第5話「了解、ボス」
ゾンビだって?
「ゾンビだったらもう少し死者がいるんじゃないか?ニュースだと1人だったぞ」
「なんでも、検閲されているのだとか」
検閲だと?
「検閲は憲法で禁止されてるはずよ」
「そうだ。これまで発生したパンデミックはすべて公表されている。ナイジェリア感染、メイン事件、中欧事件」
バーテンダーがコトッとグラスを置く。
そして次を拭く。
「さあ、ただの噂ですよ。私にもわかりません」
遠くからバーテンダーを呼ぶ声がして、バーテンダーはここを離れる。
「噂か?」
「どうする?切り上げて帰る?」
「飛行機のチケットどうするんだ、すぐには取れないぞ」
「船で日本にいったん行くのはどう?」
俺は携帯端末を取り出す。
調べてみよう。
「あった」
「え?」
「毎週土曜に上海を出て、月曜に大阪に着く」
「明日じゃない!」
「いや待て、もしこの船の中にゾンビが出たら?」
「あっ」
「それにこのスケジュールだと大阪に着いたら飛行機に乗らないといけないな」
「どうするの?」
俺はゴッドファーザーを一口飲む。
「ヴィクトリアに決めてもらおう。どの道、あの子を守ることに変わりはない」
空のグラスを机に置いた。
俺達はその後、2,3杯ほど飲んで部屋に戻って寝た。
翌朝。
ひとまずはテレビをつける。
昨日の暴動が内容変わらず流れていた。
「ヴィクトリア。昨日のニュースが、思っていたより大きくなっているらしい。ここは危ない」
ヴィクトリアは朝から元気な子だ。
窓から朝日を浴びている。
「ここから日本の大阪に行く船が今日出る。それに乗るか、ここでまだ観光するか、どっちがいい?」
「まだいる」
ヴィクトリアは両手を広げ駆け寄る。
ヴィクトリアを抱きかかえ、ミロスと目を合わせた。
「了解、ボス」
そして頭を撫でた。
2か目の予定はテーマパークだ。
世界危機以降、子供の需要、供給は爆発的に増加した。
現在、北アメリカ地域の合計特殊出生率は4を上回っている。
そこで発生するのが、子供向けの商品の需要だ。
特に大人は必需品を生産しなければならず、ほぼ全員駆り出されている。
世界危機以前から子供向けの娯楽を提供しているD社は、子供向け娯楽のシェアがトップとなっている。
ヴィクトリアもその虜だ。
俺は労働者の必需品である酒を提供することで儲かっている。
入り口のゲートには長蛇の列が出来上がっていた。
あのうわさが本当なら、来るべきじゃないんだが、ただの噂であればいいが。
チケットは既に予約している。
チケット購入の列もあるが、そこに並ぶ必要はない。
俺達は、列の最後尾に並んだ。




