第百八十八話 心に刺さったままの棘
「よし、とりあえず今日も一日頑張ろう!」
「そうね、コーイチは総督様だものね。行こうか……ってお父さん!?」
エイレアはそう言って名残惜しそうな感じで離れ、先に家から出たがすぐに驚きの声を上げる。駆け寄って見るとアインスさんが笑いながら立っていた。
「ど、どどどどうされましたかアインスさん!?」
「いやぁ会談が終わったかなと思って戻ってきたら、その、ねぇ?」
気まずいとしか言いようがないが、深呼吸してからアインスさんに場所ありがとうございました、と先ずはお礼を言う。
「とんでもない。なんだったらこれからここを使ってくれても構わないよ? ここは隠れ家なのもあって毎日使ってないし、総督が外で寝てるのもイメージが悪いし」
「ま、前向きに検討させて頂きますよ、ねぇ!?」
「そ、そうね前向きに検討してみるわねお父さん! じゃあまた!」
何かもういたたまれなくなって、エイレアと二人でから笑いをして誤魔化し足早に去る。
「総督、私に話があるのではないのですか?」
どうやら逃げられないらしい。足を止めて数秒考えたが良い案はなく、諦めて覚悟を決めて踵を返して元の位置に戻った。
「エイレアは良いから仕事に戻りなさい。私は総督と話があるから」
「え!? い、良いわよ私も関係ある話だし」
同じく居辛いであろうエイレアは行ってもいいと言われたものの、隣に並んでくれ拒否する。とても有難いという気持ちになったが、アインスさんは色々話したいんだろうなと思ったし、ここは男として二人で話すべきだと考え、大丈夫だからと彼女を見て微笑みながら言った。
「総督もこう言ってることだし行きなさい、エイレア。お前も総督に恥ずかしくない仕事をしなくては、皆に祝福してもらえないよ?」
「わ、分かってるわよ!」
さっきまでと違い顔を歪め怒気を込めてそう言って、エイレアは家の前から走り去る。心配になり呼び止めようとしたものの、アインスさんに止められ家の中へと促された。
家の中に戻ったが先ほどとは違う重い空気が支配している。椅子に座るよう言われたので、失礼しますと断りながら席に着いた。
「あの子のことを心配してくれて嬉しいのですが、言ったことは事実です」
座って少し間があった後で、アインスさんはそう切り出してくる。エイレアが自分の姉である、エレクトラ王妃の娘イリアを誘拐しようとした件や、人間族に攻撃を仕掛けることに加担した件、それらは事実としてあり何をしても消えないという。
周囲が許してくれるかどうか、それはこれからの努力でなんとかするしかないし、それも並大抵の努力では足りない、アインスさんは眉間にしわを寄せ付け加えた。
もちろん言う通りだし、親としてアインスさんも世間から厳しい視線を向けられる。分かっているからこそあえて甘やかさず、厳しい言葉を身内から向けているのだろうと思った。
「あなたは王になると言うことですが、王様の、それも英雄の妻となるのであれば、それ相応の者を皆求める」
その言葉を聞いて一介の冒険者であれば問題ないが、王様として皆の上に立つと言うのであれば、人々はその身内にも清廉高潔を求める。
確かにこれまで彼女のしたことは、とても褒められるようなことではない。エレクトラ王妃も言っていたように犠牲者も出ており、直接的な攻撃はしてなくとも加担した事には変わりはなかった。
しかし例え道は厳しくとも挽回する方法はあるはずだ。罪を犯して開き直るのではなく、今彼女は里の復興を通して人間族の国にも貢献している。
許す許さないは相手にあるにせよ、彼女が今頑張っていることには違いない。自分もすべてが正しいわけじゃないし、これからも間違っていくだろう。
落ち込みやすく自己肯定感の低い自分にとっては、彼女が居てくれるのは本当に心強い。喜怒哀楽はっきりしており人当たりもよく、自分が利用され多くの人の命を奪うことに加担した事にめげず、負けないよう頑張っている、そんなエイレアを自分は眩しく感じた。
彼女のいいところを分かってほしい、そうアインスさんに伝えるべく口を開く。
「お言葉を返すようですが、エイレアは今懸命に頑張っていますし、これからも共に頑張ってくれます。おっしゃる様なことはありましたが、それに挫けず負けない根性がありますから、いずれは俺よりも皆に好かれるに違いありません」
一気にまくし立てた後ではっと我に返る。言い終わるのをちゃんと待たずに強く反論してしまい、失礼なことをしてしまったと反省し、申し訳ありませんと頭を下げて謝罪した。
「いや良いんです。正直言うとあなたにそう強く言ってもらえて、父親としてはとても嬉しい」
先ほどまで眉間にしわを寄せていたアインスさんは、そう言って大きく頷く。エイレアは優秀な姉であるエレクトラ王妃と昔から周囲に比べられ、自分も妻も意識せずにそうしてしまった面があるかもしれない、そう言った。
さらにテロに加担したのも、そうした周囲から植え付けられた劣等感によるものではないか、とも付け加える。
「彼女からすればどの口が言うのかと思うでしょうが、それでも私が口に出して言わないと、誰もそうは言わないから」
アインスさんは寂しそうに微笑みながら、父親としての複雑な心境を吐露する。想像でしかないが、エイレアとしては両親にはエレクトラ王妃とは比べず、自分そのものを見てほしかったがそう感じられず、なんとかしたい一心でテロに加担した側面もあるのだろう。
自分も彼女を深く知る前はどこかで比べてしまっていたので、反省しなくてはならないしあとでちゃんと謝ろうと思った。
話を聞いて改めて思ったが、血の繋がった親子でもすべてを分かり合えることはない。自分も虐めを受けて両親に相談した時の、疑う目や信じられないと言った顔を、今でも忘れられずにいた。
後々力になってくれ支えてくれたが、どうしてもその小さな棘を抜けずにいる。恐らく彼女の棘も抜けることはないだろうけど、少しでもその痛みがなくなるよう自分も協力したいと思った。
職業:エルフの里代理総督
役職:エイレア(総督補佐官)
ヴァルドバ(食材調達班隊長)
士元勇太(モンスター討伐班隊長)
エイミー(総督補佐官)
ジンネ・ダーント・ミエナ(環境調査班)
ミケ・ザ・キャットとお供二人(資産運用班)
アルヴたちダークエルフ(モンスター討伐班)
パルダス(総督直轄兵)
騎乗馬:サジー(白毛の小さめの馬)
名産品:里の川魚の干物(予定)
人口:二百人
所持品
メイン武器:ソードブレイカー・右
サブ武器:ソードブレイカー・左
魔神の三又槍
防具:布の服・ズボン・革の靴(初期装備)
エルフのマント




