ティッシュと銃
当て無し果無し笑い話し〜っと。
んー本当に言葉通りになってるな。命に直結する可能性がある以上笑い話にはならないけど、笑うしか無い。
マジでどこに行けば防弾チョッキが手に入るのか分からなくなった。
これはもう防弾チョッキは諦めて別の物を調達する方が楽なのかな?
でも銃弾を防げるだけの物なんてそうそうあるものじゃ……そう言えば昔、なんとかの泉って番組で身近にある物を使ってそれがどれだけあれば銃弾を止める事が出来るのかっていう検証をやっていたな。
あれ、何を使ってたんだっけ。結構大量に用意していた気がするんだけど、思い出せない。
誰にでも大量に用意出来て、銃弾を止めるだけの効果があって、身近にある物と言えば……小銭?文房具?スマホ?
あ!思い出した!あれだ!ティッシュだ!
ポケットティッシュか何かを千枚ぐらい重ね合わされば銃弾でさえも止めれるって検証結果が出てたな。
よし。近隣の店舗からティッシュを拝借して試してみよう!
おぉふ……これは中々……
とりあえず集まれるだけティッシュを集めて服の中に詰めてみたが、滅茶苦茶圧迫される。
最初は心臓部分を守る為に胸回りを中心にティッシュを詰めてたんだけど、そうすると変に胸回りが出っ張って男なのにおっぱいがあるような見た目になって気恥ずかしかったからそれを誤魔化す為に腹回りにもティッシュを詰めた。
すると今度は関取みたいな巨漢、と言うよりは胴体だけ箱みたいな見た目になってしまって、これもなんか不恰好だったから最終的に全身余すところ無くティッシュを詰めたらなんかもう、とにかくパンパンになった。
少しでも体を動かすと服とティッシュが擦れてギチギチ変な音を立てるし、四肢の可動域もかなり制限されてまともに動けたものじゃない。
この感じなら確かに防御力はそれなりにありそうだけど、その代償に動きにくくなるんじゃ意味が無い。
これなら全力で逃げた方がまだ被弾によるダメージは回避出来そうだしな。
てな訳で折角ティッシュを詰めたんだけど意味が無さそうだから全部取り出して……
「ゾ、ゾ、ゾンビだ!しかもあいつ他の奴と何か違うぞ!変異種だ!」
え?何?
声のした方向を見ると、80mぐらい先に男性が一人立っているのが確認出来る。
でもあの物言い、他にも誰かいるような感じが……
「変異種だと!?おい、どこだ!」
「あそこだ!少し先のドラッグストアの前に居る奴だ!」
うわ。居たよ。最初に叫んだ男性は長身で細身の体型なのに対し、出てきた男は服の上からでも分かるぐらいの筋肉質な体つきをしている。
あの手の人間は厄介なんだよなぁ。
何をするにしても能力が高いから出来れば一番関わりたく無いタイプの人間だ。
「双眼鏡を貸せ。……確かに妙だな。あのゾンビ、変に体が膨れている。あんなの初めて見たぞ」
「やっぱり現実のゾンビも変異するんだよ!絶対あいつ頭とか吹き飛ばしたら中から触手みたいなのを出してくる!」
酷い言われようだ。確かに今の僕はティッシュを服に詰めているせいでパンパンに膨れ上がっているが、別に変異種とかそんな特別な存在じゃない。
ついでに言えば触手だって持ってない。
ゲームのやり過ぎだぞ!
「触手なんて物を本当に持っているかどうかはともかく、警戒はしないといけないな。幸いこっちを向いてはいるが、まだこちらの存在には気づいていないようだ」
「に、逃げよう!いつ俺達に気づいて襲ってくるか分かったもんじゃない!もしあいつがこっちに近づいて来たら声でバレちまうよ!」
残念だけど君達の存在には既に気づいているし、会話の内容もハッキリ聞き取れている。
ゾンビの五感を舐めちゃ駄目。
僕が二人の存在に気付きながらも襲いに行かないのはこれだけ距離が離れていれば殺人衝動には狩られないからだ。
15m以内に近づかれるとどうしようもないけど、その倍以上なら別に問題はない。
だから、早いとこどっかに行ってくれないかな?
本当なら僕の方からさっさとどっかに行くところだけど、今のこの状態じゃ歩くのですら難しいからさ。
「いや、逃げる必要はない。あれを車から持って来てくれ。折角だ。アイツで試してみよう」
「おいマジかよ!?今なら何事も無く逃げる事が出来るんだ!変に関わる必要なんか無いだろう!?」
「だからさ。もしアイツが本当にお前の言う変異種とやらなら今のうちに殺しておいて損は無いだろう?そうでなくてもゾンビは一体でも少ない方がいい。違うか?」
「……いや、違わねぇ。分かった。今取ってくる。だが無茶はしてくれるなよ?」
「勿論だ。あぁそうだ。ついでにエンジンもかけておいてくれ。何があってもすぐに逃げれるようにな」
「了解。少し待っててくれ!」
待て待て。
なんだか会話がきな臭くなってきてないか?
あいつら一体車から何を持ってくるつもりだ?
まさか銃じゃないよな?違うよな?
何にせよ早いとここの場から逃げないとヤバそうだ。
詰めたティッシュを放り捨てて……
「おい!急げ!お前の言う通りあのゾンビ、変異種だ!体から白い卵を大量に出してる!ヤバいぞ!何をしてくるか検討もつかん!」
ちょっ!違う!これティッシュ!ポケットティッシュ!卵とかじゃないから!
双眼鏡持ってるんならよく見て!
「ヤバいヤバいヤバいヤバい!ほ、ほら!持ってきたぞ!早くやってくれ!」
「おう!お前は車に戻って運転席でいつでも発進出来るようにスタンバイしておけ!アイツを殺ったら俺もすぐに行く!」
「わ、分かった!頼んだぞ!」
「ふん……これでも食らって成仏するんだな!」
ストーーーーーップ!
マジで銃を持ち出してきやがった!
しかも狙撃銃じゃないか!
これ逃げないとホント死ぬ!
全てのティッシュを捨てる余裕はもう無い!
ズボンに詰めたやつだけ捨てて逃げよう!
「食らえ!」
うわっ!?マジで本物の銃かよ!?
後ちょっと左に居たら撃ち抜かれてたぞ!?
「チッ。外したか。だが次こそは!」
無くていいから!次は無くていいから!
「クソっ!当たらねぇ!これでどうだ!」
そんな連発しないで!怖い!
「チッ。初めて使う銃だからか上手く狙いが定まらないな。心なしか手も震えてきてる。落ち着け。落ち着け……」
……よし!ズボン中は空になった!
これで下半身は完全に自由だ!
そうとなれば速攻で撤退開始!
「流石にこっちに気づいたな。いいだろう。こちらに向かって来る所を狙って……あ?」
誰がそっちに行くもんか!
わざわざ死にに行くような馬鹿な真似、するわけないだろう!
ここは上に屋根が無いタイプの商店街。
ゾンビの脚力を活かして、お店の屋根まで飛び跳ねてそのまま屋根伝いに逃げさせて貰うぞ!
あばよ!とっつぁん!
「逃げた……のか?ゾンビが?命惜しさに?しかも凄い上に飛んで行ったぞ。一体どれだけの脚力があれば屋根の上まで飛べるんだ?あのゾンビは一体……」
近々番外編を投稿しようかなと考えています。
主人公の霧山一視点では無く、これまで出てきた生きた人間視点で。




