第二百二十八話 参謀の来訪
「今の私にはクロウ教の教えを説かず、励ますことしか出来ない。この無力感は凄いものね。如何に教義に頼りすぎ、本質を見ていなかったか思い知らされているわ」
本質とは何かと聞くと、英雄クロウが何の見返りも求めずに、魔神ラヴァルと戦ったことだという。
「今の教団はお世辞にも無欲に人を助けよう、なんてものじゃないわ。あなたの暗殺もそうだけど、権力や地位を保つため、そして自分たちの理想や妄想を押し付け実現させるため、そんな無欲とはかけ離れた活動に終始している。こんなものは神を畏れ敬う組織なんかじゃないわ」
異世界に無欲な教団などあるのだろうかと思ったが、突っ込むと荒れそうなので黙っておく。
「そこで私は八面玲瓏な教団を目指すことにしたのです。皆で意見を参考にしお布施は使い道を細部まで明らかにし、クロウ様を信じる人弱き人たちのために使うのです!」
「おいおい、それのどこが妄想じゃないんだ? 八面玲瓏な宗教なんて聞いたことがねぇよ」
後ろから聞き覚えのある声がして驚き振り返ると、そこには金髪をオールバックにしたちょい悪おやじなエルフ、こと魔神ラヴァルの腹心であるライエンがいた。
本当に久しぶりで直ぐに駆け寄り握手を交わしたかったが、ライエンが黙ってろと言う顔をしているのでそうする。
「私の理想を笑うとはどういうつもりだ?」
「そりゃ笑うだろ。知性のある生き物なんてなぁ大なり小なり悪いことをするもんだ。アンタの理屈で言えば教団を守るために使うであろう、工作費用すら表に出すんだろう? 信徒にスパイがいない、金儲けのために情報を売らないという保証がどこにあるんだ?」
「わ、私の理想なんですから良いじゃないですか」
「アンタの理想は今のクロウ教の頭と変わらないと思うがね。まぁどうでもいいけど、うちの僕ちゃんに変な思想を植え付けないでくれよな? 俺が見込んで支えてやる男なんだからよぉ」
そう言ってにやりと笑いサムズアップしたので、良いのだろうと察し立ち上がり近寄ると手を差し出した。
「またせたな大将。ようやく静かになったんで馳せ参じることが出来たよ」
「待っていたよライエン」
固い握手を交わす。魔神ラヴァルの片腕として現界した彼は、以前ハクロで初めて会いその時に忠告をしてくれ、そのおかげでなんとか死者を減らすことが出来た。
洞察力なのか情報網なのかは分からないが、その能力は今この里に欠けているものだと感じている。参謀が適任だろうと考えているので、そう言った部分についてこれから意見交換しようと思ったが
「偉そうなことを言う割には身一つでやってきたとはね。ただご飯をたかりに来ただけなんじゃないの?」
「はは、それに関しては大将と話をしたかったんで先に来たんだよ」
食って掛かるツクヨミさんに対しライエンはいなすように答えた。すかさず話とは何かと聞くと例の抉れた場所にカジノを立てたいという。
ツクヨミさんはそれを聞いてふしだらだ、博徒を連れ込むなんて宗教よりたちが悪いと批判する。
「本当に宗教を信じてるやつってのは話を聞こうとしないな。博徒が悪いっていうがお前らクロウ教だって、そいつら取り込もうとしてギャンブル依存してるやつを救う、とか言って賭博場の近くをうろうろしてるじゃねーか」
「ギャンブルで身を亡ぼすよりも神を信じた方が健全です!」
「アホか。依存先を変えるだけで解決になってねーだろうが。というか俺は別に宗教そのものがダメだと言ってるんじゃないぞ? 考えてもみろよ、今のエルフたちはマナの木やクロウ教よりも、うちの大将を信仰してるようなもんだぜ?」
宗教論争に巻き込まないで欲しいなと思いつつ、どういうことなのか聞くと
「エルフたちは病は回復したか知らねぇけどな、本当であれば心はまだ回復するはずがない。それがどうだ? 連中は目を輝かせて懸命に働いてる。なぜだと思う?」
そう捲し立てるように言ってきたので、禅問答を始める気なのかと聞いたところ違うよと言う。
「支えは何にしても必要だって話だよ。大将がいなけりゃエルフは滅んでいた、それは俺の主とかクロウ教徒の虐殺を除いた場合でもな。アンタという支えがあってこそ、連中は明日を夢見ることさえできるんだ」
支えが必要だから宗教やギャンブルに拘るな、と言いたいのであればそういえばいいのにというと、俺はそういう性分だから仕方ねぇよと笑った。
「とにかくだ。国が柔らかいうちに妙な思想の宗教をやってもらいたくねぇ。やるならうちの大将一択だ。それ以外は許さねぇ」
「偉そうに……アンタ何様なの!?」
ツクヨミさんはそう怒鳴りながら勢いよく立ち上がり、ライエンの前に移動して仁王立ちする。初対面の頃からあのモードになると怯えてしまうこちらに対し、ライエンは意にも介さないのか鼻で笑った。
「そりゃこっちのセリフだ。勘違いするなよ小娘。てめぇ何虐殺しようとしたエルフに飯を食わせてもらってるのに、連中の希望が揺らぐような宗教やろうとしてんだ? 分かってねぇから言ってやったんだ。次やったら大将が許しても俺がてめぇを許さねぇぞ?」
「言いすぎだライエン! 少し頭を冷やしてこい。下の皆に声をかけてエオルさんを探し、二人で建設について話してくれ。カジノを作っても良いが夜中まで煌びやかなのとかダメだぞ?」
あまりにもヒートアップしていたのでライエンを諫め、距離を置くよう指示を出すとすまねぇと言ってその場を去る。
ほっと一息ついたが視線をツクヨミさんに向けると、地面に座り込んで雑草をむしっていた。明らかに落ち込んでいるというかいじけており、しばらくの間彼女の隣に座ってフォローをしつつ、ライエンの言葉の真意を説明したりした。
結局夜遅くまで立ち直らず、しまいにはもういい! と吐き捨てて走り去ってしまう。放っておくと色々まずそうだと思い追いかけてはなだめを繰り返し、やっと機嫌を直し寝床へ行ってくれたのは深夜過ぎである。
自分専用のメンタルケア人員が欲しいな、などと冗談めいたことを考えつつ、短い時間だが就寝することにした。
職業:エルフの里代理総督
役職:エイレア(総督補佐官)
ヴァルドバ(食材調達班隊長)
士元勇太(モンスター討伐班隊長)
エイミー(総督補佐官)
ジンネ・ダーント・ミエナ(環境調査班)
ミケ・ザ・キャットとお供二人(資産運用班)
アルヴたちダークエルフ(モンスター討伐班)
パルダス(総督直轄兵)
ライエン
騎乗馬:サジー(白毛の小さめの馬)
名産品:里の川魚の干物(予定)
人口:二百人
所持品
メイン武器:ソードブレイカー・右
サブ武器:ソードブレイカー・左
魔神の三又槍
防具:布の服・ズボン・革の靴(初期装備)
エルフのマント




