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黒い光に照らされて。  作者: ユウソン


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第一話 二日酔い

「お姉さん!ちょっと!凄いね!サイズいくつあるの!?」

セクハラまがいなセリフを大声で叫ぶ俺の顔は

真っ赤に染まり、足元はふらつき、呂律も全く回っていない。

居住地から2駅ほど離れた駅裏にあるガールズバーが俺の行きつけだ。

情けなく、誰がどう見ても探偵に見えない姿に、

明日また、酔いが覚めたら嫌になるんだろう。

「Fでぇーす!」

俺より10も離れた女の子が答える。

「ヒュー!」鼻の下を伸ばし、指笛を吹き、酔いは最高潮を迎えていた。

今が楽しければそれで良い!

この時の俺の頭の中を支配していた感情はこの一点に振り切られていた。


ガチャッ カランカランカラン!


お店の扉が開く。

キャストの娘とママと客の視線が一瞬そちらに向く。

入ってきた客を確認したらまた皆が、それぞれの話へ戻る。俺だけが扉へと歩いていく。

「おー!来たか〜!こっちだ座れ座れ!」

上機嫌で肩を組み俺のいた席へ迎え入れる。

後輩だ。

「だいぶ出来上がってんなぁ…」

やや引き攣った顔をしながら、俺に寄りかかられ歩き辛そうに席に座った。


先日の依頼を無事に完了し、依頼料が入ったので羽振りの良くなった俺は、すぐに何か飲めと促す。

「俺、明日試合なんだよ。」

そう言って烏龍茶を頼む後輩を見て思い出した。

「あ〜っ!なんか言ってたな!明日だったのか!

応援行くよ!」

絶対に二日酔いで動けなさそうな俺を察知した後輩は期待してない声で言った。

「来なくて良いよ。」

本当に期待してなかったのである。

総合格闘技を趣味でやっている後輩に…と言うかそんな野蛮な奴らに全く理解も同意も出来ないが、

人が頑張っているものには応援したくなるのが俺の性格だ。

「そんな事ゆ〜なよ〜。ねぇ?」

ベロベロと言う言葉が似合いすぎる俺は女の子にも同意を求めた。

「ねー」と軽くあしらわれた後に、女の子の興味は後輩に持って行かれた。

この世の真理はこれだ。強い男がモテる。

さっきまで、面白い人と言う立ち位置で独走していた俺は後輩の登場により、女の子の眼中から消えた。あと1時間飲んでたら確実に泣いていただろう。

少し寂しさを覚えたところでタバコに火をつけて、煙を吸い込み、上に向かって吐き出した。

良い気持ちだ。一生このまま過ごせれば良いのにと、思ったら次の瞬間、俺の横に人が飛んできた。

数々の修羅場を潜ってきた俺は一瞬でこの状況が只事じゃないと思い、すぐに体勢を整える!


ガラの悪い男達が酔って喧嘩を始めたのだ。

体格は俺と同じぐらいだが、いかんせん顔が怖い。

吹っ飛ばされた男が俺の横から立ち上がり、カウンターに座る男に走って行く。


女の子が悲鳴を上げ、客が店内を逃げ、

ママが辞めてと叫ぶ。

後輩と目があったので、大きなため息をついて言った。

「止めるかぁ。」

そう言って立ち上がり、どちらもいかついが、

どちらかと言うと怖くなさそうな方を俺がなだめ、

ヒートアップして頭に血が昇り切った方を後輩がなだめたが、どうも収まりそうにない。

すると、左頬に衝撃が走り、視界が揺れた。

殴られたのである。

「あ痛ったー!」そう言いながら床に倒れた俺の頭上を人影が飛んでいく。

後輩が俺が殴られたと同時に飛び膝蹴り?を男にお見舞いした。

アクション映画のようなアングルで膝蹴りを入れた後輩を見て、(やっぱりコイツには敵わんな。)と

再確認し、先ほどまで後輩が相手した男を見ると、すでに床に転がって悶絶していた。

(うん。やっぱり敵わん。)2秒前の思考を再確認し、俺の判断が間違っていないことを復習した後に騒ぎは収まった。



ケツモチの怖〜いお兄さん達に連れて行かれる男2人を見て思わず手を合わせずに居られなくなった俺は、ついつい口に出してしまう。

「どうか、ご容赦に。」

この怖〜いお兄さんは、暴走族時代の先輩にあたる人である。

「おい、不良探偵。なんで容赦しなあんのや」

ギロリと血走った目を俺に向けて言う。

「あ、いや、そうっすね。こんな奴ヤっちゃってください!」調子の良いことを言ってその場から逃げようと、振り返って店に戻ろうとした時に首根っこを掴まれた。この人に借りは無いが、何故か腐れ縁で俺の行く先行く先必ず現れるので、奇妙な関係が続いている。

「お前、名古屋の半グレ調べられるか?」

そう聞かれて咄嗟に首を横に振る。

「勘弁してくださいよ〜。探偵業法ってのがあって、反社の人の依頼受けたらダメなんですよ〜。」やんわりと、しかしハッキリと理由を言って断る。

それに少し前にソレっぽい人に追いかけ回されたばっかりだ。受けてたまるか!

「そうか、残念だな。」全然思ってなさそうな口調で言われる言葉に、いつかこの人の仕事を受けないといけなさそうな不安を感じてヘヘッと情け無い愛想笑いを返す。

「名古屋で最近、どうも飛び回ってるハエが居てよぉ。色々と事件に関わってるみたいなんだわ。なんか情報あったら教えてくれ。」そう言いながら、

ママに次は飲みに来ると伝え、反社の先輩は車を走らせた。

(誰が調べるかっ!バーカ!)

心の中で叫んで頭を下げた。


そのあとは場がしらけてしまったので、今日は解散することにし、後輩に明日の試合の檄を飛ばし、

いらぬ世話だと言われ帰路に着く。



俺の記憶はここまで。



朝?昼?

目が覚めてガンガンとまるで頭の中で布袋がライブでもやっているのかと思うほどやかましく響く頭痛にうなりながら、身体を起こす。

携帯を見て時間を確認すると同時にかなり青ざめた。

「けっ…警察!?」110番から不在着信が入っていた。

昨日、記憶の無いうちに何がやらかしたのかと頑張って思い出そうとするが、全く思い出せない。

いくら考えても仕方がない。何かやらかしてしまっていたのなら、素直にごめんなさいだ!俺は、どうしようもない現実に直面すると、すぐに切り替える事ができる。こう言うところは妙に肝が据わっているなと、我ながら思う。

とは言いつつも、何かとんでも無いことをやらかしたのじゃ無いかと思い、ガタガタ震える手で警察に電話した。身分を話し、不在着信があった事を伝えしばらく保留になり、電話が繋がった。

「生活安全課の伊藤と申します。先日から〇〇さんの行方がわからなくなっておりまして。〇〇さんの携帯電話にこの番号があったので、連絡させてもらいました。お話し聞かせていただけますか?」



直近の仕事の依頼人の名前だった。


目の前の公園から聞こえる無邪気な子供の声が頭痛を加速させる。

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