第二百六話 二人の狙い
ー調整が上手くいっていない
ーエルフは滅びるべきだ
彼があの夜に言っていた言葉が頭を過る。ここに居ないのは彼だけであり、手を組んだはずのクロウ教徒もここにはいまだに来ていない。
ミーファも思えばエルフの里、いやエルフそのものに不満を抱いていて、恐らくこちらに向かっているだろう。
二人の共通点、共通の目的……。
「何!?」
名を口にしようとしたところ後方で爆発音がする。方角はエルフの里だ。エイレアを見ると青ざめており、エイミーに彼女を頼むと告げて前へ出た。
恐らくこちらは陽動で本命は向こうだと思った。まさか自分の子孫を囮に使うなんて、大賢者も意外とえげつない。
目的がエルフ族の全滅であれば、たとえ子孫であろうとお構いなしなのだろう。救ったはずの里に蘇ってみたら地獄が広がり、それを正そうともしないどころか逆に魔神を呼び、共食いをしていた子孫を見ればそうなっても仕方ないのかもしれない。
複雑な気持ちのまま皆に近づくと勇太が寄ってきて
「あの爆発は!?」
そう聞かれたのでこっちは囮で本命は向こうだろうから、こちらは早く終わらせてエルフの里へ戻るぞと答え、残りのエルフの兵士を急いでなぎ倒していく。皆も減らしてくれていたがまだ残りが数人いる。
元々積極的に攻めては来ず、こちらの味方の攻撃を受けると下がっていたが、今はさらに怯えて防御を集まって高めるだけで攻めてこなかった。
「ああ……悪魔だ……」
「悪魔に見えるのはお前が俺の敵だからだ。どうする?」
嘆くように言った兵士の言葉に答えるように、問いを投げかける。彼らも圧倒的な力の前に戦力を喪失しているのは明らかであり、時間を掛ければ全滅は容易い。
こちらとしては人員は不足しているが、誰でも仲間に加える訳にはいかなかった。こちらに対する忠誠心のみ求めると付け加えたところ
「ゆ、許していただけるのですか!?」
まるで奇跡が起こったかのように声を弾ませる。心掛け次第だというと相手のうち一人が素早く馬を降り、武器を捨て跪く。
一人目が出るとその後は早く、アライアスの父親以外は皆跪いた。気になって全員の顔を確認してみたが、例の元里の交渉人がいない。こちらに合流したものだとばかり思っていたが、どこか別の場所に隠れているのだろうか。
「な、なにをしているのだお前たち! なぜそのようなやつに跪く!? そいつはたかが人間族だ! 我々が本気になれば勝てる!」
この期に及んで往生際が悪いなと思いつつ、ならばその本気を見せてくれというと右手を突き出してくる。恐らく魔法を出そうとしているのだろうと察し、出てくるまで待ってみた。
「な、なぜ出ないのだ!?」
「分からんのか? 魔法はマナの木や妖精族が与えてくれた慈悲の力であって、お前たちが元々持っていたものではないからだ。彼らの意思を無視するだけに飽き足らず、ここを無断で占拠するからそうなる」
こちらの言葉に跪いた兵士たちは感嘆の声を上げる。エルフ族にこういう話をすると毎回感嘆の声を上げるので、早く意思疎通が出来るようマナの木の巫女を新しく立てたい、そう思った。
「わ、訳の分からんことを! ここは元々私たちの先祖が住んでいたところだ! 魔法も我らのものであり慈悲など関係ない!」
マナの木との交信を断っていたからか知らないが、大賢者の子孫にしては知識量が少ないらしい。こちらとしてはご丁寧に説明する時間はないので、本気を出すなら早めに頼むというと、苦し紛れに剣を抜いて斬りかかってくる。
「愚かな真似を」
文官が武官と武器を持って戦うのが本気なのかと呆れ、剣を弾いて殴り倒そうと槍を振り上げた瞬間
「これ以上の無礼は許せん!」
「止まれ!」
パルダスとヴァルドバが前に出て来て、パルダスが相手の剣腹を叩いて落とさせ、ヴァルドバが相手の馬の前足を掴んで持ち上げた。
あわあわしながらアライアスの父親は落馬する。二人は彼を殺そうと飛び掛かったものの、この美しい景色にこれ以上血は似合わないと考え、捕縛するだけに留めさせた。
職業:エルフの里代理総督
役職:エイレア(総督補佐官)
ヴァルドバ(食材調達班隊長)
士元勇太(モンスター討伐班隊長)
エイミー(総督補佐官)
ジンネ・ダーント・ミエナ(環境調査班)
ミケ・ザ・キャットとお供二人(資産運用班)
アルヴたちダークエルフ(モンスター討伐班)
パルダス(総督直轄兵)
騎乗馬:サジー(白毛の小さめの馬)
名産品:里の川魚の干物(予定)
人口:二百人
所持品
メイン武器:ソードブレイカー・右
サブ武器:ソードブレイカー・左
魔神の三又槍
防具:布の服・ズボン・革の靴(初期装備)
エルフのマント




