第百八十七話 異世界転生すると初めて経験することが多い
「一時期体調を崩していたのだが、なぜか薬を飲まずに回復したのだ。あの子は神にも好かれているらしい」
イリスが無事であることに安心しつつ、確証はないもののパックたちのお陰だろうと思った。
「とにかくこちらは今のところ心配はない。だがコーイチ、色々準備をしておいた方が良いかもしれん。直接的な攻撃は止められるものの、情報戦を仕掛けられると中々難しくてな」
暴君の独裁政権なら情報統制は可能だろうけど、タウマス王はそういう人ではないので、多数の意見を聞き入れない訳にはいかないことは分かる。
言葉から察するに近々で少しずつ、こちらを悪くするようなムーブメントを起こしてくる気がした。時間的猶予はないなと考え、もう少し話したかったものの通信を終えることにする。
「ご助言感謝したします政務に全力で当たり、一日も早い復興を目指しエルフ族に里をお返しします」
「互いのためにその方が良いだろう。私の予想としてはそう遠くないうちに、お前と対等に話せる日が来る気がしているよ。ではまたな」
どうかご壮健であられますようにと返し一礼して通話は終わった。ふぅと一つ息を吐いた後で、エイレアに感謝を告げて空を見上げ考える。
まだ具体的に明け渡す時期は分かっていないものの、撤退自体は決定事項だ。復興だけを終えれば任務完了、あとは民主主義で代表は決めてください、ではあまりにも酷いので自分の後継者的位置の人をどうするか、を早急に決める必要があった。
個人的には若くて人当たりも良く、ショックな出来事でも数日でリカバリーしてくる、さらには上層部の出身である人物が適任だとは思うが……。
「何?」
視線を向けると至って普通に聞いているものの、特定の意思が込められている気がする。気がするだけでそうとは限らないが、それを聞けば関係が悪くなる気がしたのでやめた。
初めて出会った頃と違い、最近は個人的にも代えがたい人になっている。じゃあ誰を候補にするのかと考えた時に、やはり里の上層部唯一の生き残りであり、人柄的にも問題なく王妃の父親でもある、アインスさん以外ないだろうと思った。
「お父さん、引き受けてくれえると思う?」
「どうかしらね。私じゃなくていいの?」
悪戯っぽく聞いているが目は真剣である。彼女は冗談で返すのではなく、ちゃんとした答えを求めているのだなと感じ、逃げずに自分が思っていることを率直に伝えることにした。
が、恋愛経験のないままおじさんになってしまった自分にとって、それは言うほど簡単ではないのである。とはいえここで逃げたら後悔するとは思っており、気合を入れるために深呼吸した後で
「悪いけど諦めてくれ。嫌かもしれないけど、エイレアには一緒に大変な思いをしてもらう」
そう目を見て言ってみた。言ってみたが後になって思えば格好つけているとしか思えず、黒歴史確定過ぎて逃げ出したくなってくる。
恋愛経験がないばかりに的確で素晴らしい答えを出せないから、独身で死んだりするんだろうなと自分に絶望しつつ、それでも尚彼女の目を見ていると
「ま、まぁコーイチがそういうなら仕方ないわね! 地の底まで付き合ってあげるわ!」
目を閉じ顎を上げながら腰に手を当て、わざと偉そうに言って答えてくれた。こんな時はどういうのが正解なのかわからず、変なイントネーションでそうかありがとうと言ってしまう。
一瞬目を丸くしてこちらを見た後でエイレアは笑い出し、こちらもつられて笑い始める。ひとしきり笑い終えた後で彼女はこちらに来て抱き着いた。
人生初が多い異世界転生の中でトップレベルの衝撃的な出来事に、どう対応していいかわからなかったが、思い切って彼女を抱きしめてみる。
どうやら不正解ではなかったらしく、突き飛ばされることもなくしばらく二人で抱き合った。不思議なことに今日まであった疲れとかが一気に吹き飛び、とてつもなくやる気に満ち溢れてくる。
……で、この後どうしたらいいのだろうか、と自分に問いかけてみたが、他人様の家でその、なんであるので、とりあえずここは一旦仕事に戻った方が良いのではないか、という結論しか出なかった。
職業:エルフの里代理総督
役職:エイレア(総督補佐官)
ヴァルドバ(食材調達班隊長)
士元勇太(モンスター討伐班隊長)
エイミー(総督補佐官)
ジンネ・ダーント・ミエナ(環境調査班)
ミケ・ザ・キャットとお供二人(資産運用班)
アルヴたちダークエルフ(モンスター討伐班)
パルダス(総督直轄兵)
騎乗馬:サジー(白毛の小さめの馬)
名産品:里の川魚の干物(予定)
人口:二百人
所持品
メイン武器:ソードブレイカー・右
サブ武器:ソードブレイカー・左
魔神の三又槍
防具:布の服・ズボン・革の靴(初期装備)
エルフのマント




