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黒い光に照らされて。  作者: ユウソン


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第三十五話 vs五島悟(その2)

「五島ァア!」

駆け出した俺の脚は人生で1番の爆発力を出した。

拳を固め、振りかぶり、思いっきり投げ出した。

パンチと言うよりは野球の投球に近い。

そんな分かりやすい攻撃を五島が避けれないはずもなく、俺はカウンターで膝蹴りを鳩尾に喰らってしまう。

「カッ!…ヒュ…」

倒れ込み腹部を抑え転がる。

(くそっくそっくそっくそ!なんでだよ!)

後輩が後ろから飛びつき、チョークスリーパーを極めるが、ややポイントがズレている。

五島はなかなか落ちない。

持っていたナイフを振り上げた時、後輩は技を解いて離れた。

「チッ。めんどくせぇ。」

後輩はそう言って、構えながら、刺された方の足で軽くトントンと地面を叩き、自分の怪我の具合を確認する。

それほど深くは刺さらなかった様で、出血も穏やかだ。かろうじて命に別状は無い。

そう判断したのか、自分のシャツを破き足に巻き付けキツく縛る。

五島は後輩よりも近くに居る俺の方を優先するつもりらしい。

俺の上に覆い被さりナイフを首元に突き立てた。

しかし目線は後輩を見ており、すぐに対応できる様にしてある。

「おらぁ!ヒーロー気取りが!さっきの威勢はどうした!」

俺は五島の手首を持ち耐える。

後輩が向かってくる。

その瞬間に五島は手を緩めるナイフを俺から離し、俺の肩を刺した。

「ぐあ!」

ナイフをそのまま引っこ抜き、後輩の元へと走る。

しかし、俺は力を振り絞って先ほどのロープを五島に引っ掛けた。

五島は躓き転んだが、そのまま前転しすぐに立ち上がる。

その際、ナイフが手元から離れた。

後輩が飛びかかってきたのを避けて、距離を取った。

俺はすかさずナイフを拾い上げて五島に向ける。


「…刺せんのか?お前に。」

俺は力一杯ナイフを握り全身に力を入れて歯を食いしばり、フーフーと荒い息遣いで睨む。


「お前だけは…お前だけは!」

そうして五島に突っ込もうとした時、

下からナイフが蹴り上げられた。

空を舞うナイフは俺の後方へ。

その放物線を目で追った瞬間に頬を叩かれた。

俺の事を叩いた先には後輩が立っており、

俺の胸ぐらを掴む。


「アンタはそうじゃねぇだろ!」

後輩が叫ぶ。

俺はキョトンとした。

後輩はグイグイと俺を揺らしながら続ける。


「アンタの戦い方はそうじゃねぇだろ!」


「は?」


「俺がアイツに挑めるのは、アンタが居るからだ。俺の出来ない事をアンタが、アンタの出来ない事を俺がやるから戦えるんだろうが!」


そうして後輩は俺を突き飛ばす。


「どれだけ汚い事しようが、法律破ろうがどうでも良いんだよ。でもなぁ、俺はアンタの自分の決めたルールの中で、超えちゃならねぇ人間としての線を守る所に惚れたんだよ!泥臭くて、みっともなくても立ち上がる。そう言う所に惚れたんだよ!アイツ刺すぐらいなら俺にだって出来るさ!」


俺は突然視野がクリアになる。

夜だと言うのに、辺りは真っ暗だと言うのに、俺の視界はまるで8K画質のテレビ画面の様な鮮明さを覚えた。


後輩は五島の方に歩きながら俺に言った。


「背中預けるぜ。相棒。」

 

五島の正面に立った後輩は対し、五島は言う。

「ボーイズラブは終わったか?」


「嫉妬か?ジャングルには無い文化だったか?」

言葉を交わした瞬間に2人の拳がお互いの顔面にぶち当たる。


俺はハッとした。

(何やってんだ俺は。アイツらと同じ人間になろうとしてたのか。)

俺は後輩の背中へ対し溢れ出す感謝の気持ちを手に自分の頬を叩いた。


そうして、ゴミ山に向かい走り出す。

(視野が広い。目に映る情報全てが入ってくる。)

