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第一話 聖女様


 いつからだろうか‥‥‥この世のすべてがどうでもよくなったのは。

 いつからだろうか‥‥‥人を信じられなくなったのは。



「聖女様ぁっ!!」

「聖女様だ!!」

「今日も美しい‥‥‥聖女様!!」


 毎日毎日、いつものルートで街を歩く私は、いつものように民衆から歓声を浴びていた。


「つまんな‥‥‥」

「え?今なんと?」

「いえ、何でもないです」


 ニコッと私が笑って見せると、話しかけてきた護衛は顔を赤らめた。


(チョロ‥‥‥)


 なんとなく、下を向きそうになる。あぁ、危ない。『聖女様』は下を向いちゃいけないんだった。なんとなくいつも前を向いて笑ってればいいんだ。そうすれば、民からは好かれ、金は稼げ、地位も名誉も思う存分もらえる。

 

 実に楽な『仕事』だ。


 それでも別に‥‥‥聖女という単なる職業にやりがいなどを抱いたことは一度もない。誇りを持った事もない。ただ、人から与えられた人生を歩んでいるだけだ。‥‥‥それが最善だと学んできたから。


「聖女さ———きゃっ」


 私を一目見ようと群がっていた一人が、転んでしまった。別に誰がコケようとどうでもいいのだが、ただ一つ、最悪だったのは‥‥‥転んだのが小さい女の子だったことだ。思った通り、女の子は大声で泣き始めた。

 周りから好奇の目を向けられる。だから小さい子は嫌なんだ。


「ねぇ、あなた、大丈夫?どこか痛いの?」

(さっさと泣き止んでくれないかな~)

「これ上げる。はい、回復アメ。これ食べるとケガが治るんだよ。私が作ったの」

(まぁ、失敗作だけど。私が作った奴だしすり傷くらい治るでしょ)


 女の子は私のアメを食べると、ピタッと泣き止んだ。

 その感情の変化にイラッとする。だから子供は嫌なんだ。


「す、すいません!聖女様!何とお詫びをすればいいか‥‥‥」

「大丈夫ですよ。お礼を貰うほど何かしたわけでもありませんし、ちゃんとこの子の事を見ていてあげてください」

「は、はい!申し訳ありません‥‥‥行くよ!ルーラ!」

「ばいばーい!アステリア様!」

「!」


 驚いた。だって私の名前なんて言ってくれる人、いないも同然だったから。

 だから‥‥‥少しだけ、ほんの少しだけ‥‥‥嬉しかった。



 風呂に入っているとき、メイドが話しかけてきた。


「聖女様、明日からは学園ですね」

「あら、もう長期休暇は終わってしまうのね」


 学園の長期休暇など私にとってはただの憂鬱の一つに過ぎなかった。なぜなら毎日同じ時間に街を歩いた後には、勉強、神への祈りしかやらないのだ。

 

「聖女様、あの話はご存じですか?」

「あの話?」

「はい、明日から平民の女が学園に入って来るらしいですよ。何と言っても聖女様に並ぶ『神の祝福』の持ち主だとか」

「そうなの?すごいのねその子」


 私と同じ『神の祝福』?んなわけないだろ。私は祝福の力を隠しているのに。じゃないと強すぎて周りの草木や人体に影響を及ぼすからだ。もし私が力を開放すれば、この世界を私一人で平和にできる。

 

「聖女様が二人できたりして」

「ふぅん」


 一生無理な話だな。



「あれ?もしかしてあなたが聖女さん!?」


 次の日、私が学園の廊下を歩いていると、誰かが後ろから声を掛けてきた。


(‥‥‥誰?)

「えっと‥‥‥あなたは‥‥‥?」

「えー!?分かんないですかぁ?今日からこの学園に来たシエルですよぉ」


 ‥‥‥こいつが?なじみすぎて気づかなかった。てか軽々しく話しかけんな。


「では、あなたが『神の祝福』を使えるという‥‥‥」

「はい!そうなんです!あ、聖女さん、聞いてください!私さっきレオン君に話しかけられちゃって!」

「‥‥‥レオン君?」

「はい、レオン君ですよぉ。レオンハリア王子!喋ってる内に私だけはレオンって呼んでって言ってくれて~」

「あぁ、それで?だからなんです?」

「え‥‥‥いや、別に‥‥‥ないけど‥‥‥」


 え、つまんな。‥‥‥ヤマもオチもない話とか、この世で一番つまんないじゃん。え?それただの報告では?こちとら聖女なんですけど。

 

「では、私は授業がありますので。シエルさんも早く行った方がよろしいですよ」


 一刻も早くこの場を離れたかった私は、踵を返して足早に教室に向かった。



 ボーッとしながら授業を聞く。ダメだ。昼だからかものすごく眠い。


「では、誰かこの魔物の名前が分かる方」

「はいっ!」


 もの凄く聞き覚えのある声が聞こえる。


「では、シエルさん」

「はい、これはマーマンウォリアーという水系の魔物です!」

「あー、違いますねー。では、他に分かる人!」


 一緒の教室だったんか、こいつ。それにしても元気に間違えたなぁ。ごめんだけど、貰ってくか。


「はい」

「では、どうぞ」

「マーマンウォリアーの一つ上のランク、マーマンジャックです」

「正解!流石です!」


 シエルに睨み付けられる。私はため息を吐いた。


 これからの生活に嫌気がして。

 この話が面白いなと思った方は、ブクマと評価お願いします!

 まだまだ未熟者ですが、喜んでくれたら幸いです!( `・∀・´)ノヨロシク

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