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タイタニス




 世界から魔王の脅威は過ぎ去った。

 最後の英雄である武聖とその武器『タイタニス』によって魔王は打ち倒され、人々は一時の平和を取り戻した。




「ハルト、そこだ。ああ違う、そこじゃなくて……うん、良し!」

『どう? 傾いたりしてない?』

「大丈夫、完璧だ」

『良かった。それじゃ、僕は向こうを手伝ってくるよ』

「ああ、わかった」


 あの後、多くの人々の協力によってタイタニスに刺さっていた聖剣だったものは引き抜かれ、そして破壊された。タイタニス自身は僕が魔力を何日間か続けて注入し続けた事で自力で修復。戦いの道具だったタイタニスも、今ではヤマトの復興を手伝う重機として働いている。


 戦いの後、世界中は国を失い難民となった人々で溢れ帰った。残った国々は手分けして難民を受け入れていたのだが、限度というものは存在する。どの国にも受け入れて貰えなかった人々はその身一つで広い大地に放り出され、行く先を見失っていた。


 そんな中で、ヤマト最後の王族であるクシナダ姫は人々を束ねる御旗となってくれた。

 まず最初に、僅かに生き残っていたヤマトの人々が集まり、それを知った行く先を失った人々が集まってくる。段々とその数は増えていき、そして集まった人々でヤマトを復興させることになったのだ。


 ヤマトの地に戻ってきてからは、国を作り治すのに忙しい毎日だった。また人々が暮らすことが出来るように破壊された町を直し、孤立した地域が出来ないように各地の通信網の再整備を行い、そして国民一人一人の戸籍登録。幸いクシナダ姫以外にも、生き残っていたヤマトの民や難民の中に学のある人が居た為、ギリギリではあるがなんとかなった感じだ。

 他にも、人が少なくなった事で増えすぎてしまった魔物の駆除や、街道の整備で多くの人が駆り出され、そしてやっと国として成り立ちつつある。


 しかし一方で、例の問題も発生していた。





「ハルト。そなたに向けて、また来ていた」


 王城のクシナダ姫の執務室で、彼女から一封の手紙を渡される。封蝋の形を見るに、西の工業大国『ゲラルト王国』のもののようだ。

 封を切って中を見てみると、一通の手紙と一人の少女の顔写真とプロフィールの印刷された紙が入っていた。


「お見合いの誘いですね……断りましょう」

「そうか。相手はどんな奴なんだ?」

「断る相手なのに、知る必要がありますか?」

「いいから渡せ」

「わかりましたって」


 そう言って差し出すと、ひょいと引ったくるように彼女に奪われる。タイタニスの一件であんな事があったのだから当然かもしれないが、そこまで気になるものか。


「ふん、公爵家の令嬢とは大きく出てきたじゃないか。ゲラルトの奴もよくやるものだな」

「何処もタイタニスが欲しいのです。切れる札なら最高のものを切ってきますよ」

「全くもってその通りだ。やっと平和になったかと思えばこの様だからな。魔物との争いが終わったと思えば、今度は人間同士での土地と力の奪い合いさ」


 列強の軍隊ですらまともに戦えなかった魔王を相手取り、最終的には勝利した超兵器『タイタニス』。

 魔物の群れ程度ならものともせず蹴散らし、軽く一つの丘を焦土へと変えてしまう程の力を持つ唯一の存在。


 こんなものを持つ国に、他の国が逆らえる筈がない。

 数々の国が滅び、残りの国で空いた土地の奪い合いになりかけている今、タイタニスを手にしている国がどれほど有利になるか。

 例え全ての土地を手に出来なくとも、資源が潤沢であったり、作物が育てやすかったりするような重要な土地さえ手に入れられれば良いのだ。欲しい所だけを一個ずつ、確実に手に入れていく。タイタニスを持つ国ならば、その横暴を通すことが可能なのだ。

 しかし、タイタニスのみを手に入れても意味が無い。なぜならタイタニスを動かせるのはこの世で僕、ただ一人だからだ。タイタニスの仕様上、腕輪が無ければ搭乗することすら出来ず、無理矢理乗り込んだとしても今度は内包する魔力が足りず、動かすことも不可能だ。最悪の場合は、無理にタイタニスの身体にあわせて内包魔力と精神を引き伸ばした結果、身体の内側から弾け飛んで死ぬかもしれない。


 だからどの国も僕を手に入れようと必死になっている。王族や貴族などの地位のある美しい女性を僕の嫁として宛がい、僕とタイタニスを同時に手に入れてしまおうという魂胆だ。最初こそ、突然綺麗な貴族の少女との見合い話を振られて驚いたが、今ではもう驚きもしない。


「もう、タイタニスは封印しましょう」

「封印って………どうするんだ。タイタニスの腕輪をそなたが持っている以上、封印など不可能だ」

「各国に連絡をした上で、僕とタイタニス、二つを同時に封じ込めてしまえば良いんです」

「何を馬鹿な事を………冗談でもそんな事言わないでくれ」

「僕は本気です」


 ふざけてなどいない。

 平和を護るために、僕とタイタニスは存在しない方が良いことは明白。戦いが無くなれば、新たな戦いの火種となるような強力な兵器は毒でしか無い。


「はぁ……わかった、この件は私がどうにかするから、ハルトは普通に生活していてくれ。急に居なくなられると困る」


 彼女はそう言うが、そう簡単に解決する問題でも無いだろう。彼女もこの問題には胃を痛めており、出来るのであればとっくに解決しているはずだ。

 だが、僕とタイタニスが居なくなる事が、かえって彼女の負担になってしまうのではあれば封印という手段も取れない。


「ある意味、魔王と言うのは抑止力だったのかもしれませんね」

「……そうだな。事実、各地で魔王軍が大暴れしていた間は、国同士での争いなんて有り得なかった」

「まあ、彼は言葉通り人類という一つの種を滅ぼそうとしていたのですから、抑止力なんて大層なものであるはずが無いんですけどね」

「でも、そうした見方をするなら効果は覿面だった」


 その時だった。

 彼女は何か思い付いたように世界地図を取り出し、各地に✕印や斜線を引き始めた。そして、現在残っている国から次々と線を引いていき、地図上のある一点に星を描く。


「ここだ」

「ここ、ですか? 確かそこは標高4000メートル級の山々が連なった地帯で、開発の手は入れられていなかったと思うのですが……」

「だから良いのだ。あの数ヵ月間、世界中の隅から隅までを移動し続けたタイタニスに、この程度の山など問題にはならないだろう? それに、この地点は現在残っている国々から直線距離でほぼ同じ距離に位置している」

「クシナダ姫……まさか」

「そうだ。実行に移すにはそれなりに時間もかかるだろうがな」


 彼女は地図の上に片手を置いたまま椅子から立ち上がり、もう一方の手で力強く握り拳を作った。



「ここに、世界を繋ぐ抑止力を作る」




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