走りながら作戦を立て、ロープを持ってゴミの山に足をかけた時、すでに俺の中で計算は終わっていた。

クレーンのフックにロープを縛り付け、ダラリと垂らす。

そうして、山を下りカラーコーンを手にした。

後輩が五島と対面している所を後ろから回り込み、

カラーコーンを被せた。

「どわ!なんだ!?」

そうして俺は後ろから、後輩は正面から同時に顔面へ蹴りを浴びせる。

そうして俺はまた、一時撤退した。

後輩は続け様にボディ、アッパー、ハイキックとお見舞いする。

五島が、カラーコーンを外した瞬間に、俺は今度は別の色のカラーコーンを被せた。


「こっちの方が良かったか?」


そう言って、尻を蹴っ飛ばし、また後輩のハイキックを顔面に喰らって五島は倒れた。

五島はすぐに立ち上がり、またカラーコーンを外す。


「コイツはどうだ!」


俺が叫ぶと五島は3度も喰らうかと、頭の上に腕を出していた。


1秒ほど静寂が訪れ、違和感を感じた五島は、

「あ?」

と、俺の声のした方を向く。

俺は何も持っておらず、

両手を五島に見せて手の指をひらひらとさせた。

「残念ブラフだ。」


その瞬間に後輩の右ストレートが顎を撃ち抜いた。

五島の意識を刈り取った。





五島の目が覚めた時、俺たち2人は粗大ゴミの中からソファーを出して2人で目の前に座っていた。


「は?」


五島は気がついたばかりで、状況を理解出来て無かった。


俺は手に持ったカナヅチを地面に2回叩きつけ言う。


「主文判決を言い渡す。」


そうして、カナヅチを後輩へ渡して、タバコに火を付ける。


「は?」

五島は後輩を見た。


後輩はどこかで拾ってきた箒の毛を鼻の下につけて、それを撫でながら、ハンマーをビシッと五島に向けて言い放つ。


「被告人、全裸宙吊りの刑に処す。」


そこまで言われて五島は自分が初めて、全裸で縛られていることに気づいた。


「な、なんだよコレ!」


俺は手元のリモコンを押す。

クレーンが起動する。

フックが少しづつ上に登っていき、五島を縛るロープにテンションがかかる。

そしてじわじわと足の方から引っ張り上げられ、五島はとうとう逆さ吊りになった。


「て、テメェら!何してんだオラ!降ろせ!」


「静粛に。」

そうして、俺はまたカナヅチを地面に2回叩きつける。


「ふむ。何か喚いてますな?裁判長。」


俺はそうしてゴミ山の上に視線を送る。

頂上には後輩が立っていた。


「な、何する気だ…。」

五島は不安の色を隠せない。


「被告人の行いは、非常に残虐的であり、反省の様子が伺えない。情状酌量の余地なしと判断した。

被告人をライダーキックの刑に処す。」


後輩はそう言って、つけ髭を取り某初代ヒーローの変身ポーズを取って飛び上がった。


俺はタバコを吹かしながら、

決着の瞬間を特等席で観戦する。


後輩のライダーキックが炸裂し、五島は胃液を吐いた。

その際、ロープが切れ五島は粗大ゴミの山の1番手前に捨てられた大きなクローゼットへと叩き込まれ、反動で扉が閉まった。


「コレは予想してなかったな。」

俺はギプスのせいでいい音が鳴らない拍手を長めに続けた。


「続きは見なくていいな。」

そう言って立ち上がる。


後輩は着地に失敗して、ゴミの山に埋まっていたが、そのまま気絶して眠っていた。


そんな後輩を見たら俺まで眠くなってしまい、

少しだけと、自分に言い聞かせてソファーまで戻り横になり目を瞑る。

身体のあちこちがジンジンと痛む。

関節が痛い。骨が痛い。健が痛い。

しかし、気持ちがいい。

(生きてるってこう言うことなのかもな…。)

この気持ちを最後に俺は眠りへと落ちた。


時刻は03時23分。


決着。

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