第20話「嵊泗県を殲滅後、上海への浸透作戦は行わない」
「言ってよかったんですか?」
キムがカルヴァに小声で言う。
「聞こえているし。問題ない」
マイケルは後ろを向きながら言う。
「それは?何故です」
「我々は警察でもなければ、憲兵隊でもない。俺だけ見たあらゆる事象は俺の判断で処理できる」
「そうなんですか?」
キムが不安そうに聞いた。
「ああ、あれは粗悪品だ。テロリストが準備のため輸送したんだろう。アメリカ人は関係ない。・・・そのおびえようだとあんたも関係ないだろう。もっとも、行動するなら500を超える武装した軍人が銃を向けるぞ。我々は警察ではないからな」
マイケルはそう言うと、カルヴァの元から去って行った。
50人の部下が、テントを設営し終えるところに、マイケルは戻ってくる。
テント設営を仕切る、部下の1人に話しかける。
「テントの設営は終わったか?」
「ええ、9割方」
マイケルは上空写真を広げる。
コンテナを1つ囲うように丸を書く。
「ここに銃がある。鹵獲しよう。ここに持ってきてくれ」
軍人は敬礼し、部下に叫ぶ。
「全員集合!」
10人の軍人は集まる。
「テロリストが密輸入したライフルを見つけた。ここにできる限り輸送するんだ。付いてこい」
その男と10人の部下は、その場を離れていく。
マイケルもその場をはなれ、少し大きな幕営に入る。
1夜明ける。
朝7時、軍人が1列に整列し、銃を構え前方を警戒していた。
マイケルは小型の無線機を取り出し、スイッチを入れる。
「第5隊、整列完了」
「了解」
無線機の向こうから男性の声がなる。
「全部隊の整列を確認。前進を開始せよ」
無線機の周波数を変える。
「前進開始だ」
遠くから声が聞こえる。
「前進しろ!」
軍人の前線が動き出す。
軍人たちはただ前に進み、ゾンビを発見次第弾丸を放つ。
ゾンビは軍人たちに気づくより先に倒されていった。
マイケルはコンテナ港に戻ると、ひときわ大きい幕営に入った。
「第5隊。前進を開始しました」
マイケルは敬礼する。
「こちらは計画通りだが本部より通達があった」
椅子に座ったマイケルより少し年上の男性が言う。
「嵊泗県を殲滅後、上海への浸透作戦は行わない」
マイケルは驚いた顔をする。
それはほかの軍人も同じだった。
「第1隊、第2隊、第3隊については計画通り、避難民の受け入れと嵊泗県の警備を行う。第4隊、第5隊に関しては上海に個別肉弾し、生存者を各個救助する。それ以外の隊は上海港を奪取する」
「本気ですか?」
「上の判断だ。仕方ない」
「計画では増援が来るはずでは?」
「増援は来ない」
「上の判断ですか?」
「そうだ」
「でもなぜ?」
「世界中の都市で、小規模なパンデミックが発生しつつあるからだ」
その場の全員に衝撃が走る。




