は分かってる。あの夢を見た日は不幸なことが起こるって。
「見て、聖女様よ‥‥‥!」
「朝から見れちゃったわ。ハァ~‥‥‥至福すぎるわ」
長期休暇が明けてはや数日。毎朝よく飽きずに同じことがいえるな。
でも、以前より少しだけ変わったことがある。それは、ある一人の存在だ。
「おはようですぅ。聖女さん!」
後ろから声を掛けてきたのは、長期休暇明けからこの学園に入ってきた平民シエルだ。
ただ一つ、恐ろしいことがあると言えば、彼女の周りに男が三人いることだ。
「‥‥‥ごきげんよう、シエルさん。ご学友はできたのですね。良かったです」
「そうなんですよぉ~!」
何やら随分とご機嫌そうだ。友達といることがそんなに楽しいのか?‥‥‥いや、私の周りには誰もいないからか。勝ち誇ったような顔しやがって。なんなのこいつ。
「さすがに知ってると思いますけど‥‥‥こっちがレオン君で、こっちがアルト君。で、この人がクロル君です!」
「‥‥‥あれ?おかしいですね。顔と名前が一致しないようです。改名でもなされたんですか?」
それともこの女に勝手に名前を付けられたのか‥‥‥三人とも可哀そうなこっちゃな。どーでもいいけど。
「ふん!俺らの中には信頼というものがあるからな!貴様とは違うのだ」
あー?なんだこいつ。気取るなよ。確か、アルト‥‥‥アルトリアだったはず。えーと、騎士団長の息子というだけで人生胸張って生きれる奴だったな。
「そーだよ。それに君さ、『神の祝福』を使ってるところ見たことないんだけど。本当に使えるのー?」
クスクスと笑いながら訪ねて来た。
イラッとするな~。背が小さいから心も狭いんか?てゆーか聖女のことバカにしたら本当はダメだからな。今は許すけど。誰だ?この小さいの。クロル‥‥‥?クロル何ていたか?‥‥‥なんかもういいや。
「私は、私は‥‥‥『神の祝福』を使わなくて済む平和な学園で良かったと思っております。そちらの皆さんも、困ったことがあれば何でもおっしゃって。こう見えて私も話しかけて貰いたいのですよ?同じ学園の、仲間として」
ワァァァァァッ!!
歓声と共に盛大な拍手に私は包まれる。
一ミリもそんな事を思っていないとはいえ、これを機に私がまた皆から信頼されるのだ。シエルたちとは違う‥‥‥私はこの学園の全てから信頼されているのだ。
「では、私はこれで。そういえば今日は、魔物討伐の訓練がありますので‥‥ケガがないように気を付けてくださいね。特に‥‥‥シエルさん」
そのまま私は教室に向かっていった。
■
レオンハルトは、教室に向かうアステリアの後ろ姿を見ていた。その隣で拗ねてるシエルと、それをなだめているクロルを横目にしながら。
「何なんだ、あの聖女様は。‥‥‥殿下。あの女は本当に聖女なのですか?」
アルトリアが僕に訪ねてくる。どうにも彼女が気に入らないらしい。
「どうしてそう思うんだい?」
「どうしてって‥‥‥そりゃ、入学してから一度も見たことがないからですよ。彼女が祝福を使うところ」
「‥‥‥ふふ、そうかい。それは良かったよ」
「え?」
それはそうだろう。聖女がいる学園で、誰か一人でもケガなどしては聖女など務まらない。彼女は優秀だ。それと同時に、あの男の操り人形でもある。
「そろそろ行こうか、授業が始まってしまうよ」
いつからだろうか、彼女があんな笑みを浮かべるようになったのは。
いつからだろうか、彼女からの信頼が消えたのは。




