第3話「ではチェックインをお待ちしております」
電車が動き始めたのはおよそ1時間後だった。
ゆっくりと駅に停まる。
俺達は電車から降りる。
話し声がする。
「あいつおかしかったよな」
「そうだよな、電車も気が付かなかったし。急に立ち止まって変な姿勢になったし」
「薬でもやってたのか?」
「さあね、でも。もうあの光景は見たくないね」
「そうだな、でもまあ、ここ10年でゾンビが3回起きてるからな、時間の問題かもな」
俺は声がする方を見るがすぐに進む方に向き直った。
駅の外に出る。
「とりあえずホテル行って荷物預けてから、飯を食べよう」
「ええ、そうしましょ」
「ヴィクトリア、疲れてないか?」
「大丈夫」
ヴィクトリアはそう言うが、明らかに疲れている。
「というより、俺達も疲れが出てる。ポートランドを出てから20時間の長旅だぞ」
「そうねそういえば飛行機あまり乗らないものね」
俺はキャリーケースを引っ張った。
ホテルに着く。
高くそびえるビルがそこにあった。
自動ドアが開き、綺麗なラウンジが出迎える。
俺はカウンターで男性のスタッフに予約メールが写っている携帯端末を見せる。
「今日から予約しているカルヴァジュロンだ」
「しばらくお待ちください」
スタッフは端末を操作する。
「3泊、3人でご予約のカルヴァ様ですね。チェックインにはまだ早いですが、お荷物のお預かりでよろしいでしょうか?」
「ああ」
カウンターの脇からスタッフが出てくる。
スタッフはキャリーケースを2つ持ち、奥に行ったのち、すぐに戻ってくる。
「お子さんのお荷物はどうなされますか?」
ミロスがヴィクトリアに目線を合わせる
「どうする?ホテルに置いてく?」
ヴィクトリアはバッグを背中から下ろし、ミロスに渡した。
ミロスは受け取ると、それをスタッフに渡す。
「よろしく頼む」
「かしこまりました」
スタッフはバッグを受け取ると、また奥に消え、戻ってくる。
「ではチェックインをお待ちしております」
俺達はホテルを出て、ランチへと向かった。
小さめの回転テーブルの上には中華料理が並んでいた。
つやのある、焼かれたチキンレッグに、真紅の豆腐スープ。
純白なライスに黄金のタマゴスープ。
美味そうだ。
「おいしいわねこれ」
赤い豆腐を皿に盛り、口へ運ぶ。
「このトーフだいぶ辛いぞ。ヴィクトリアが食べるにはまだ早いんじゃないか?」
「一口食べて大丈夫だったら食べる」
ヴィクトリアは豆腐スープを食べた。
「それってもう食べてない?」
慌てて水を飲むヴィクトリア。
それ以降、ヴィクトリアが豆腐スープに手を出すことはなかった。




