第百三十一話 夜に紛れた出会い
意味もなくそんなことをするとは思えず、皆が寝静まった頃に何かあったのかと聞くと
「来るぞ、嫌な感覚の奴が」
そう言って前方を指さす。しばらくして兵士たちの声とは別に甲高い声が聞こえ、間を開けてから誰かがこちらに向かって歩いてくる。得物の鉄の棒を握ろうとしたところ、荷車に置いていた魔神の三又槍が飛んで来て地面に刺さった。
手に取れってことかと思い立ち上がり手に取って切っ先を向ける。
「ヤダこわーい」
暗闇の中から焚火の火に照らされ現れたのは、黒のフリフリのドレスにリボンが多く付いた黒のブーツと篭手、蝙蝠の羽を背中に付け角が二つ付いたカチューシャを付けた、垂れ目だが目付きの悪い女性だった。
明らかに声色はこちらをからかっており、拳を握った両手を口に当てこちらを見ているが、まったく怖いと思っていないのは気配で分かる。パックが耳打ちして来たが僅かな殺気も感じた。
「こんな夜更けに何の用でしょうかお嬢さん。迷子ですか?」
「そうなんですぅ~朝までここにいさせて頂けませんか?」
「先ほど話していた兵士たちに言って町まで送ってもらえば宜しいかと」
「あら冷たいのね女性に。お嫌いなのかしら?」
「人によりますね」
「タイプじゃないと?」
「殺気を向ける相手が好みだという男ではありませんね自分は」
そういうと素早く両掌をこちらに突きだし
「火の玉」
言葉を発した次の瞬間、掌から文字通り火の玉が出てこちらに向かってくる。直撃すると思い焦ったものの、こちらに届く前に消え去ってしまった。
「喰らう訳ないだろ? コーイチはマナの木の騎士なんだからさ」
言葉とは裏腹にパックは驚いたようで、はーと溜息を吐いた後でそう言った。
「あらまぁ残念。どうやら竜を殺したって噂は本当みたいね」
「竜を殺したらその魔法は無効化出来るんですか?」
「知らないわよそんなこと。竜を倒すくらいなんだからそれくらいするんじゃない?」
彼女は金髪を掻き上げた後で毛先を摘まみ、弄りながらつまらなそうに答える。どうでもいいけど皆が寝ているので帰って欲しいと言うも、そう簡単に帰る訳にはいかないという。用件を早く言ってくれというと、手合わせをして欲しいと言って来た。
「悪いが断る」
「なぜ?」
「理由がないからだ」
「理由なんて何でもいいわよ。殺さずのコーイチだから私は安全だし、とにかくあなたと手合わせしたいのよ」
煽っているのか元々失礼な女性なのかは知らないが、女性と戦う趣味はないと返すと掌をテントに向ける。
「これでどうかしら? 私は悪い奴だから戦いましょうよ」
「やってみるといい。さっきみたいに消えると思うが」
先ほどのことを思い出したのか掌を下げ舌打ちをした。なんでこんな人に絡まれてるんだろうなと思いつつ、槍の穂先は相手の足元に向けたまま構えを解かない。
「魔法が無理なら直接攻撃しかないわね。あんまり運動は好きじゃないんだけどさ、戦ってくれないならそれしかないか」
「……こんなことを言いたくはないが、ここにはイリスも居るんだぞ? 彼女が怪我をしたらどうするつもりだ?」
こちらの言葉を聞いて目を丸くした後、女性はゲラゲラと笑い始める。先ほど魔法を撃とうとしたことからして、まぁ意味のない問いかけではあるが、これでイリスの味方でないことははっきりした。
「コーイチ、こいつ追っ払おうぜ! イリスが起きちまうよ!」
「そうよコーイチさん。その妖精の言う通り、私を力尽くで追い払った方がお互いの為よ?」
息を切らせながら笑い過ぎて出た涙を拭い女性はそう言ってくる。パックは普通の人間族には見えないはずで、それが見えているということは彼女は違うのか?
「……なるほどね、コイツは人間族ってだけじゃないな」
「そうなのか? パック」
「ああ、見た目はそうだけど恐らく魔女の血が混じってる。魔族に近い人間族だ」
冒険者ランク:シルバー級?
職業:二刀流剣士(初級)?
称号:マナの木の騎士
魔法:生命力変換Lv.5
冥府渡り(デッド・オア・ダイブ)Lv.5
魂斬り (ソウルスラッシュ)Lv.5
仲間:エイレア(エレクトラ王妃の妹のエルフ族)
ヴァルドバ(ワーウルフ)
士元勇太(元黒騎士)
騎乗馬:サジー(白毛の小さめの馬)
所持品
メイン武器:ソードブレイカー・右
サブ武器:ソードブレイカー・左
魔神の三又槍
騎乗時の武器:鉄の棒
防具:布の服・ズボン・革の靴(初期装備)
エルフのマント(裏面に魔法陣が隙間なく掛かれ、表はど真ん中にウロボロスのマークが入ったマント)
アイテム:エリナから貰ったリュック
(非常食各種、水、身分証、支援金五十ゴールド、地図、治療セット箱)
キャンプ用品一式
水晶の荒粒
追憶のペンダント(エレクトラ王妃から借りた物。マナの木の持ち物?)
砥石一式
鉄くずの入った袋
メメリカ草(痺れ消し草の粉末一袋)
皆とおそろいの裁縫セット(緑)
所持金:十三ゴールド




