第27話「この人は有名な人だぞ。民族主義者だ」
砂浜。
リゾートのような感じじゃなさそうだ。
浜には海藻が打ち上げられており、きれいにはされていない。
ゴミも多く落ちている。
だが人が落ちてはいない。
遠くに小屋が見える。
漁師のための休憩小屋か?
ぼろい木製の小屋だ。
俺は気になって小屋の隙間から中を除いた。
誰かいる様子もなさそうだ。
ドアだ。
若干さびているが南京錠がある。
だが、カギはされてなく、だらしなく南京錠が釣り下がっていた。
俺はドアを開け、中に入る。
外から見た通り、中もぼろい。
隙間から光が漏れている。
その中に服が落ちていた。
赤いワイシャツだ。
俺は加山からもらった写真を取り出す。
赤いワイシャツだ。
この中国人の男は打ち上げられてここに来た。そしてここにきて多分濡れたワイシャツが気になったのだろう、ここで脱ぎ捨てた。
食料と水を求めてるはずだ。
民家を頼るだろう。
だが、さっきの様子で受け入れられるのか?
とりあえず一番近い民家に行ってみるか。
呼び鈴を鳴らす。
中から同じくらいの青年男性が現れる。
「この男を知らないか?」
男は写真を手に取り、しばらく黙る。
「この人は有名な人だぞ。民族主義者だ」
「民族主義?」
「ああ、確かソン・ワオユウという名前だ」
「ソン。この島でその人を見なかったか?」
「ああ、昨日近くの公園で演説したよ。今日もいるんじゃないかな」
「ありがとう。初めて親切な人に出会った」
「ああ、中国人以外の人が来るのは珍しいからね」
俺は手紙を返してもらい近くの公園へ向かう。
公園、どこだ?
聞けばよかった。
まあ、地図があるからいいか。
俺は携帯端末を取り出し、地図を開く。
公園、あった。
丘の上にある海の見える公園だろう。
少し遠いが問題ない。
やっと公園についたが、やはり大きい公園のようだ。
門があり、塀がある。
中に入ると民衆が騒ぎながら集まっていた。
集団の中心には写真で見たのと同じ人が立っていた。
俺は加山にメールを送る。
しばらくして、ヘリがやってくる。
そこにいた群衆は一斉にヘリのほうを見る。
ヘリが着陸すると、中から加山が出てくる。
「ワオユウ!大丈夫だったか!」
ソンはそれに気づくと両手を広げ、加山に近づく。
「加山!私は無事だ!船が転落したときはどうなるかと思ったけどね!」
「さあ乗ってくれ!準備は整えてある!」
加山はソンの手を取ると、一気に引き上げ、ヘリに乗せた。
俺もヘリに乗り込む。




