第四話裏設定
<第四話の時系列>
第三話終了から数日後。
フィリアは雪解けの進む山道を旅していた。
その途中、小さな村へ辿り着く。
村外れで花畑を管理する老人オスカーと出会う。
花畑の美しさに惹かれたフィリアは、その村へしばらく滞在することを決めた。
滞在期間は13日間。
その間、フィリアは毎日花畑へ通い、オスカーから花の育て方や妻リリーとの思い出、そして人生についての話を聞く。
滞在11日目。
オスカーは体調を崩し、自宅で寝込む。
フィリアは見舞いに訪れ、オスカーの人生と花畑について最後の長い会話を交わした。
12日目、オスカーは眠るように息を引き取る。
13日目、村人達に見送られながら葬儀が行われる。
葬列の途中、花畑は満開を迎えていた。
そこで村人達は花畑を守り続けることを決意する。
フィリアはそのまま、村を後にした。
<花畑の老人>
名前:オスカー
享年:74歳。
村外れの花畑を管理している老人。
元々は木こりで花については全く興味がなかった。
若い頃の口癖は、「花なんか腹の足しにならん」だった。
本人も認めている。
名前:リリー
享年:52歳
オスカーの妻。花が大好き。
特に春の花が好き。村の空き地を勝手に花畑へ変えた前科がある。
村長に怒られた。
しかし翌年、花が咲いたら村長が一番喜んだ。
オスカーとの間に子どもはできなかったが、それでも2人仲睦まじく過ごしていた。
しかし、50を過ぎたころ倒れた。血液の病気だった。
この世界の医学水準では治すことは不可能だった。
少しずつ弱っていった。
だからオスカーも覚悟していた。
覚悟しているつもりだった。
実際は全くできていなかった。
葬儀の日。花畑へ行った理由も、本当は花の世話ではない。
家にいたくなかっただけ。
家のどこを見ても辛かった妻を思い出してしまうから。
名前:エドガー
年齢:72歳
この村の村長。
オスカーとは若い頃からの付き合い。
酒飲み仲間。
喧嘩仲間。
仕事仲間。
そして親友。
若い頃はオスカーより短気だった。
村の揉め事も大体この二人が原因。
本人たちは否定する。
家にフィリアを泊めていたが、食事代以外は受け取らなかった。
オスカーが久しぶりに楽しそうに笑うようになったからだ。
エドガーは気付いていた。
フィリアが、親友の残された時間を少しだけ明るくしてくれていたことに。
<花畑の始まり>
最初は本当に小さかった。
家の前の花壇程度。
リリーが少しずつ増やしていった。
10年。
20年。
そして30年。
気付いたら花畑になっていた。
オスカー本人も驚いていた。
<実は村の名所>
作中では語られていないが、春になると遠方の方からも人が見に来る。
子ども達の遊び場でもある。
若者達の告白場所にもなっている。
村人はそれを知っていた。
リリーは知らなかった。
オスカーは知っていた。
<オスカーが泣かなかった理由>
強かったからではない。
泣けなかった。
現実感がなかった。
だから村人達は後を追うのではないかと本気で心配していた。
<オスカーを救ったもの>
花畑、ではない。
花畑へ来る子ども達。村人達。
そして毎年春が来ることだった。
だからオスカーの人生観は「必ず春は来る」に集約されている。
<オスカーはフィリアに気付いている>
初日から気付いている。
この娘は、人との別れに慣れすぎている、と。
だからオスカーは一度も「君は何者だ」と聞かない。
聞かれたくない過去だと思ったから。
オスカーはフィリアを見て、若い頃のリリーを思い出している。
同じように知らないことへ興味を持つ。
同じように人の話を聞く。
そして、同じように花が綺麗だと言う。
だからオスカーは自然と心を開いた。
<オスカーの死>
本人は二ヶ月前から悟っている。
医者にも言われていた。
今年の春は難しいかもしれない。
だから満開を見ることは諦めていた。
しかし後悔は無かった。
なぜなら、花はまだ途中でも春は来たから。
<最後の日>
実は、すでに余命宣告の2か月を過ぎていた。
ここまで持ったのはフィリアの存在だった。
毎日花畑に来てくれる旅人の子。
フィリアとの会話。
あれが最後の長い会話だった。
だからオスカーは実はかなり嬉しかった。
旅人が花畑の話を聞きたいと言う。
妻の話を聞きたいと言う。
忘れられなかった。
だからずっと話した。
天井を見ながら、夜中まで思い出していた。
<最後の言葉>
誰も聞いていない。
最後に呟いたのは。
リリー、春が来たぞ。
だった。
<葬式の日>
花が満開になったのは偶然ではない。
数日前から咲き始めていた。
オスカーは最後の会話で言っている。
「もうそろそろ満開です」
つまりあと少しだと本人だけは知っていた。
<フィリアが泣いた理由>
オスカーが死んだからではない。
助けられなかったからでもない。
初めて、「助けることだけが救いではない」と思えたから。
救済とは何か。
その答えを少しだけ理解できた。
だから泣いた。
<「守ろうと思う」少女>
両親は昔リリー本人に花を教わった子だった。
少女の両親は花畑で告白し結婚した。
少女はまだ知らない。
けれど、花畑は世代を超えて残っていた。




