第二百九話 人間族の刺客
「おお凄いな、それはどんな手品だ? 魔法か?」
巨体を揺らしながら兵士たちの間をかき分けて、前線指揮官であるウォルフガングさんは現れた。指揮官だというのに敵の目の前に出るなんてと思ったものの、自分も似たようなものなので言うのを止め、彼の問いに答えることにする。
「手品でも魔法でもない。これはあなたたちが森とエルフの里を焼いた、その罪と罰によるものですよウォルフガングさん。生きて帰れることを期待しないで欲しい」
「いうじゃないかコーイチ!」
俺が生きて帰さないということじゃないと言おうとしたものの、具体的にどういう目に遭うのかしらないし、面倒なので説明するのはやめて刃を交える。
ウォルフガングさんは満面の笑みを浮かべながら、手に持っていた投擲した斧と似たような大きさの斧を、こちら目掛けて薙いできた。
サジーも森の中で加護を受けているのか素早く反応し、難なくそれを後ろへ飛んで避ける。此方も合わせるように振り切った斧へ槍の切っ先を思い切りあて、弾いて隙を作らせようと思った。が
「な、なんだと!?」
加護凄いとしか言いようがない。槍は魔神の三又槍なので超一級品どころではないのだが、その力とは違うものが発揮され大きな鉄の斧は粉砕される。
―許さんぞ人間ども……!
聞いたことのない青年の声が聞こえてきたが、その声は明らかに憤怒を帯びていて背筋が凍りそうになった。
呪い殺されたら可哀想だけど仕方ないよな、と諦めながらサジーを進ませる。得物がなくなったウォルフガングさんは茫然自失状態で、もはや戦意はないように見えるがこのままにしておけない。
彼はこの部隊の指揮官だろうし、気を取り直して指揮を取られたら戦いは終わらないだろう。戦好きの前線指揮官である彼は、以前戦った感じからこちらに勝てると踏んできたからこそ、役割を顧みず前に出てきた。
予想通りになれば勝ち、少しズレていても相打ちか時間稼ぎで援軍が来て、くらいの感じだったろうが結果は御覧のあり様である。
クロウ教徒であるにもかかわらず、魔法がある世界の住人であるにもかかわらず、神霊を疎かにした結果、勝てるかもしれなかった相手に一方的にやられている。
一方で転生する前から年末年始とかで神社に行くくらいの自分は、神霊と付き合いを持ち疎かにしなかったせいで、人間離れした加護を押し付けられていた。
なんという皮肉だろうか。神を信じてるんだから似たようなものも大事にすればいいのに、そう思いつつウォルフガングさんの近くまで来ると
「本当にあなたたちの自業自得なんで、今日のところは大人しく帰ってください、っていうか二度と森に来ない方が良いですよ? この後何があるか知りませんがお元気で」
そう告げた後で彼の鳩尾を槍の柄頭で思い切り突くと、鎧を砕いて当たり巨体は遥か彼方へと吹き飛んでいく。完全に見えなくなった後で残りの兵を見た瞬間、たじろぎ始めやっと人間らしい動揺を見せてくれる。
「悪いな、逃がしてやれなくて。お前たちを逃がすと俺の命が危ないんだよ」
怒り心頭の偉い人から人間ではなく別の者にされてしまうので、気持ちを少しでも静めるために一人残らず殴り倒すしかなかった。
「た、助けてくれ!」
残りが四分の一まで減ったところで、ようやく兵士たちはこちらに助けを求め始める。残念なことに先に宣言したので問答無用で殴り倒し、一人も動かなくなったのを確認してから、エルフの里へ向かうべくサジーをそちらへ向けた。
が、槍が反応し背中を守るように背後に向かって動こうとしたので、そのまま逆らわず合わせるように腕と手首を動かす。次の瞬間、キン! という金属音が鳴りすぐさまサジーを前へ出し向きを変え、襲撃者の姿を見る。
「チッ、少しは油断してくれてもいいものを」
「またあなたですか、師匠」
職業:エルフの里代理総督
役職:エイレア(総督補佐官)
ヴァルドバ(食材調達班隊長)
士元勇太(モンスター討伐班隊長)
エイミー(総督補佐官)
ジンネ・ダーント・ミエナ(環境調査班)
ミケ・ザ・キャットとお供二人(資産運用班)
アルヴたちダークエルフ(モンスター討伐班)
パルダス(総督直轄兵)
騎乗馬:サジー(白毛の小さめの馬)
名産品:里の川魚の干物(予定)
人口:二百人
所持品
メイン武器:ソードブレイカー・右
サブ武器:ソードブレイカー・左
魔神の三又槍
防具:布の服・ズボン・革の靴(初期装備)
エルフのマント




