第4話「乾杯」
その後、俺達は豫園を訪れ、ホテルへと戻った。
「凄かったな。ヴィクトリア」
俺はベッドに腰かけ、ヴィクトリアの頭を撫でる。
ヴィクトリアが笑顔を見せてくれた。
カーテンが開く音。
ミロスが開けた。
夕方の空に、ビル群の光が宿る。
「凄い、ニューヨークより凄いかも」
「ああ、さすがの人口だ」
俺は近づき、ガラスに腕を付ける。
「世界危機以降、ビルの空室は問題になったそうだが、ここは問題ないな」
ビルの明かりが、煌々と網膜を照らす。
テレビの音が流れる。
「今日午後3時頃、南京市にて暴動が発生。警察当局の発表によると負傷者が135名、1名死亡しているとこのことです」
「南京ってどこだ?」
俺はテレビを見る。
「ここの近く」
死亡者の出ている暴動か。
「これは気を付けないとな」
「カルヴァと私なら大丈夫よ。7年前を思い出して」
「そうだな、メイン事件を乗り越えたんだ。体がなまっていなければいいんだがな」
7年前、俺はミロスとゾンビパンデミックを経験している。
殺人鬼との死闘も、自分がクローンであることのショックも。
ミロスとなら、どんな危機も乗り越えられるだろう。
結婚した理由の一つだ。
夕食後、俺とミロスはヴィクトリアが寝たのを確認してから、ホテル内のバーに行った。
バーに行くことは伝えている。
円形のカウンターに、椅子が並んでいる。
他には机とテーブル。
なるほど、悪くない。
俺は『ゴッド・ファーザー』を、ミロスは『テキーラ・サンライズ
』を頼んだ。
しばらくしてドリンクが出される。
「乾杯」
そして飲む。
とろみのある甘さが舌を刺激する。
スコッチとアーモンド風味の香り。
「おお、ちゃんとスコッチを使っている。分かってるな」
「美味しい!」
バーテンダーがパフォーマンスをしているのが目に入る。
良い動きだ。
「ねえ、カルヴァもああゆうのしないの?」
「うちの店の客は大半が地元の客だからな。あんなのやんなくても客は来る。メイン事件で離れていた時、ホテルのバーテンダーしてた頃はやってたがな」
「えっ、じゃあできるの?」
「おいおい、もう7年前だぞ。さすがにできないだろう」
「残念」
バーテンダーが会話に気付く。
「あなたもバーで働いているんですか?」
顔を見上げ、バーテンダーを見る。
「ああ、北アメリカ地域のメイン区、そこそこの町だ」
「彼女も?」
俺はちらりとミロスを見た。
「いやあ、彼女はたまに手伝ってくれるだけだ。別で働いてる」
バーテンダーはグラスを拭いている。
「そうですか、ところでメイン区といえば7年前に」
「ええ、そう。メイン事件」
「大変な思いをしたのでしょう。先ほど妙な噂がありまして」
「ほう、どんな?」
メイン事件と「うわさ」の関連か。
「南京で発生した暴動がゾンビではないかということです」
そんな予想はしてた。




