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黒い光に照らされて。  作者: ユウソン


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20/22

第十九話 夢は大きく。

あれから2日が経った。1度帰宅して、張り込みの準備をし、戻ってきた。

時刻は10時01分。

売人側からの連絡も無く、本格的にオートロックマンションの突破が現実的になってきた。

突破案

その1

以前の売人ともう一度取引。強引に拉致。

マンションにそのまま突撃。

リスク

取り逃がし。

2度と同じ手は通用しない。


拠点の規模。

中にいる人数。拠点はどれほどの立ち位置なのか。本当に半グレ集団に繋がる拠点なのか。


顔われ。

拠点襲撃後の対策。得体の知れない相手にこちら側の顔だけが知られる状況に陥る。リスクが高すぎる。


その2

オートロック㊙︎突破。

敷地内に侵入。拠点を探す。張り込みし、出入りの人数と顔を覚え、尾行等でそれぞれの素行を洗う。

リスク

マンション内の住人からの通報。


相手の階層が不明。

ターゲットと何度かすれ違う可能性がある。

警戒に入られ、その1へ繋がる。


時間。

時間がかかり過ぎる。今まで痛めつけたチンピラの情報が回っている可能性がある。既に警戒されている可能性も視野に入れて、長丁場はなるべく避けたい。

(……難しすぎる。)

階層が高ければ、張り込む場所はこの辺りには無い。出て行く部屋が分からなければ、マンションから出てきたのが、住人なのか、ターゲットなのかが不明。

拠点までは絞り込めても、どのみち内部までは入る事が難しい。

危険を犯して入ったところで、欲しい情報があるとは限らない。

さらに、ここが拠点では無く、売人の居住地というオチもある。おそらく得られる情報また、小出しになり、警戒に入られ加藤と、五島なる人物までの道が遠くなるか、無くなる。

売人は活(生)かしたい。警戒はされたく無い。

(さてどうする……。)

俺は悩んだ。とりあえずターゲットの出入りする部屋を探すことにした。


マンションの近くに戻り、張り込む。

「もう、飽きたよこの景色。」

後輩は運転席でイスを倒して伸びている。

「俺もだよ。まぁ、でも今日は動くぞ。それっぽいやつの後ろについて、部屋の番号だけ確認する。」

張り込みに定番のあんぱんと牛乳を手に俺はマンションから目を逸らさずに言う。


2日間の張り込みで気づいた事がある。このマンションに、半グレっぽい男達が5人ほど出入りしている。

例の売人も相変わらず。

昼間に仕事をする事もあるが、基本は夜が多いようだ。特に22時をまわると、1度の外出で、3回ほど取引する場面もあった。

「そんな毎回毎回、後ろにベッタリくっついてたらそのうちバレるよ。」

後輩はかなりだるそうにしている。

「秘策がある。」

そう言って俺はカバンの中から、某配達社の制服を2社分出した。

「何で持ってんの?」

「企業秘密だ。」


2人とも着替え、張り込んでいたところに、

かなり強面の男が歩いてきた。何度も見た顔だ。

「来た。俺が行く。」

そう言って車から降りて駆け足でマンションへ向かう。脇には小さな小包を抱えて、帽子を深く被りながら。

男が先にエントランスに入るように調整しながら、

後ろでロックの解除待ちのフリをして、

メモ帳を取り出し、何かを記入するフリも追加した。メモ帳と防止のつば越しに部屋番の確認。

(603。)男が入る。

俺はメモ帳をしまい、ポケットに入れて、荷物を確認し、男がエレベーターへ乗り込み、こちらを向いてボタンを押すタイミングに合わせて、ロック解除パネルを触る。全部フリだ。

