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黒い光に照らされて。  作者: ユウソン


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第四話 夏日

喫茶店の角の席と言うのは俺の中でかなり落ち着く場所なのだ。特に疲れている時に座るとクッションの柔らかさ、コーヒーの匂い。とても落ち着く。気がしてた。


「あの、顔色悪いですけど大丈夫ですか?」

女性にそう言われた事に関して、

(当たり前だろ!)と言いたくなる気持ちを抑えて「あぁ、まぁ大丈夫です。」と答えた。

昨日、例のニュースを見てから謎の電話に掛け直し、約束を取り付け今日に至る。

どうやら彼女は、失踪事件、もとい、今回の殺人事件の被害者の親友にあたる人物になる。

「それで、相談というのは。」

流行る気持ちを抑えられずにいきなり本題に入る事にした。

「実は、最後に会っていたの私の可能性があって。」

(最後?銀行か?あ、いや、そういえばスーパーで車が見つかったんだっけ。)

「スーパー…。ですか?」


「はい。」


それがいったい何だと言うのだ。

もしかして何かいつもと違う動きでもあったのだろうか。

「その時何か?」

一応聞いてみるかと思い端的に返した。

「いえ、特には。普段通りでしたので。ただ、不倫調査?で探偵さんにお願いした事を聞いていたので、その話を少ししたぐらいで。」


「いったいどんなお話を?」

事件とは関係が薄そうだなと思ったが、一応続けた。

「もう後は夫に調査報告書を叩きつけて、ゴネたら裁判するだけだと。こう言うのもなんですが、結構スッキリしてそうだったので、自ら失踪はありえないと。そう思ってもしかして探偵さんが事件を解決しようとしていたら役に立つのかなと…その矢先に…こんな事に…。」

少しずつ言葉に詰まりながら涙を浮かべる彼女を慰めた。だが、探偵は警察ではないのだ。映画やアニメ、ドラマの様な殺人事件を解決したり、未解決事件を推理したりしないのである。が、彼女が楽になるならと一応最後まで話を聞いてみる。

「なるほど。わざわざありがとうございます。

ですが、我々探偵は事件になってしまった事に関しては警察よりも捜査力や情報収集、権限などかなり劣ります。どちらかと言うと警察に相談された方が良いのかなと。」淡々と事実を述べ、自分達が無力である事を伝えたが、


「警察に相談すると最後に会ったのが私なので、容疑者になってしまうのではないかと怖くて…。」


ッチッ。心の中で舌打ちをした。

人の死より自分の保身かよと思ったが、まぁ俺も面倒ごとはごめんな性格なので気持ちはわかるなと。

「そうでしたか。でも、警察もそこまで無能では無いので、あなたが犯人でないことぐらいすぐに分かりますよ。一度相談してみてください。」

怯える彼女にそう促して、ダメ元で聞くだけ聞く事にした。

「ちなみにその時怪しい人物とかは見ていないですか?」


「いいえ、特には。…あ、でもすごく顔の怖いというか、見てくれの怖いヤクザ?の方ですかね?は、見ました。駐車場の中に何人か居たので少し印象に残っています。」

ヤクザが一般人を、全くの素人を手がけるとは思えない。例の依頼人はどこからどう見ても普通の主婦と言う感じなのだ。

そもそも、ヤクザだとか、反社だとかの見分けもついているのか微妙だ。人を見た目で判断するのは良く無い事だ。

「そうでしたか。分かりました。後は特にご相談したい事などありますか?」

多分この人の目撃情報に有益さは無いだろう。

そう思い、話を切り上げる事にする。


店を出てからすぐに家に帰る事にした。

昨日から、気分が落ち込んで仕方ないので籠ることにしようと決めたのだ。

ボロボロの軽自動車に乗り込み、窓を開けて走り出す。(あ、そういえば回覧板が回ってきてたな。帰ったら回すか。)そうして考えつくだけ無駄な事を考えながら帰路に着く。

家の近くのコンビニによりタバコを買って外に出ると見慣れた姿がこちらに歩いてきた。

後輩だ。

「よう。今から家行こうと思ってたんだ。」

暇なのか?そう思いながら言う。

「今日は仕事無ぇぞ」

そう言うと後輩は顔をくいっと後ろの方に回すようなジェスチャーをする。

俺が意図を察して後ろの方を覗くと、後輩の車の助手席に男が乗っていた。

「誰だ?」

片眉を上げながら聞く。

「俺の後輩。なんか、彼女の身辺調査して欲しいのだと。」

彼女って…。



「んで、彼女の何が知りたいんだ?」

アパートに戻り、コンビニで買ったタバコに火をつけ事務部屋で俺の正面に座る男に聞いた。

コイツは後輩の中学時代の後輩にあたるらしい。

見た目はヒョロヒョロ。髪型は最近の若いやつが良くやるマッシュ?みたいな名前のパッとしない男である。コイツのことはマッシュと呼ぶ事にした。

「彼女が最近連絡を返してくれなくて…。仕事が忙しいと言ってるのですが、前までそんな事無かったんです。」情けない表情でマッシュは言った。

「愛想尽かされたんじゃねぇの?」

そう言うと、「そんなぁ」とマッシュはまた一層情けない表情で言うのである。

「結婚前提なのか?そもそも本当に彼女か?たまに居るんだよ。勘違いストーカーってのが。」

事実、たまにこういう依頼はある。

だいたいは、未練たらたらの男女の半分ストーカーみたいな依頼で、これも法律的にはグレーにあたるので俺は断る事にしている。

「ストーカーじゃありません!本当に心配なんです!もしかしたら何かに巻き込まれてるかもと。」


はぁ〜。と大きめのため息をついて後輩を見る。

後輩も少し面倒臭そうな顔をして俺を見る。

(お前が連れてきたんだろ。)そう、思いながらも話を続けた。

「まぁ良いよ。調べるだけ調べてやるよ。ただし、少しでもお前のいう事に矛盾や怪しい所を感じたらすぐに調査は打ち切るからな。それでも動いた分は金払えよ。」そう言って彼女とやらの情報をもらい、調査を約束したのである。


マッシュを家から追い出した後、特にやる事も無かったので、身辺調査の事前準備にかかる。

「アイツ本当にストーカーじゃねえだろうな?」

荷物をまとめながら、彼女のSNSをチェックし、後輩に声を掛ける。

「嘘つくタイプじゃ無いからな。俺も最初は断ったんだけど今にも死にそうな顔してっからさ。」

マッシュの情けない顔を思い出し、フッと鼻で笑った後に準備を続けた。


彼女の名前。写真。職場と住所。

仕事の時間帯と、朝の出勤時間。趣味など今回はかなり事前情報が多いイージーな仕事だ。

(これは少し吹っかけても良いな)とか考えながら彼女の職場であると言う名古屋の街にまた舞い戻る準備を始めた。


気温は26度

昨今の春はもうすでに夏日だ。

このペースで夏が来ると本当に自分が溶けてしまうのでは無いかとそんな事を思う、

午後14時36分。

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