自然に見えるように振る舞う。探偵は目立たない。

記憶に残らない事が美学だ。

エレベーターへが確実に閉じたタイミングで外に出て車へ戻った。


「どうだった?」

「603号室に入った。とりあえず次も俺が行くよ。」


こうして、夜までに3人の男が603号室に入った事を確認した。

あとはあの売人だ。

売人が帰ってくるまでにふと、急に思い出した。

「あ、そういえばマッシュは無事か?」

以前、俺がつけられていた時にあの探偵が、どこまで俺の情報を奴らに伝えているか分からなかったが、殺された依頼人の友人、オネエの社長の無事は確認済みで、マッシュだけ忘れていた。

「あぁ、昨日もSNSになんか、カードゲームのレアカードかな?あげて自慢してたよ。」

「心配して損したぜ。」

そんな会話をしていると、あの大学生のような売人が現れた。

「来た。行ってくる。」

後輩は1度対面しているので、念のため俺が出向いた。

また、ターゲットが先にエントランスに入るようにし、後ろに続く。

番号を押す。

(603…か…。)


車に戻る。

「読み通りだ。603に拠点があると踏んで良いだろう。」

帽子を取り、服を脱ぎながら言った。

「どうする?踏み込むか?それとも誰か尾けるか?」

「うーん。」

オレオレ詐欺に比べると、カメラなどに映らず、通報のリスクが少ない。よっぽど警戒心が低くなければ、売人はどちらかというとリスクの低い、持続しやすい資金源になる。

そんな仕事に末端をつけるとは思えない。

おそらく、それなりに上層部に近い人間だろうと思う。

チンピラより情報量は多いはず。

しかし、以前のようにハッタリの効く相手では無いだろう。

「賭けになるが、タイムリミットをつけよう。」

苦肉の策で閃いたがコレが最善だろう。

「タイムリミット?」

後輩が片眉を吊り上げ首を傾げて聞いてきた。

「ああ、先頭は俺が切る。突入して、騒ぎを起こして相手を怯ませる。その後にお前、警察に通報しろ。3分で1人だけ攫ってマンションから逃亡する。」

「いや、6階だろ?2分で考えた方が良いんじゃねえか?」

「確かに。お前出来るか?」

「無理だな。」

俺は肩を落としたが、すぐに閃いた。

「あ、催涙スプレーあるじゃん。」

俺は防犯のために催涙スプレーを常備している。

(軽犯罪法に当たる可能性があるので注意が必要。)

「コレ、使えばいけるだろ?」

「まぁ。俺たちもダメージ受けそうだけどな。」

そう心配する後輩に、ゴーグルとマスクを渡す。

「準備だけは良いんだ。」

そうドヤ顔をしてマンションのエントランスへ。

「さて、後はどうやってこのオートロックを突破する気だ?アンタ。」

まだ問題はあるぞと不満そうな顔を俺に向けた後輩は、腰に手を当て、「諦めろ」と、言わんばかりの態度だった。

「残念。コレも突破方法がある。」

「なに?」

「俺が昔、建築会社で働いてた時に、空き巣の前科があるおっさんに教えてもらったんだ。」

ピースサインを出しす俺。

「配達員の次は空き巣かよ。就業期間が短いと転職に響くぞ。」

そう言いつつも準備を始める後輩。

さて、ここから先は良い子には見せられない場面に移る。


が、  ぷるるるるる


後輩の携帯が鳴る。


「あ。」


そうして電話に出た後輩。


「あー、どうも。はい。はいはい。本当か?ありがとう。助かるよ。明日の19時だな。確認取っておくよ。多分大丈夫だけど。あぁ、ありがとう。それじゃ。」


そう言って電話を切った。


「誰からだ?」

そう聞くと後輩は少し笑いながら口を開く。


「就職おめでとう。」

そう言って親指を立てて、エレベーターの方へ傾けた。

「……。え、あ、そゆことぉ…。」


配達員に空き巣。その次は売人とここにきて、人生が忙しくなる。

小学校の時書いた将来の自分に向けた作文の出だしが、「サッカー選手になった自分へ」なのを思い出した名古屋は西区、夜の街。



まだまだ、サッカー選手にはなれそうにない男のため息が、虚しく響く。

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